第33話 少女に振り回されるのも悪くない 06

「なんでロリコンビは唯の狩りでそんなにボロボロになってるのよ。もしかして魔物でも出たの? 」


狩りを終え、ギルドハウスへ戻った僕ら見て呆れた様子で見つめるフルア。

確かに僕らの姿は満身創痍でボロボロのフラフラだ。

しかし、僕らの手には3匹の兎と1匹の猪がしっかりと捕まえている。

しかも猪の中でも大きく立派な牙を持つ凶暴なボアファングだ。

肉自体に脂身は少なく臭みが有るとは言えさっぱりして食べやすい。

そして内蔵には蕩けるような脂身が詰まっている。

普通に捕獲するのが難しく結構高価な値で取引される猪。

そんな相手に魔法無しなんて言うべきじゃなかった。


「こいつが悪いんだ。俺がトドメを刺そうとしたら妨害してくるから。」

「その前にガルードの方が悪いだろ! 僕が猪と対峙したらいきなり石の壁作るんだもん。いや、そこまではいい。だけど、なんで僕の退路まで塞いでるのさ! 」

「戦いやすくしてやっただけだって。猪逃げなくて楽だったろ? 」


悪びれる様子もなく笑いながら言い切るガルード。

その魔法で俺がどんな思いをしたと思ってるんだこいつは。


「魔術も身体強化しか使えないから死ぬ思いだったんだぞ。」

「でもお前魔法使えるじゃん。」

「そうだね。使うしか無かった。ガルードの狙い通りに。」


僕が魔法で猪の猛攻を防ぐと、その怯んだ隙に攻撃を仕掛けたガルード。

まあ、それが許せなくて僕がガルードを妨害して、石壁に囲まれた猪VSガルードVS僕のバトルロイヤルになったんだよね。


「なんかね、狩りをしてたはずなのにお互い妨害し始めたんだよ。猪と一緒に攻撃とかしてたし。私は面白かったからいいけど。」


僕達の話が長くなりそうと感じたのかミイナがフルアに噛み砕いて説明する。

いや、まぁその通りなんですけど。

結局どうやって猪を倒したかって言うと、お互い疲労がピークに達し、このままだと共倒れしそうだったから同盟結んで魔法で猪を始末した。

なんともまあくだらない試合のくだらない結末である。

しかし、メグリナリアでは全く相手にならなかったガルードとこうやって勝負できる事がわかって少し嬉しかったのは内緒だ。


「そんな訳だ。フルア早く回復してくれ。」

「え、なんで遊んでたあんたらをわざわざ貴重な魔力を消費してまで回復しなくちゃいけないのさ。」


ガルードがフルアにクタクタな身体を直して貰おうとお願いするも却下される。

僕もお願いしたかったが、フルアと同じ立場だったらそんなくだらない事で回復しないだろう。

コレばっかりは文句は言えない。


「仕方ない。ハルト回復薬は? 」

「もう無いよ。この前使いきったって言ったじゃん。あったらとっくに飲んでるよ。」


この辺りにはいい薬草が生えていないので新たに作成することが出来ない。

またメグリナリアに戻ったら作り置きしておこう。

こういった事もユウに教えてみたいのだけど中々いい素材が見つからず機会がない。


「まぁ、大物をしっかり取ってきた所は流石ねっと言っておくわ。」

「そう思うなら回復してくれよ……。」

「遊んでたんだから文句言わない。それじゃあ後は肉の準備はお願いね。それ以外はこっちで用意するから。あ、でも竈は作ってねガルード。あんたが作った方が楽……。いやしっかりした物が出来るんだから。」


フルアはそう言うと、ギルドハウスへ戻っていく。

その場に取り残される僕ら。


「血抜きは終わってるとは言え、早く処理しないと腐っちゃうよ。日も落ちて来ちゃうし、サッサと終わらせて食べない分は魔石で凍らせ無いと。」

「そうだな。任せた。」


僕に猪を預けるガルード。

え、僕1人で解体やるの?


「俺はバーベキューのセッティングがあるからな。」

「あ、お兄ちゃん私も手伝うよ。」


ミイナも兎を置いてガルードの後ろについて行ってしまった。

うーむ。

それを言われてしまうと何も言えない。

フルアも手伝う気はないみたいだし、適材適所と諦めるしか無いか。

しかし、問題があるのだ。

確かに猪を捌くのは簡単だ。

そしてさっきまで死闘?を繰り広げた敵ともあってなんとも憎らしい。

問題はこの3匹の兎。

なんともまあ愛らしく丸々太った兎達だ。

目もくりくりで愛らしい。

血抜きして生気を感じないと言ってもその愛らしい外見は変わらない。

猪は簡単に捌けると言うのに兎になると捌けないなんて唯のエゴだ。

だが考えてみて欲しい。

よく出来た可愛らしい人形とモンスターの木造を壊せと言われたら皆モンスターを選ぶだろう。

そして人形を壊すのには躊躇するはず。

食べる目的が有るとはいえ……勇気がいる。

この生気を失ってもなお、本当に解体するの? と訴えかける目。

この目を見ているとこの愛らしい外見を今壊すと言う事実に中々ナイフを向ける事が出来ない。


「手伝う? 」

「うわ!? なんだユウちゃんか。びっくりした。」


ユウがいつの間にか僕の隣に立っていた。

突然話しかけてきたからびっくりしたよ。


「手伝うってユウちゃん兎捌けるの? 」

「うん。」


なんとも逞しい姉妹である。

猪も捌かないといけないしここはお願いしようかな。


「うん。それじゃあお願いしよッツ!? 」

「おいこら!ユウに何させようとしてるんだ! 」


僕がユウにナイフを手渡そうとするとどこで見ていたのかミイナが横から飛び蹴りしてきた。

遠くでその様子を見ているガルードは指を指して笑っている。


「ユウはそんな血なまぐさい事しなくていいんだよ? 私と一緒にバーベキューの準備しよ? 」

「でも大変。」

「大丈夫だよ。こいつだって一応男なんだから。」


ユウが僕を指さしながらいつもの無表情で言うもミイナは動じない。

でも一歩も譲らないユウ。

先に折れたのはミイナだった。


「じゃ、じゃあ危なかったら直ぐにやめるんだよ? 怪我してからじゃ遅いんだからね。」

「わかってる。」


心配そうに何度もユウを振り返るミイナ。

ミイナって本当にユウのこと大事にしてるんだな。

ちょっと過保護過ぎる気もするが。


「よかったの? ミイナちゃんの言うこと聞かなくて。」

「大丈夫。」


うーん、ユウは大丈夫そうだけど僕が大丈夫じゃないかも。

なんか凄い睨まれてる。

お前が止めないからと目で訴えかけている。


「ミイナちゃんも言ってたけど本当に無理しなくていいからね?危なかったら直ぐ言ってね? 」

「わかってる。」


あ、今度はユウが少し不機嫌になった。

僕もミイナも少し心配しすぎたのかも。

いい加減うんざりしたのかな?

うーん、でも色白でこの華奢な外見だから色々心配するのは仕方ないと思うんだ。

ミイナの過保護っぷりも少しわかる気がする。

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