第46話 殺した願いと溢れる思い 03

ガルード.side




割と余裕ぶってるけどこっちもギリギリなんだよ。

フルアの魔力だってそろそろ限界だ。

そうなると今までのバランスが崩れる。

さっきの爆発だってありったけの魔石を使ったものだ。

次はない。

もうこれで諦めろって。

そんな俺の願いも虚しく、ミイナはゆっくりと身体を起す。


「ふ、ふふふ、アハハハ! 酷い! 酷いよお兄ちゃん! 私みたいな小さい子をみんなでボロボロにして! 全身が痛い。痛いんだよ。こんなに痛いのは久しぶりだよ! 」


ミイナは身体を抱きしめ笑いながら俺たちを見据える。


「なら諦めろって! もう俺達に勝てないのはわかっただろ? 」


これで終わりならどんなに楽か。

だけどミイナの目はまだ諦めていない。


「この前言ったことは訂正するよ。こんなに1対4が辛いなんて思わなかった。」

「なら諦めろ。このまま続けたって結果は同じだ。」

「そうだね。甘く見てたよ。人ってさ力を合わせたら本当に強くなれるんだね。でもさ、結果が同じかはわからないよ。戦っていて私気がついちゃったんだぁ。」


ミイナは愉しげに言うとの身体から迸る雷がバチバチと音を上げて強くなる。


「確かにこの爪や牙じゃお兄ちゃん達を傷つける事はできないみたい。本当はね。手加減してたの。だってお兄ちゃん達を殺したくなかった。だからこの爪で動けないようにしたかったのに。」


ミイナは口を指で広げて牙を俺らに見せつけ笑う。

だけど俺には泣いている様にしか見えなかった。

哀愁漂う様はただただ辛い。


「この2週間本当に楽しかった。もう味わえないと思った幸せがそこにあったんだよ? みんな本当に好きになったんだ。シャル姉だって、フル姉だって、……変態だって。もちろんお兄ちゃんも。」

「好きな人を殺すなんて出来ないよ。したくないよ。こんなに辛いことはないって。だけどさ、だけどダメなんだ。私には選べない。」


さっきまで無理して笑っていたミイナは段々と悲痛に歪みを叫び始める。


「ならもういいだろ! こんな事はやめろって! 」

「止められるなら止めたいよ! だけどここでやめたら、ユウは……。ユウは助からないんだ! 私にはもうユウしか居ないの! お兄ちゃん達よりも大事! 大事なんだよ! 」

「私はどうなってもいい! どんな罪だって背負って生きるよ! ユウが幸せに……。いいや、幸せにはなれないよね。だけど私にできることは全部、全部やるって決めたの! 」

「そんな事しなくていい! 俺たちだって手伝ってやるから! 」


俺は堪らず叫んでいた。

そうだ。俺たちならきっと力になってやれる。

根本的な解決ができないのなら何か対策だって考える。


「そんなこと無理だよ。だってお兄ちゃん達私にすら勝ててッ。」


ミイナの言葉が途中で途切れる。

フルアがミイナに回し蹴りを仕掛けたからだ。


「アンタら話長すぎ。今は戦い中だよ。それもルール無用な筈。命のやりとりをしてるわけ。まぁ、私達に殺すつもりなんて毛頭ないんだけどね。話しなら終わった後でじっくり聞くよ。ッツ!? 」


蹴りを両手で受けたミイナはそのまま放雷した。

それを察したフルアは直ぐ様俺たちの元に戻る。


「ちょっと卑怯じゃないフル姉? 真剣に話してるのに横槍なんてさ。」

「卑怯? 卑怯なんて言葉この場にあると思うわけ? 」

「いや、今のはどう見ても卑怯だよ。」


思わずハルトも突っ込んだ。

フルアは短絡的な性格だがまさかこんな真面目な話の最中に攻撃を仕掛けるなんて思いもしない。


「ふふ、はは。そうだよね。そうだよ。卑怯なんて無いんだよね。勝てばいい。コレも作戦だったのかなお兄ちゃん? 」


悲痛な顔から再び陰りのある笑顔に戻るミイナ。


「ちが、俺はそんなこと。」

「お兄ちゃん達が悪いんだよ。こんなにも強いから。だから手加減できない。もっと力が無かったら死なずに済んだのにさ。」

「気がついたんだ。1つだけお兄ちゃん達は私の攻撃をまともに防げてないって。私の雷1つ防ぐので精一杯だったって。私は全力出してないのにね。」

「だから……これでお別れ。今までありがとう。」


ミイナの身体が今までに無いほどに光輝くと同時にミイナを中心に地面が抉れていく。

回避なんてさせるつもりもないこの村ごと吹き飛ばすつもりの全力無差別放雷。

ヤバイ。

やばいやばい!

こんなイキナリ全力出してくると思わなかった。

話に夢中になって何も準備していない。

わかっていたら手はあった。

クソッ、こんな所で終わるのか?

終われるわけねーだろ!


「ハルト!! 」


少しでいい。ほんの少しだけでいいから得意の盾で時間を稼いでくれ!

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