第24話 Highest Arms 05
ハルト君がユウちゃんを抱えて駆け出す。
それを見たレッドデビルは2人に飛びかかるのを、今度はレッドデビルの胴体に当てて阻止する。
「ここから先に行きたかったら私を倒さないとダメだよ。」
二度防がれた事でようやく私を敵として認識するレッドデビル。
今まで簡単に攻撃を当てられたのは私のことが眼中になかったから。
でもダメージも大して無いみたい。
ここから先が本番だね。
「風が歌うは歓喜の歌。その歌聞きし者。歓喜の舞。踊る力を授からん。」
私はレシ・フィールよりも範囲は限定されるけど効果の高い移動強化魔法を唱える。
まずは回避する事を考えないと。
ごめんねハルト君。
あんなこと言って。
足手まといなんかじゃないよ。
ハルト君が近くにいるだけで頼もしくて安心できる。
今も不安で、不安で仕方ない。
でもそんな私の我儘でハルト君を危険な目に合わせたくない。
だって、ハルト君は大切な幼なじみ。
いや家族だから。
私1人でも勝算はある。
私の最大魔法を当てればいくらレッドデビルと言えども耐えられるはずがない。
ただその魔法を唱える時間を作れるかどうかが鍵。
最短でも2分は掛かっちゃうし……。
勝算は3割って所かな?
弱気になっちゃダメだ。
弱気になったらできるものも出来なくなる。
レッドデビルは私の出方を嘲笑いながら伺っている。
「そっちから来ないなら今度はこっちから行くよ! バレ・フィール!! 」
さっきよりも威力の高い風を連続で打ち出す。
それをレッドデビルは回りこむように避けながら私に接近。
飛びかかると同時に長く鋭い爪を大きく振りかぶり攻撃を仕掛けてきた。
それを私は後ろに飛んで回避する。
さっきまで立っていた地面を爪で大きく抉るレッドデビル。
その飛散る破片を目隠しに風の弾丸を顔目掛けて打ち込む。
レッドデビルの顔に直撃。
でも当たった部分を指で掻いてまた嘲笑うだけだった。
やっぱり無詠唱魔法じゃ威力が足りないよね……。
でもレッドデビルの早さには対応できてる。
頑張れ私。
「右手に宿りし風の精。刃となりて敵を切り裂け! 」
今度は風刃で牽制する。
当てる事が目的じゃない。
コレを空中で回避させることが目的……なんだけどその考えを読んでいるのか、レッドデビルは左右に素早く動いて回避する。
その動きに合わせて私は攻撃を繰り返す。
だけど一向に当たる気配もなく難なくレッドデビルの接近を許してしまう。
斬りかかるレッドデビルを私は頭上に大きく跳んで回避する。
空中に逃げた私を見てまた不快な笑い声を上げ追撃を仕掛けるためレッドデビルが跳躍した。
かかった。
空中に逃げないのなら私が囮に成ればいい。
「虚空から生み出されし風ノ渦。天昇り高く舞い狂え! ハリトル・フレシオン・ストラ!! 」
レッドデビルの真下に旋風を作り空高く吹き飛ばそうと試みる。
私は突風で旋風の機動から回避する。
大きく上空に飛ばした隙に私は詠唱の準備に入ろう。
「ゲヒィッ! ゲヒゲヒッ! 」
レッドデビルはまた不快な声と共に私から轟音上げて近づく旋風に視線を移すと口を大きく開ける。
そしてその口前方に火球を作り出す。
徐々に大きくなり1メートル程の火球になると旋風の中心へ発射。
渦の中心で大きく爆発し、私の作った旋風がかき消されてしまった。
「そんな……。」
確かにキラーエイプに比べて魔法が使えることは知っていた。
でもここまでの物とは思ってもいなかった。
上級魔法にも引けを取らない威力だと思う。
それを詠唱無しで使うなんて。
これがBランク。
どうしようハルト君……。
ダメだまた弱気になっちゃう所だった。
考えないと。
私がやられたらハルト君や村の皆までやられちゃうんだ。
私の怯えた表情に何やら思う所があったのかレッドデビルは大きく手を叩き喜んでいる。
「舐めないで! 私はまだ戦えるよ! 風に宿りし魔獣。十六ノ刃に姿変え。仇なす敵を切り刻め! フラメ・ソニトラ・ブレクシア!! 」
全方位からの風刃。
それもさっき唱えた物より上位の魔法。
いくらレッドデビルと言えども当たれば唯では済まない。
風刃が迫っているにも関わらず踊り続けるレッドデビル。
風刃が1メートル程近づいた時レッドデビルの姿が消える。
そして再び姿を表した時には私の直ぐ目の前だった。
「……え?」
油断していた訳じゃない。
強敵なんだからそんな余裕はない。
でも見失ってしまった。
反応できなかった。
致命的なミス。
いや、もしかしたらさっきまで本気を出していなかったのかもしれない。
遊ばれていた?
「ガヒッ! ゲヒガヒィ! 」
レッドデビルは笑いながら私の右腕を掴み上げると頬を舐める。
臭くてネバネバで気持ち悪い。
声を上げて嫌がるのを必死で我慢し、左腕をレッドデビルの頭に添える。
今使える詠唱無しで最大の魔法を当てるんだ。
左手に魔力を込めた瞬間。
レッドデビルが掴んでいた私の右腕をへし折った。
「イヤァああああああああああ!!! 」
今まで感じたことのない痛さに我慢していた恐怖が一気に押し寄せる。
痛いよ……。怖いよ……。
痛さと恐怖で何も考えられない。
助けて……ハル君。
恐怖に怯える私を見て更に機嫌を良くしたレッドデビルはその場で踊りだす。
ゴメンねハル君。
私ダメだったよ。
皆を守れなかった。
……。
…………。
………………嫌だよ。
こんな所で魔物に殺されるなんて、終わりだなんて。
まだみんなと色々やりたいことがあるのに。
やっと……やっと幸せだって思えるようになったのに。
いっぱいいっぱい皆と遊びたい。
ガルード君とフルアちゃんが私達を引っ張って、それを嫌々の様に見えて嬉しそうに付き合うハルト君。
そしてそれを後ろから眺める私。
そんな日常がずっと続くと思ってた。
毎日が楽しかったのに。
こんな所で終わりたくない。
「全ての風を統べる風神よ。我の呼ぶ声が届く時。今一度その力を授け給え。」
残り全ての力を振り絞って私の使える最強の魔法の詠唱を始める。
絶対に外さない、確実に駆除する為にその標的をもう一度睨みつける。
呑気に踊っている今なら当てられるかもしれない。
それがあなたの最後の踊りにして上げる。
レッドデビルを睨みつけているとふと違和感に気がつく。
さっきよりもこの辺りが明るくなっている気がする。
上を見るとさっきよりも大きな5メートル程ある火球がレッドデビルの上に形成されていた。
「そんな……。」
ようやく気がついたのかと言うようにゲスな笑顔を浮かべるレッドデビル。
そしてそのまま私に向ってその火球を打ち下ろす。
「風神より宿り貸りしこの力。姿なき無数風刃纏いし竜巻となれ。吹き荒れろ!トルタフィール・エクリム・トルネリプス!!」
少しでも威力を軽減させようと不完全なまま魔法を発動させる。
不完全な魔法はそのまま火球が飲み込み、その火球は轟音を上げそのまま私も飲み込んだ。
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