第12話 初めての遠征と不思議な姉妹
「ああぁー、疲れた……。」
「お前は大したことしてないだろ。」
僕とガルードはこの前の騒動の後片付けをしている。
朝から始めてやっと今半分ってところだ。
土魔法の得意なガルードがいるから簡単に事が運んでいるけど、魔法が使えなかったら凄い手間になる。
そんな事は考えたくもないな。
造形師としても有名なガルードがいたからだろう。
家を壊された街の人達は笑って許してくれた。
よく厄介事を起すのだがガルードの人の良さやリターンズの仕事っぷりが評価されているようだ。
丁度改築したかったのよーと喜んでる人までいる始末。
確かに次々と直される建物は前よりも丈夫で立派な物となっていた。
ワンポイントアクセントなのかたまに変な置物が添えられたりするのだが。
ガルードの趣味らしい。
そんな中僕は何をしているのかと言うと、壊れた材木を運んだり瓦礫をどかしたりと言った雑用係だ。
ガルードが魔法で動かしてくれる方が早くて楽なのだが、建築に魔力を使わないといけないのだから仕方ない。
フルアが強化魔法でも掛けてくれると助かるのだけれど、今日は別の仕事があってここには居ない。
シャルルも一緒に出かけてしまったので、男2人で作業してるのだ。
力仕事だから適材適所なのかもしれないが、疲れる物は疲れるし僕もフルアやシャルルの方を手伝いたかった。
そう心の中で軽く愚痴ると本日何本目になるかわからない回復薬を飲み干すとまた作業に取り掛かった。
「あー! もう! もうダメだ! 魔力切れだ! 今日はこれでおしまい! 」
建築のことはわからないがガルードのペースが早いからだろうか?
もう街の3分の2は修理したと思う。
流石のガルードももう魔力切れみたいだ。
体力に関しては回復薬でどうとでもなるけど流石に魔力はどうしようもないからなー。
修理しきれなかった家は後日色を付けて修理すると言うことで納得してもらった。
しかし補強は既にやっているしこれ以上色を付けるってどうするんだ?
まぁ、実際に作業するのはガルードだ。
僕が口を出す必要はないしガルードに任せよう。
こうして一仕事終えた僕達はギルドハウスへ戻りシャルルの夕飯をご馳走になっている。
「それで、街の修理の方はどんな感じ? 」
料理を頬張りながらフルアが僕達に問いかける。
「結構進んだぞ。残り3分の1程だな。」
ガルードの返答に手を叩いて喜ぶシャルル。
「そうなると明日には終わりそうだね。流石リターンズウィンドだよ。」
「実質俺のお陰だけどな。」
シャルルに褒められてドヤ顔で胸を張るガルード。
「僕だって手伝ってるよね色々。」
「雑用本当に助かるよ、って何で本末の原因のお前が雑用なんだよ! 」
ノリツッコミで返してくれるガルード。
本当にノリのいい奴だ。
「そんなこと言うなよマスター。部下の不祥事もマスターの責任だって前言ってたじゃんか。」
「都合のいい時だけマスターマスターって担ぎ上げやがって。なら普段から敬え。」
敬えって言われてもなー。
普段の言動を見ているとそんな気分には慣れない。
フルアも僕と同じ意見なようで互いに顔を見合わせる。
「それはマスター次第だな。」
「ガルードマスターッて言うより兄ちゃんだもんね。」
「で、でもみんなそう言ってるけどいつも本当に頼りにしてるよ。」
「ありがとうそう言ってくれるのはシャルルだけだ! 」
「話脱線しちゃったけどさ、明日には終わるって事でいいのかな? 」
シャルルだけがフォローしてくれることに喜んでいるガルードにフルアが少し真面目な調子で質問した。
それに僕は今日のペースを思い出し返答した。
「ガルードのペース次第だけど、多分終わると思うよ。」
「まぁ、今日の様子だと大丈夫だろ。で、何でまたこんな事聞いたんだ?急ぐ話でもないだろ。」
ガルードの答えに納得しない様子のフルア。
「うーん。まぁそうなんだけどね。この前の勝負した時に集会所でクエスト受注しちゃったじゃん。」
「ああー、そんなこともあったね。そういえば依頼の内容まだ聞いてなかったけど、どんな依頼なの? 」
「えっとここから結構離れた所にシラクネ村って村があるんだけど。そこの護衛かな?なんでも最近よく魔物が出るらしいの。」
依頼には大きく分けて4つの種類がある。
1つは採取系で、依頼主の希望したアイテムを届ける物。
2つ目は依頼者の要望に答える物。
3つ目は討伐、元凶となる魔物を倒す物。
4つ目が護衛と言って対象を脅威から守る依頼だ。
対象は人から国まで様々なのだが、今回は村ということだ。
コレがまた面倒で、村や国が魔物に襲われている場合依頼が来ていることからわかる様に魔物が何度も押し寄せてくる。
元凶を断たない限りいつ終わるかわからないので長い間拘束される場合があるのだ。
なので原因がわかっていない場合定期的に依頼を出す村も少なくない。
今回もそのケースのようだ。
「また面倒なクエストを受注してきたもんだな。」
ガルードもその事を知っているので呆れたと言うより諦めた様にフルアに言った。
「だって仕方ないじゃん急いでたんだし。わかってたら私もこんなクエスト受けなかったって。」
リターンズは武闘派ギルドみたいに戦闘員が多い訳ではないのでこういった大規模戦闘は向かない。
「で、でも報酬は高いみたいだよ! ほら、私達の今月の生活費より多い! 」
シャルルが少しでもいい所を探そうとテンション高めてそう言った。
でも言っていることを聞いていると、悲しくなる。
「確かに村や街の護衛は報酬が高いからな。面倒だと言って受注を取り消せば信用に響くし、しょうが無いか。村の人には悪いが契約期間だけ頑張って抑えることを考えよう。」
「そう重く考えないでちょっとした旅行な気持ちで行かない? そうしたら楽しくなるってきっと。」
フルアの旅行という言葉に反応してシャルルは目を輝かせる。
「シラクネ村って遠いんだよね? お弁当作らないと。皆でどこかに出かけるのって久々だねー。今から楽しみになってきちゃった。」
「そういう訳だからさ。明日パパっと終わらせて来てよお二人さん。」
フルアは軽く言うけど結構大変なんだからね?
一緒に手伝ってくれたらパパっと終わるのに。
僕は手伝ってもいいんだよ?と視線を送るけど、フルアはこっちに気が付きながらも無視を決め込む。
「それもそうだな。シラクネ村みたいな小さな村を襲う魔物だ。大したこと無いだろ。それじゃあ明日サクッと終わらせて旅行に行くとするかハルト! 」
「頑張れガルード! 」
「お前も頑張るんだよ! 」
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