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それから私達は無言で各々の部屋へと帰り、汚れた制服を脱いでお風呂に入った。
体を綺麗にしてから清潔な服を身に着け、食事もとらないでベッドの上に倒れ込む。
「……疲れたぁ」
「うん」
足を床に投げ出し、ベッドの上に大の字になりながら深く溜息を吐く。
ぼーっとしながら天井を眺めていると、立ち上がったシンディーが枕を持って私のベッドに乗り上がって来た。
「ルイー、今日は一緒に寝よ」
「……うん」
もぞもぞ動きながら体を壁側に寄せ、シンディーが寝やすいスペースを作る。
隣に枕を置いたシンディーが横になり、二人で一緒に天井を見つめる。
暫く無言で上を見ていた。
「ねぇ」
「んー?」
「なんかさ、色々あったね」
「そうだね」
目を閉じれば、魔獣が襲い掛かってくる光景が思い浮かんできそうで、疲れて眠いのに……眠るのが怖い。
「学園に入ってから、こんなに恵まれた環境で暮らす事が出来て良かったって思ってたんだけど……」
「まさか、又魔獣に襲われて、死ぬ目に遭うとは思いもしなかったよね」
「ホントだよー」
シンディーが苦笑しながらコロンと横になり、私の方を向く。
「ねぇねぇ」
「ん~?」
「思ったんだけどさ」
「うん」
「ルイの能力は、他人の能力を
「うん」
「これから、学園にいても……学園を卒業してからも、こんな危険な事が起こる可能性が多いかもしれないんだからさ……少しでも良いと思えるような能力を見付けたら、自分の能力にしちゃえばいいんじゃない?」
「……う~ん」
シンディーの提案に、確かに一理あると天井を見ながら考える。
ただ、私の能力が……どれ程の他人の能力を自分の能力として取り込めるのかも分からないし、それを使いこなせるのかも分からない。
それに、もしも私が色々な能力を使っているのがバレたらっていう思いもある。
「まぁ、それはボチボチ考えて行こうかと……」
「えー」
「それよりも、今ある能力を使いこなせるようにしたいしね」
私はそう言うと、シンディーと向かい合うように横になる。
そして、お願いする。
「シンディーさん、シンディーさん。目を閉じると、どーっしても……魔獣が直ぐそこまで襲って来る感じがして寝れません。どうにかして下さい」
私の言葉に、シンディーはキョトンとした表情をしたと思ったら、しょうがないなーと苦笑しながら頭をポンポンと撫でる。
「はぁ~……本当は、この能力は隠しておくつもりだったんだけど」
「そうなの?」
「そうなの。皆にはもう言ったんだけど、治癒の能力以外は知られたくないから、クラスの皆以外には内緒にしててね」
「う……ん、分かったよ」
頭を撫でられていると、目を開けていられないくらいの眠気が襲って来る。
「おやすみ、ルイ」
「……ぉゃ……ぃ」
頭を撫でられながら目を閉じて眠りにつくと、それから程なくしてシンディーも直ぐに眠ったらしい。
私はシンディーのおかげで恐ろしい夢を見る事も無く、次の日の昼頃まで爆睡していた。
この世界に来てから数ヶ月――。
『時を止める』能力
『情報操作』能力
『治癒』能力
『自分や他人が負った怪我、恐怖心などを第三者に移す事が出来る』能力
『治癒力阻害』能力
『能力視』能力
『能力喰い』の能力を使って、六つの能力を喰べて自分の力にしていた。
治癒能力以外、喰べた能力の能力値は最大。
それからも、喰べた能力の他に新たな能力も喰べ――。
私は、着々とこの世界での能力持ちとしての地位を築いていく事になる。
そして……野戦訓練以来、友人達との絆は強固なものとなった。
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