彼は待っていた、人生でただ一度の右カウンターを放つ瞬間を

 『カウンター』と聞くと、別にボクシングやってなくても血が騒ぐのが男心。もうこの言葉の響きだけで、不良からオタクまで多くの男が胸を熱くすることができるのではないでしょうか。
 そのロマンは、『劣勢の条件下で相手の隙を突いて一発逆転に挑む』という、これに尽きるわけです。

 そして、その『一発逆転』にかける想い――つまるところその背景・そこに至るまでの物語が重厚であればあるほど、僕たちは盛り上がる。

 そういう単純な生き物なんですね男の子って。
 はい。

 この作品はまさしく、『右カウンター赤道より』の言葉で表される、インドネシアという舞台から、僕達読者に対して繰り出された右カウンターになります。
 最後の最後の瞬間を盛り上げるために用意された、人物、設定、ストーリー、そして、右カウンターというテーマ。その全てが、ラストシーンに終結し、見事読者を『嘘だろ!!』と、ノックアウトしてくれることでしょう。

 この作品は心を打つヒューマン・ドラマではありません。
 この作品は綿密な描写が売りの闘拳小説ではありません。
 この作品は男が誇りを取り戻す栄光の物語ではありません。

 それら全てを内包して、私たちに突きつけられるカウンター、文章が殴りかかってくるボクシング小説です!!
 言ってることが無茶苦茶だって!?
 読めば(カウンターを喰らえば)分かるよ!!

 今コンテスト、ここに来ておそらく一番心を動かされた作品です。
 オススメ!! というか、読まなきゃ後悔しますよ、これ!!

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