28
野外訓練当日、いつもより早く起きて入念に持ち物の確認をしてからリュック型のバックに詰めて、部屋を出る。
寮の外にある広場に出れば、もう大勢の生徒達が集まっていた。
シンディーと二人で辺りを見回していると、空から一羽の鳥が飛んで来る。
その鳥は私の肩に止まると、片方の翼を広げて「ぴゅぴゅっぴゅー」と広場の中央を指す。
たぶん、この鳥はアレックスだ。
アレックスの指示に従って広場の中央へと行くと、そこにはクラスの皆がもう揃っていた。
「おはよう!」
「おはよー」
私達が声を掛けると、振り向いた皆が挨拶してくれる。
ドキドキするね、緊張するわーと周りで騒ぐ生徒達と同じようなことを言いながら、忘れ物はないか再度確認している最中に、教官達が建物の中から数人出て来た。
途端に生徒達が口を閉ざし、クラスごとに整列をする。
学年、そしてクラスごとに縦に整列した生徒の前に、教官達が腕を後ろで組みながら横一列に並ぶ。
シンと静まる広場の中央へ、学園長がやって来た。
老体とは思えない歩き方で私達の前へやって来ると、教官達の後ろに置かれた壇上に立つ。
「諸君、この野戦訓練で今まで積み重ねてきた努力を存分に発揮して欲しいと思う。一週間後、能力者として更に力を付けた諸君らに会えることを、期待している」
そう挨拶してから、あっさりと壇上を後にした。
校長とか学園長とかの挨拶って、眠くなりそうなほど長くなるって思ってたのに……短時間で終わってくれて、本当に嬉しい。
また辺りがざわついて来ると、一人の教官が静まれと声を張り上げる。
ついに、光樹の森へ移動する時間がやって来た。
でも、どうやってここからこんな大勢の人数で移動するのかと思ったら、どうやらこの広場の地面には、ここにいる生徒全員を光樹の森へと移動させる事が出来る大規模な魔法陣が敷かれているみたいだった。
しかも、一斉にここから移動するのに、到着する場所は一隊づつ別々なんだとか。
「それでは、これより野外訓練を開始するっ!」
その言葉と共に、一人の――教官達とは違う魔法使いのようなローブを被った人が、私達に向けて手を翳す。
すると、広場全体の地面に複雑な文字が浮かび上がり、光り輝く。
魔法陣から舞い上がる光の粒、文字や文様が凄い速さで動き回る。
足元に浮かぶ魔法陣から教官達が並ぶ列へ、ふと目を向けると、エルス教官と目が合った。
死ぬなよー。
へらっと笑いながら口パクでそう言った教官の姿を最後に、私達は光樹の森へと移動したのであった。
「そこ、エジュルの排泄物があるから踏まないで。洗っても匂いが落ちないから」
「あ、それはユーリリスクって言って、触れたら火傷したみたいに腫れるから触っちゃダメだよ」
「ちょっと、そんなに足音を立てて歩いてたら、魔獣じゃなくたって危険な動物に居場所を知らせる事になるから気を付けて」
「ああああ!? その水は直接飲んじゃだめだよっ! 綺麗な湧き水に見えても、ほら……周りに毒草が生えてるでしょ? 水に毒がしみ込んでいるんだ」
薄暗い光樹の森に到着した私達――私とシンディー、アシュレイとシリルの四人で、森の中を数時間ほど歩いていた。
その間、私一人だけアシュレイとシリルに散々注意を受けていた。
野戦訓練の前に光樹の森での歩き方をある程度学んでいたとしても、いざ森の中に足を踏み入れたら、急いで詰め込んだ知識では役に立たなかった。
シンディーの場合は、薬師に師事していた時に一緒に森に行ったりしていたから、私より森の中の歩き方を知っていた。
一人足を引っ張って申し訳ないです。
しょぼんと落ち込んでいると、シリルに学園に入ったばかりなんだからしょうがないよと慰められる。
本当、シリルって優しくていい奴だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます