第52話 掴んだ未来、失う物は 03

ガルード.side




実際の所家を作るのは簡単だ。

家を作るだけならな。

俺が魔法でパパっと建てればいいのだから。

だけど石家は簡単にできるが、夏場は熱いし、冬場はクソ寒い。

経験者は語るのだ。

ならばレンガで建築すればいいと思うかも知れないが、実際の所あれは加工物だ。

俺の魔法では作れない。

ていうか魔法で作れる奴なんているのか?

居たら是非とも教えて欲しいものだ。

日干ししたり焼いたりなんやりしないといけないわけで、そんな時間は俺達にはない。

だから森から木を切り出し木造の家を建てる事にした。

レーミアスに木を切り倒してもらい、フルアがそれを運ぶ。

それをミイナが俺の指示通りに切り揃える。

俺はそれを魔法で作った石の基礎に組み立てていく。

しかし一から建築なんて久々だな。

当然ながら魔法を使っていても4人だけだと中々進まない。

そんな事を思っていると俺たちを見つけた村人が駆け寄ってくる。

どうやらハルトとシャルルは上手くやってくれたようだ。

俺達にも手伝わせろとやたらに高いテンションの村人達に俺も釣られてテンションが上がる。

それを見たフルアは苦笑しながら呆れていたが、さっきまで言っていた文句を出すことは無くなった。

レーミアスとミイナの異形な姿を見てもちっとも怯える様子がなく、むしろ積極的に話しかける輩までいる始末だ。

確かに容姿だけ見れば可愛いと呼べる部類だからな。

それに村人からしたら見ず知らずの獣人が自分たちの村を直してくれる恩人と捉えてるだろうし。

ミイナは笑いながら対応し、レーミアスはどうしたらいいのかわからず戸惑いながらも何時もの様にきつい調子で返していた。


「ほら、居場所がないなんて勝手に決め付けんなよ。こうやって皆笑って接してくれるじゃないか。」

「うるさいわね。わかってるわよ。」


そんな様子がおかしくて茶化すとレーミアスは顔を赤くしながら黙々と作業を続ける。

それを見た村人たちがやるねー嬢ちゃんとかこっちも頼むとか囃し立てるから増々赤くなるレーミアス。

よかった。

これならこいつのトラウマもどうにかなるだろ。

村人たちも手伝ってくれるが今日のこの様子だと家の基礎に壁を作った所で終わりだな。

1つの家を作るまでに2日ってところだな。

でも今後は効率もよくなっていくだろうし、問題ないだろ。

作業のキリがいいところでハルトとシャルルが俺達建築班を呼びに来た。

どうやら昼ごはんの用意が出来たらしい。

腹が減ってたら作業もはかどらないしな。

それを聞いた村人たちもさっきから上がりっぱなしだったテンションが更に上がっている。

用意されたご飯はコレまた豪勢なもので、午後の士気も上がる一方だ。

建築班に選ばれなかった女性陣もやることがないので腕をふるったって事か。

皆村が壊されて落ち込んでいると思ったがなんだかんだでこの状況を楽しんでいるみたいだな。

これは余計に作業に力が入るってもんだ。

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僕は僕《キミ》を、君は君《ボク》を否定する はいるす @hairusu

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