第37話 少女に振り回されるのも悪くない 10

ガルード.side



「ガルード君起きて。ミイナちゃんの服が出来たよ。」


テントで意識を失っていた俺の肩を叩いて起すシャルル。

眠い目を擦りながら時間を確認するとどうやら2時間程寝ていたようだ。


「それでそのミイナはどうしたんだ? 」


てっきりシャルルと一緒にいるのかと思ったが、姿が見えない。


「ミイナちゃんは私達のテントにいるよ。ちょっと恥ずかしいみたい。似合ってるのになー。だからガルード君会いに行って上げて。」


シャルルは女子テントを開けると手招きして俺を待つ。

扉を開けてテントに入るとそこにはシャルルとシャルルに隠れるミイナがいた。


「ほら、ミイナちゃん。ガルード君にも見てもらいなよ。大丈夫だよ似合ってるから。」

「う、うん。」


なんでこいつは裸マントで暴れまわってた癖に服を着たら恥ずかしそうにしてるだよ。

普通逆だろ。

そんな事を思っているとミイナはいつもより硬い表情でおずおずとシャルルの影から姿を現す。


「どう……かな、お兄ちゃん? 」

「おう、凄い似合ってるじゃんか。馬子にも衣装って奴だな。」

「馬子にもって……。そんな田舎物者じゃないもん。」


白いフリルの付いたシャツに茶色と黒が主体のチェックのロングスカート。

シャルルも自分に合うように選んだだろうし、同じ金髪のミイナにも本当に良く似合っている。


「よく似合ってるでしょ? 今ある服で一番ミイナちゃんに似合いそうな物を選んだんだから。」

「おう、グッジョブだシャルル。これならどこに出しても恥ずかしくないぞ。」

「似合ってる? 本当に? えへへ、嬉しいな。」


俺の好感触な反応を見てようやく笑顔を見せるミイナ。

普段鬱陶しいがやっぱり笑ってないとしっくり来ないな。


「そういえば、シャルルだけプレゼントを渡すのも癪だったから俺もプレゼントを用意したんだぞ。」

「え、本当に? なんだろう気になるなー。」


俺の言葉にミイナは嬉しそうに近寄ってくる。

俺は屈んでミイナの目線に合わせると優しくミイナの髪に触れて準備していた物を付けてやる。

お、意外と良く似合うな流石俺。


「うわー、羽の髪飾りだ! いいね凄い似合ってるよ! 」

「こいつ鳥が好きだって言ってたからさ。普段からこういった物も持って無さそうだったからな。ペンダントでもよかったんだけどさ。」


羽と言ったら髪飾り。

完全に俺の主観だけどな。

こいつの金髪によく似合っている。


「え、え? シャル姉鏡! 鏡見せて! 」


ミイナはどうなってるのか直ぐに確認したいのか慌てた様子でシャルルに詰め寄る。

それをシャルルは宥めながら手鏡を取り出しミイナに見せる。


「うわぁ、銀の羽? 凄い綺麗。ありがとうお兄ちゃん! 」

「おう、大事にしろよ。」


暇つぶしで勝手にやったことだけどこうやって喜ぶ姿を見るとやっぱり気分がいいな。

喜んだミイナが俺に抱きついてくる。

普段だったら避けるなり頭を押さえてからかったりするのだが、今回は許してやる事にした。


「よかったねミイナちゃん。それじゃあ私は作りかけのケーキ完成させないと。」

「あ、シャル姉。私も手伝いたい! 」


シャルルが女子部屋からキッチンに行こうとするとミイナは俺から直ぐに離れその後を追いかける。


「私は大歓迎だけど、ガルード君と遊ばなくていいの? 」

「いいよねお兄ちゃん? 」


ミイナは懇願するように俺の顔を覗き込む。

俺はそれに肩を竦めながら肯定する。

さっきからミイナをシャルルに取られたみたいだ。

いや、あんな娘取られた所で何も問題ないし、気楽でいいんだけどさ。

2人は竃で黄色い声を上げながら作業を始めたので、俺はもう寝る気もしないしベースキャンプでゆっくりしているか。

女2人の声をBGMにテーブルで物を弄りながら暇つぶしして暫くすると何かが騒がしく近づいてくる。

ベースキャンプの目の前に来たと思うと、勢い良くユウを背負ったフルアが駆け込んでくる。


「ひゃああ寒い! ガルードシャワー使わせてもらうよ! 」

「いただきます。」

「おい2人ともびしょ濡れじゃねえか! ちょっとそのまま来るんじゃねーよ!ベースキャンプがずぶ濡れになるだろうが! せめてこのタオルで拭いてからにしろって。」


そのまま入ろうとする2人を抑制し、タオルを投げつける。

それをフルアが受け取るとユウを乱暴に拭き始め、1通り拭き終わると自分を吹き始める。


「サンキューガロード。」

「そんで、ハルトはどうしたんだ? 一緒じゃなかったのか。」

「ああ、ハルトね。ハルトは遅いから置いてきちゃった。そんで、さっきからなんかいい匂いがするけど何してるの? 」


なんかハルトの扱いが酷かった気がするが触れないでおこう。

そのうち帰ってくるだろ。


「ああ、シャルルとミイナがケーキ作ってるんだよ。」

「そうだったんだ。ちょっとお邪魔してくるかな。」

「食べたい。」


それを聞いたフルアとユウはシャワールームではなくシャルルとミイナがいる作業台と竈へ向った。


「フルアちゃんユウちゃんおかえり。ってずぶ濡れじゃない! 早くシャワー浴びてきなよ。あー! ダメ! それ食べたらケーキが上手く作れなくなっちゃうよ! 」

「ユウ!? それはまだ焼いてないから食べちゃダメだよ! 」


フルア達が乱入して何やらキッチンがてんやわんやしているようだ。

文字通り邪魔している。

シャルルとミイナに追い出される様にフルアとユウが作業場から出てくると今度こそシャワールームへと向った。

人数も増えて騒がしくなってきたけど、もう夕方近いしどこかに出かける気分にも成れないな。

なので俺はまたさっきまでやっていた暇つぶしを再開した。

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