カマセ犬サイドからのボクシング小説

「あしたのジョー」「ロッキー」「はじめの一歩」……
ボクシングをテーマにした名作の多くは主人公がファイターであり、アウトボクシングをやや不当に扱っている感は否めない。
アウトボクサーの物語が少ないとお嘆きの貴兄にこの作品をお勧めしたい。
この作品のユニークな点は、それ以外にもある。
外国人ボクサー、しかも欧米人やボクシング王国のメキシカンではなくインドネシア人ボクサーの物語であること。
カマセ犬の役割のインドネシア人のアウトボクサーサイドからの物語というアイデア自体はたしかに誰でも思いつくだろうが、実際に書ける作家は限られてくるだろう。インドネシアを文字情報だけではなく肌で知っていなければいけない。そして、説得力のあるボクシング描写のためには実際にリングに上がってパンチの痛みを知っていなければならない。
私は、作者のことを、この作品を通してでしか知らないのだが、おそらく上記の条件を満たした人物なのだろう。もし、違っていたら、……それはそれで凄い妄想力、描写力だ。

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