ラストの決意に、健気さと希望、未来への道が感じられました

幼い二人の決意に健気さと希望が感じられる作品でした。

前半は、ずっとサーカスの演目の様子が描かれていますが、それがたいへん臨場感に溢れています。
目の前でサーカスが展開されているようで、作中で観客が歓声を上げるのと同じように高揚感を楽しむことができました。
例えばリリアーヌ姉がロープ渡りの一歩を踏み出した時、レベッカ姉とポリーが走り抜けた時、サンディ兄がアルテ姉の手をしっかりと掴んだ時、彼らの緊張や躍動感を物語の中の人々と共有できたように思います。
そして成功した時の幸福感もまた、大きなものでした。

こういった描写は、ただ楽しく、幸せなだけではありません。
後に明かされる時代背景により、苦しい中でそれでもみんなが笑顔になれるひとときだったのだと分かります。
そして、それがサーカスでの幸せな時間へさえ影を落とし始めることで、幸せな時間が奪われる痛みがひしひしと感じられます。

けれど、いえ、だからこそ、それでも前へ進もうとするミラとラキの姿は感動的です。
たとえ一縷の望みであったとしても、それを掴んで、サーカスの眩さ、輝かしさを心に灯して、それによって世界にも光を取り戻そうと手を取り合う。
絶望的な世界の中で、しかし未来への道を感じさせるラストが、とても素晴らしかったです。

その他のおすすめレビュー

ぞぞさんの他のおすすめレビュー155