立て! 立つんだ負け犬たち!

 打撃系格闘技というと、日本ではまだまだK-1をイメージする人も多いのではないでしょうか。K-1は観客・視聴者側に立った格闘技で、わかり易さ・派手さが求められ、それに則ったルールが定められ、ジャッジが下される競技です。

 しかしボクシングは競技者側に立った格闘技。ざっくりと階級が分けられたK-1とは違い、ボクシングのそれはわずか3kg未満で区切られ、全17階級にも及びます。競技者間に体格差が殆ど無く、相手を倒すにはひたすら地道に肉体を鍛え、対戦相手に対する戦術を組み立て、それに従い技術を磨く他ない。その様は大変地道で地味なものです。

 本作はその「地道で地味」に丁寧に向き合いながらも、インドネシアのロートルボクサー・ロニーと日本の落ちこぼれ・アキラの心情やドラマなどを織り交ぜて丁寧に練り上げ、「負け犬たちのワンスアゲインもの」として「共感」させてくれます。

 果たして負け犬たちと一緒に決戦のリングまで辿り着いた読者は、アキラと共にロニーのセコンドに立ち、興奮と焦燥を何度も味わいながらラウンドを重ねる事でしょう。

 インドネシアという舞台設定と、その舞台をちゃんと活かした物語になっているのも、自分には新鮮に感じられました。


P.S.ボクシングとの競技性の違いとしてK-1を引き合いに出しましたが、ボクシングよりは比較的体格差が影響しやすいというだけで、勿論K-1出場選手も地道に研鑽を積んでいるものと思います。

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