#6 淫乱、魔の触手
――あれから数時間後の事であった。
「…………あの彩光ちゃん……まだ終わらないの?」
「もうちょっとっす……もう少し待って下さい……よし、潰した!!」
ある街にゲームショップが存在する。その中に置いてある試しゲームの前に、玲央と紗香が立っていたのだ。
試しゲームはSFのFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)。玲央が持っているゲームの続編であり、それに興味を持った彼女がプレイをしているという訳である。
ゲームの内容はアドベンチャーで、宇宙船の中でエイリアンを倒すと言った物。一体ずつ葬っていき、なおかつ華麗に敵の攻撃を回避する玲央。
その神なるテクニックが、彼女や真緒の周りに(オタクの)ギャラリーを作り出していく。
「何というテクニックだ……!! 我々よりもはるかに上回っている!!」
「ああ……それにあんな女の子見た事ないな……隣町の子か?」
「素晴らしい……サイン欲しい……」
勝手に盛り上がるギャラリーに対し、ドン引きする紗香。
なお一方で玲央のプレイは進んでいく。画面内でボスと戦闘になっており、プレイヤーキャラが持てる火器で攻撃をしている。
蟹型ボスのハサミをジャンプで回避し、そのまま顔面へと着地。持っているショットガンで的確に射貫き、沈黙させる事に成功するのだった。
「すげえええええ!!」
「これ難易度高いんだぜ? それなのに体力一切減らさないで……化け物か!?」
「あの、よろしければお名前……」
「さてと乙宗さん、行きましょうか」
ギャラリーから拍手と歓声が湧きあがった……のだが、あんまり気にしていないのか出て行ってしまう玲央。
潔い程のマイペースさに、紗香を含めた皆を唖然とさせてしまう。しかし紗香が我に返り、外に出ようとする玲央の後を追っていった。
「いやぁ、やっぱハイローⅡはほんとパナイ。グラフィックはいいし、動きは良いし、何より武器の豊富さ……。もう最高、マジで最高、ヤバいくらいに最高ですわ」
「……あっ、うん……。そ、そうだね……。それよりもパトロールしているのだから、あまり寄り道はしないでね」
「アッハイ」
今の二人はパトロールの最中である。もちろん手塚の指示であり、パトロール場所は地元の隣町である。
なおここで玲央が知ったのだが、管理課はこの隣町の郊外にあったらしい。それで意外だなと思っていたが、それよりも大事な事がある。
「本当にここにいるんですかね。怪人」
「そう手塚さんが言っていたよ。ここを荒らし回る奴がいるって」
この街に怪人出現の報告があったらしい。二人はその個体の撃退を任され、ここにやって来たのだ。
なお怪人の特徴はタコのように赤く、触手を生やした姿らしい。それに因んで名前は『オクトヒューマン』。そう聞いた玲央が思わず安直と思ってしまったが、それは別の話である。
なお先日に玲央が倒したヴィランにも名前がある。トカゲ型怪人は『リザードマン』、巨大ワームは『モルドビースト』。後の資料の為に、管理課ではヴィランごとに個体名を振り分けているのだ。
「何でも手塚さんが言うには女性を狙うらしくて……。それが本当なら女の敵だよ、絶対に許さない」
「さいですか……って、オウガのプラモ! やばい、この荒々しさとかリアル感、ハンパない!!」
プラモショップの前に差し掛かった時、急に玲央が窓に張り付く。
窓の奥には、怪獣を思わせるプラモデルが飾られているのだ。それだけでも目を輝かせ、荒い息を立てている。
その姿に、やれやれとばかりに頭をかく紗香。それ程に玲央という少女は実にマイペースで、気ままな性格をしているという事か。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「!?」
その時だった。街の中から女性の悲鳴が響き渡る。
真っ先に反応したのは紗香だった。呆れた表情から一変し、緊張が走った物となる。
「今のは……! 行こう、彩光ちゃん!!」
「えっ? あっ、はい……」
一瞬、玲央がプラモデルへと物惜しそうに振り返っていた。しかし状況が状況だからか、すぐに紗香の後を追っていく。
やがて大通りへと到着する二人。そこで目撃したのは、とんでもない光景だった。
「ヒャハハハハハハハハ!! 逃げろ逃げろ!! 追いかけっこは大好きだゼエエエ!!」
大通りには逃げ惑う大勢の住民。その中に、ひと際目立つ異形がいた。
赤いタコを人型にしたような怪人。頭部がタコのそれで、身体中から無数の触手を生やしている。その触手が振り回されるたびに、なぎ倒されていく樹木。
そして触手が、何と一人の若く綺麗な女性の脚へと絡み付いた。一瞬にしてタコ怪人へと引き寄せられ……
「ゲヘヘヘヘヘ……どうダ? 気持ちいいやロ? エエ?」
「ん! そこは……ああ……駄目……」
「ここか? ここがええのか?」
「あうん! そ、そんな……」
「「…………」」
何とタコ怪人が、女性へと触手プレイをしていった。
ぬめりのある触手が両腕へと絡み付くどころか、両足を撫で回し、さらには服の中にも忍び込む。あまりのエロさに玲央は呆然と、紗香が顔を真っ赤にしてしまう。
そんな光景が繰り広げられるのだから、逃げていた男性陣が止まってガン見する事態となってしまった。実にシュールこの上ない。
「…………ハッ、何やっているんですか!! 早く避難して下さい!! 彩光ちゃん、この間に女性の方を!!」
紗香が男性陣を追い出そうとしていく。その際に残る玲央。
彼女が呆れた目をしながらタコ怪人を見つめるのだった。そしてため息を一つし、ぼそりと呟く。
「魔装……」
幼そうな姿に、白銀の鎧が装着されていく。
姿を現すパワードスーツの魔法少女――マレキウム。その登場に真っ先に驚いたのが、他でもなくタコ怪人である。
「うお!? 鎧を纏っタ!? 何だコイツ!?」
「ハルベルト顕現」
そんなタコ怪人を無視して、右手を大きく開く玲央。
するとその手に基盤のようなエネルギーが形成。一瞬にして機械仕掛けの杖となり、強く握り込む。
これがマレキウムの愛用武器――ハルベルト。玲央はそれを大きく掲げ、タコ型怪人へと投げ飛ばしていった。
「ナっ!? ぐえっ!!?」
見事に怪人の頭部に直撃。衝撃で触手から女性が解かれた。
なお怪人に当てたハルベルトが、宙で回転している。それを玲央はジャンプでキャッチ――そのまま落下しながらタコ怪人へと振り下ろす。
対し回避してしまう怪人。振り下ろされたハルベルトが地面を叩き割り、轟音を発した。
「おイ、いきなリ攻撃するなヨ!! まだ準備していないのニ!!」
「いや……どう見てもさっき聞いたオクトヒューマンですし……それに堂々と触手プレイしてるそっちが悪いんでしょう……」
玲央の口から開かれる正論。それには触手プレイの被害に遭った女性が(顔を未だ赤くしながら)うんうんと頷く。
反論できないのか、「ググ……」と歯ぎしりをするオクトヒューマン。しかしどういう事か、その歯ぎしりが含み笑いへと変わっていく。
「ククク……お前のような情け容赦ない奴は久しぶりだナ……。しかしそういう奴を触手プレイさせて泣かせる甲斐がアルという物!! 覚悟しやがれえええ!!」
そそくさに逃げる女性を尻目に、玲央へと接近するオクトヒューマン。
触手を鞭のように振るうも、玲央は回避しつつジャンプ。一瞬にしてオクトヒューマンの背後へと回り、蹴りを繰り出そうとした。
「何の!!」
しかしオクトヒューマンの背中にあった触手が足を跳ね飛ばした。吹っ飛ばされそうになるも、宙回転しつつ後方へと下がる玲央。
どうやら身体中の触手のせいで、死角というのが存在しないようだ。懐に入りこまなければ、攻撃はままならないと思われる。
「彩光ちゃん、今向かうよ! 変身!!」
そこに向かってくる紗香。
その時、彼女の姿が金色の閃光に包み込まれる。閃光が徐々に形を成し、あの黒いローブへと変わっていった。
普通の少女から一転――魔光超女『エレメンター』へと変身。さらに右手の周囲に閃光が放たれる。
「ヤルングレイプ顕現! 我が敵を凍てつかせ……《アイスニードル》!!」」
閃光が宝石をはめたガントレットに。そのヤルングレイプから冷気が発生し、三本の
しかし気付いた怪人が触手でキャッチし、あろう事か紗香へと投げ飛ばした。紗香が回避すると、地面に突き刺さる氷柱。
敵に奪われ、挙句に投げ返された事に彼女が悔しがる。
「オクトヒューマン……変態だけど、とんでもない敵だね」
「変態ハ余計……だ!!」
オクトヒューマンの背後から攻撃しようとする玲央。しかしそれすら気付かれ、何と足に触手が巻かれてしまう。
それだけではなく両腕や首、身体にも巻き付かれる。今の玲央は、もはやオクトヒューマンの玩具である。
「ヒャハハハハハハハハ!! まずはお前ダ!! さっきの女みたいに喘ぎ声を出してヤル!!」
「彩光ちゃん!!」
それはすなわち、触手プレイをされるという事。
玲央への危機(?)が、刻々と迫っていく……。
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