第47話 殺した願いと溢れる思い 04
ガルードとミイナの言い争いから嫌な予感がしていた。
だから僕は何があっても皆を守れるように注意していた。
フルアがミイナを不意打ちして、ミイナに陰りのある笑顔が戻り、その予感は確信に変わる。
ミイナは最後の別れの言葉を告げると同時に魔力が増幅していく。
これはマズイ。
今まで盾を重ねて防いできた雷とは比べ物にならない程の魔力だ。
これを防ぐ術は1つしかない。
ガルードの指示は無いけど独断で詠唱に入る。
出し惜しみなんてしている場合ではない。
「我が魔力の根源よ! 今我が身離れ全ての力開放せよ! 我は守る。全ての者を。我求む。その力! 顕現せよ! シルシャルマ!! 」
詠唱を終え、十字を象る白銀の盾が現れると同時に魔力を開放し、ガルード、フルア、シャルルを覆うように大きな光球を作り出した。
ミイナの雷が光球に触れると同時に僕の盾にレッドデビルの時には感じられなかった負荷が襲いかかる。
「ありがとう。助かったハルト。ナイス判断。」
「全く油断するんじゃないよガルード。」
「もう駄目かと思ったよありがとうハルトくん。」
皆が僕に駆け寄り感謝を告げる。
だけど攻撃を必死に踏ん張りながら防いでる僕に返事を返す余裕はない。
何秒経っただろうかミイナの攻撃を耐えていると徐々に負荷が軽くなり、最後には感じられなくなった。
負荷が無くなったと言うことは攻撃が止んだのだろう。
だけど、次にミイナが何をしてくるのかわからず不安なので光球を出し続けている。
この間も魔力が消費されるが仕方ない。
ミイナに先ほど感じられなかった殺意が芽生えてしまったのだから。
盾からミイナを覗き込む。
土煙の隙間から放心し立ち尽くすミイナを捉えると同時にミイナも僕の視線に気が付き、誰も倒れてない事を認識すると怒りに満ちた表情で迫り来る。
「なんなんだよ! なんなんだよお前! 嫌い! 嫌い! 大っ嫌いだ! 最初から気に食わなかったの! ユウに好かれてさ! だけどユウの意志だから見守るしかない! ユウが取られたみたいで悔しかった! そして今度は私の決意すら台無しにしてさ!」
八つ当たりにも見える怒りと雷を込めた拳を光球に叩きつけ始めた。
光球と拳が触れるたびに耳を刺す乾いた音と共に光弾ける。
先ほどの雷とまではいかないが、それでもかなりの衝撃が僕に襲いかかる。
このまま防戦一方では直ぐに僕の魔力が尽きてしまう。
「ガルード! 何か手はないの!? 」
焦りから漏れだした声と共にガルードに視線を移すと、2人に指示を出してる最中の姿が確認できた。
よかった。ちゃんと策はあるんだね。
「あいつももう余裕が無い。元々長期戦なんて勝ち目がないんだ。だからハルトがハイエストを出した以上俺達も全力でいく。次があるなんて考えるなよ? シャルル手加減なんて絶対するな。」
「わかってるよ。大丈夫。これが私の出来る事なら精一杯やる。」
「了解。まぁ、どっちにしてもコレ使ったら私は動けないし。失敗した時の責任はよろしくね。」
「失敗だけは勘弁してくれって。情けなくて死んでも死にきれないぞ。上手く行って、それでもミイナに勝てなかったらそれまでってことで諦められる。」
「はいはい。私もここまで来て徒労に終わるのは嫌だし。あの子を大人しくさせてから一発ガツンと入れてやらないとね。」
「よし、それじゃあいくぞ。フルア。魔法が終わる30秒前に合図くれ。シャルル、用意が出来たら俺が合図するから合わせてくれ。」
「「了解。」」
「それで、僕は何したらいいの! 」
3人だけでどんどん作戦が進んでいき、疎外感を感じる僕。
そんな寂しさを感じたのか通じたのかガルードは僕に苦笑しながら答える。
「お前は攻撃防いでくれるだけでありがたいって。何も考えず必死に少しでも長く攻撃を防いでくれ! 」
「了解! 」
ガルードの答えに安心した僕は全神経をシルシャルマにつぎ込む。
少しでも長く攻撃を防ぐため。防ぐことだけを考える。終わりが見えないけど、ガルードたちが直ぐに終わらせてくれる。だからそれまで頑張る踏ん張るんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます