お薦めポイントを具体的に伝えようとするとネタバレになってしまうので曖昧に書くことにする。この作品の最大の美味しい所は、第三話以降の二つの対照的な能力の出会いと対立にある。なので、第一話だけで合う合わないの判断をしてしまうのはもったいないとだけお伝えしておこう。
ファンタジー×ミステリー。ミステリー好きの新たな扉が開けてしまう、なんとも危ない2500文字の集まりです。五感描写がリアルで、実に臨場感に溢れています。だからこそ登場人物皆々がこんなにもリアルで、呼吸の微かな息遣いまで聞こえてくるのでしょう。危ないのはまさに、これ、本作における『臨場感』。へぇ、ふぅんと一話をクリックしてしまえば、あなたも確実に瞬きの速度で「つづき」をクリックしてしまいます。ほら、危ない危ない。のめり込み、必至ですから。
主人公はとある能力を持つ男私の世代からすると懐かしくも感じますがもちろん別物です。他にもキャラが増えて面白くなってきました。
個人経営の喫茶店でひっそりと働くワタルだが、彼には特別な力があって……。物品に触れるとその物の過去が見えるワタルと、ワタルのその力を最大限に利用する私立探偵の萩原。喫茶店の奥の個室で行われる二人のやりとりがコーヒーの香りと共に楽しめます。匿名短編コンテスト開催中から好きな作品でした。皆様も是非、お楽しみください。