第23話 Highest Arms 04

`レッドデビル`

魔物をA~Eの5段階で評価するとこの魔物上から2番目のはBランクに相当する。

先ほどのキラーエイプはDランク。

Bランクの魔物は上級魔法が使える魔法使いが数人数十人いることで対処することができると言われている。

ガルシアさんクラスの魔法使いなら1人で倒すこともできると思う。

以前Aランクを相手に1人で戦った事もあるが今の僕には到底無理だ。

逆立ちしても勝てる要素がない。


人間は魔力を使うことで成長するが、魔物は他者の魔石を取り込む事でも成長する。

人間で同じ事をすると魔石同士が拒絶反応を起こして最悪死に至るのだが。

レッドデビルはキラーエイプが魔物を沢山喰らい成長し、変化した魔物だ。

キラーエイプより単純に機動力、殺傷力が上がっている上に魔力が高い。


キラーエイプと共に人里に降りては殺戮を繰り返しいくつもの集落を壊滅させた事件。

村人は大人子供、男女問わず皆殺しにされた。

当時の事件を知るものはキラーエイプの上位個体をその毛並みの色から`赤い悪魔`と呼ぶ。

もしかしたらここ最近の事件もこいつの仕業なのかもしれない。

その悪魔は咆哮と共にユウとシャルル向かって飛びかかる。

その動きを読んでいたのかシャルルはレッドデビルの突撃に反応して突風で吹き飛ばす。

僕はそのやりとりを目で追うのがやっとで反応出来なかった。


「ハルト君。ユウちゃんを連れてここから逃げて。」

「な、何言ってるんだよ。シャルル1人を置いて逃げられる訳ないだろ! 僕も戦う! 」


僕はシャルルの前に出るとシャルルは僕の服の裾を軽く掴んでそれを遮る。


「ダメだよ。ハルト君さっきの動きに反応できてなかったでしょ? 」


シャルルのその一言に僕は同様を隠せない。


「た、確かに咄嗟に事で反応できなかったけど……。」

「それだけじゃないよ。さっきキラーエイプと戦ってた時何で魔法使わなかったの? 」

「そ、それは使う必要がなかったから。」


動揺しながら答えると今度はシャルルが僕の一歩前に出る。


「まだ本調子じゃないんだよね。魔法も使えないそんなハルト君をこんな魔物と戦わせる訳にはいかないよ。」

「だからってシャルル1人に任せる訳には……。」

「ハルト君は優しいから私を1人に出来ないのわかってる。でも、厳しい事を言うかもしれないけど、戦えないハルト君が側にいると思うように戦えないって事もわかってほしいな。」

「シャルル……。」


そう言われてしまうと何も言い返す事ができない。


「大丈夫っ。私1人でもなんとかなるから。」


笑顔で振り返るシャルルだが。


「そんな……なら何でそんな諦めた顔をしてるんだよ! 」


僕のこの一言で必死に作ったであろう笑顔が崩れ落ちる。


「あ、あはは。ダメだな。最後の最後で顔に出ちゃった。でもさっき言った事は本当なの。勝算もある。だから早くユウちゃんを連れて逃げて。」

「ダメだ。シャルルを置いて逃げるなんて。」

「ハルト君!! 」


僕の会話を今まで聞いたことのない必死な大声で遮るシャルル。


「もうレッドデビルが襲い掛かってくる。これが最善なの。お願い。」

「……くそッ! ユウちゃんを逃したら直ぐに戻るから! 」

「うん。ありがとう。」


僕は魔術を発動すると共にユウを抱きかかえて村に向って全速力で走り去る。


「いいの? 」

「いいわけないだろ。」

「戦う。」

「僕らが居た所でどうこうなる相手じゃないんだよ! 」

「そう。」


そう。

僕が居た所で邪魔にしかならない……。

悔しいけどこれが今の僕だ。


「うわあああああああああああああああ! 」


悔しくて情けなくて僕は叫ぶことしか出来なかった。

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