ボクシングしかない男たちが、弱気なひとりの男に賭けた

気持ちがぐっと掴まれる魅力と迫力に満ちた作品でした。

まず、インドネシアという土地やボクシングという競技について、たいへん良く描かれていて、それによって作品により厚みが出ている点が素晴らしいです。
特にその土地についてしっかり描いていることで、それぞれのキャラクターが持つ背景がより鮮やかになり、とても読み応えがありました。

対戦相手のキャラクターもいいです。
持ち上げられても慢心しない、自分をしっかりと持った若者の姿は読んでいて気持ちのいいものでした。
相手をリスペクトできる、というのがこんなに清々しいものなのかと思います。

しかし、何よりも素晴らしいのは主人公を含め、旧友の進藤や対戦選手の薮田など、本当にボクシングがなければ生きていけない男たちなんだな、というのがしっかりと文章から滲んできている点です。
それがあるからこそ、それぞれがロニーに賭ける思いや真剣に対峙する気持ちにたいへんな説得力が生まれ、読む側まで彼に賭けたいと思えるのです。

そういう周囲の気持ちは、ロニーの「人が集まってくる」という素質と繋がっていきます。
ボクシングしかない男たちの期待を背負えるだけの度量のあるロニーの人間的な大きさがとても眩しく映りました。

個人的にはソムチャイのキャラクターも好きでした。
彼も薮田とはまた違った意味で気持ちのいいキャラクターです。

読めてよかったなと思える作品です。

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