閑話
廊下を走っていたその生徒は、勢い良く自分が使っている部屋の扉を開け放つと、背中で扉を閉じてから鍵を掛ける。
友人達と別れてから急いで自分の部屋へ戻るのに走っていた為、荒い息遣いが静かな部屋の中に響いていた。
背中を預けていた扉から離れ、明かりも付けずに部屋の中をウロウロと歩き回る。
あの人から『監視者』に気を付けるように言われ、友人達との会話や僅かな反応にも敏感になっていた。
もしかしたら、こいつが? いや、もしかしたらあいつも怪しい……そんな感じで日々を過ごしていた。
誰が監視者なのか今までは分からなかったが、先程の食堂での、アイツのあの表情……あれは絶対に何かに勘付いている、とその生徒は確信を抱き始めていた。
計画がバレたらどうしようかと、気が気ではない。
だが、暗い部屋で長い時間息を殺すようにしていても、教官達が自分の元へやって来る気配が無い。
今のところは、最悪な状況ではないのかもしれないと、ベッドの上に腰を下ろし、深く息を吐く。
しかし、自分が疑われ始めているのには間違いは無いはずと、その生徒は気を引き締める。
ただ、決定的証拠が無いから問い詰められないだけだ。
この野戦訓練で、自分の将来が決まる。
絶対に失敗は許されない。
そうその生徒は呟きながら、野戦訓練でどのようにしてアイツの口を塞ごうかと、暗い部屋の中で計画を練るのであった。
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