第44話 殺した願いと溢れる思い

ミイナ.side




翌日。

私はシラクネ村に1人で向った。

ユウはレーミアスちゃんと一緒だ。

本当はあんな子と一緒に居させたくないんだけど、私がしっかりやるのか疑問に思われてるから仕方ない。

人質代わりだって言われてしまった。

でも、ユウをこんな最悪で最低な事に付き合わせなくて済むと考えればまだいいのかも。

落ち込んだ気分を抑えこみ徐々に感情を殺す。


心が冷めた所でシラクネ村に着いた。

だけど、村はいつもより静かだ。

普段なら数人が歩いていたりするのだけど、人っ子一人も見つからない。

そっか……。

お兄ちゃん達が逃がしたのか。

その可能性は考えてなかった。

冷静に考えるとそうだよね。

襲われるってわかってるんだから皆避難させるよ。

馬鹿だな私。


村人を連れていけないんじゃここに来た意味もないし、あいつらの、私達の計画も失敗だ。

私はどうなっても良いからせめてユウだけでも助けないと。

私はどうやって言い訳しようか考えながら1人くらい逸れた村人がいるんじゃないかと探し歩いた。

すると村の中心の広場に4つの人影が見える。

その姿を確認すると私の胸の奥が微かに痛む。


「村人が見えないんだけどどこに行ったのお兄ちゃん? 」

「俺達が避難させた。勝ってたら教えてやるよ。」

「あんなに実力差があったのにお兄ちゃんは一緒に逃げなかったんだ。今日はもう手加減なんてしないんだよ、お兄ちゃん。」


私は強くキツ目な声と目で立ちふさがるお兄ちゃん達に告げる。

その姿を見てお兄ちゃんは怯むどころか何時もの調子で答える。


「それはこっちの台詞だ。今日は俺らリターンズ・ウィンド全員が相手なんだからな。」

「弱い人がいくら集まっても強い人には勝てないんだよ。それにシャル姉は怪我直ったばかりなのに戦わせるなんて酷いんじゃないかな? 」


私はシャル姉に目を向ける。

シャル姉は何時ものどこか抜けていると言うかふわっとしている雰囲気は感じられない。

真剣な覚悟を決めた目で私を見つめている。


「私の事は気にしなくていいよ。もし怪我が治ってなかったとしても、ミイナちゃんを止めるために全力で戦うから。」

「そういうこと。ここにいる皆はミイナを止めたいんだよ。死んでもね。覚悟も決めてる。だからミイナも覚悟しな。覚悟の無い人に負ける程私達は弱くない。」


その言葉に私は苛立ち、一気に力を解放する。

爪が鋭く伸び、耳も生え力が溢れ出る。

覚悟?

覚悟なんてとっくに出来てる!

どんなことをしてもユウを守るって!


……本当にそうかな?

まだ戸惑いを感じているから、それを見透かされるようでフル姉の言葉に苛立ちを感じたんじゃないの?

ならこの戦いで終わりにしよう。

そんな自分の甘さも、誰かがなんとかしてくれるなんて淡い希望も全部全部全力で打ち砕く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る