第31話 少女に振り回されるのも悪くはない 04

シャルル.side



「ハル……くん……。」

「シャルル? よかった意識が戻ってきたね。私の声が聞こえる? 」


あれ?

私どうしたんだっけ。

確かレッドデビルと戦ってて、上級魔法を唱えようと思ったらレッドデビルが凄い魔法を使って……。

この後の記憶が曖昧だ。

えっと、全身痛くて力が入らなかった時ハルト君が近くに居た気がする。

そうだ。

確かにハルト君が近くに居てくれて……。

あれぇ? 夢だよね?

もうダメだと思って私色々凄い事口走ってた気がするよ。


「うわああん! 恥ずかしい! 」

「お、起きたなシャルル。どうしたそんな大声出して。そんなに恥ずかしい夢でも見てたの? 」


辺りを見回すとどうやらギルドのテントで寝ていたみたい。

近くにフルアちゃんが居てくれるのを確認すると安心した。

そんな事よりレッドデビルはどうなったんだろう?

私がここにいるってことは何とかなったって事だよね?


「フルアちゃん! レッドデビルは!? 」

「開口一番にそれか。仕方ないか。必死だったみたいだし。レッドデビルならあんたがしっかり倒したから安心しな。」

「そっか。よかった。私しっかりできたんだ。」


どうやって倒したんだっけ?

ハルト君が側に居てくれて、私をレッドデビルから守ってくれたからトルネリプスを唱えることが出来た気がする。

その時私もうダメだと思ってハルト君に好きだって伝えちゃったよね?


「どうしようフルアちゃん! 私ハルト君に色々恥ずかしい事言っちゃたよ! 」

「お、なんだなんだ。これはもしかして煮え切らなかった2人の仲が進展しちゃったりしたのかな? 」


ニヤニヤと面白がるフルアちゃん。


「そんなんじゃないよ! 私は今までの関係がいいし、私なんかが相手なんてハルト君が迷惑するだけだもん。」

「そんなこと言ってるから進展しないんだよ。ちょっとハルト呼んでくるから待ってな。あいつも心配してたんだよ。」

「わああああああ! ちょっと待って! まだ心の準備が! 」


私の抑制も虚しくフルアちゃんはこの家の外に出て行く。

私は今出来る精一杯の努力で布団に潜り込む。


「シャルル!? 目が覚めたって本当!? 」

「嘘ですよ。シャルルは目が覚めて何ていません。」

「シャルル……。よかった目が覚めたんだね。本当によかった。」


ハルト君の顔は見えないけど少し涙混じりな気がする。

申し訳なくなり、私は布団から顔を覗かせると涙を拭いているハルト君がそこにいた。


「ハルト君。あのね。あの時の事は夢だと思ってたっていうか。」

「あの時のことって何のこと? でも本当によかった無事で。」


あれ?

あの時の事って本当に夢だったのかな?

ハルト君もいつも通りだし。


「ハルト君レッドデビルってどうやって倒したんだっけ? 」

「シャルルが魔法で倒したじゃない。」

「えっと……。その時私何か言ってなかった? 」

「いいや、何も言ってなかったよ。」


そっか。

よかった。

あれは夢だったんだね。

私なんかが好きだってわかったらハルト君困るもん。

そう、私達は唯の幼なじみで家族同然の仲。

最初は手の掛かる弟みたいな存在だった。

だけど最近のハルト君は人が変わったように優しい。

どんな心境の変化があったのだろう?

でも、それはとても良いことだと思う。

他人を思いやれる余裕のある強い心になったって事だから。

成長したんだなって思っていたら、いつの間にかハルト君を目で追う様になっていた。

意識し始めてしまった。

ハルト君が私のご飯を美味しいって言ってくれる。

それだけで最近は嬉しいの。

もっと頑張ってまた美味しいって言って貰いたい。

いつも不機嫌だったハルト君が楽しそうにガルード君と笑い合ってるのを見ていると、私も嬉しくなる。

もっともっといっぱい笑って、それを私は見ていたい。

いつも手を抜いてばかりだったハルト君が最近は何事も一生懸命だ。

一生懸命な人はとってもカッコイイ。

それの姿が私の為だとわかるととっても嬉しくて胸が痛いの。

凄く切ないよ。

だって、この思いを伝えたら今の関係が崩れるんじゃないかって思うと伝えられない。

なんの取り柄もなくて、可愛くない昔からの幼なじみが好きだって伝えても答えてくれる訳ない。

だから、私は今のままがいい。

今のままでも十分幸せだから。

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