第18話 教室の休み時間
「あらやあ、砂護くん、この前はありがとうねー」
休み時間の、教室。
教室にいたところ、謎の掛け声とともに挨拶を仕掛けてくる柿本先生。
あらやあ―――って、何か可愛い。
クラスで東尾たちとゲームの話に興じていたら、柿本先生がすいっと教室にはいってきた。
ありがとう―――というのは、この前頼まれた水橋李雨の件なのだな、と、それぐらいしか思いつかない。
東尾と
西樫は、そのままゲームに登場する新機体の話を続けていた。
「なあ砂護、だからその中距離からミサイルだけ撃ってりゃいいみたいな、それで勝てるみたいなゲーム性が気に入らねえんだよ、お前はどう思う?」
「え………ええと確かにあの
「おお続編!出るのか?」
「いや、知らないけれど、出たらって話でさ」
「うーむ………」
ゲームにハマっている。
歴史上の人物がモチーフとなっているロボットを操り、戦うゲームである。
………何を言っているのかわからないが、総勢四十九体の機体が存在し、なかなかに対戦が熱いゲームだった。
日本ではかつて、歴史上の人物のビジュアルを変え、容姿端麗な美少女キャラクターにするということが当たり前に流行っていた。
美男もいたかもしれないが今のところ僕がそちら方面に興味が沸いていていない。
流行り、流行りまくってその後は、また違う流行が訪れた。
違う展開がやってきた。
歴史上の人物をモチーフに、ロボットにしたのだ。
メカである。
その対戦ゲームが人気を博した。
なんだか滅茶苦茶な感は否めないが、日本がおかしいのは今に始まったことではないらしかった。
「日本のロボはヤバい。まったくもって日本人はイカしている」
と、ネットでは日本人だけでなく外人が大きく食いつき、北欧版の方が売れているという話もちらほら。
僕が最近好んで使っているのはベートーベンジャミンだ。
ビームや超音波兵器をメイン火力としている機体である。
大火力で、やや鈍重な機体ではあるが、必殺ゲージが貯まると固有ヒステリックスキルの「デスティニーターボ」を発動し、音速を上回るスピードで移動することが可能―――。
「砂護くん」
柿本先生が、教卓まで行く間に振り返った。
「良かったら―――また水橋さんのお宅に届けてもらえる?」
「んえぇ―――ああ、いいですけれど」
頼まれたら断りづらい日本人体質である。
まあ、決してイヤではない。
しかし隣にこいつらがいるのはなあ、こいつら男子がいる前だと身構える。
なんか冷やかされそうだ。
考えすぎか。
うん。
「んえぇ―――って変な声が出たな」
「放っておいてくれ」
とにかく、僕ももう少し、水橋李雨と話せたらいいなあと漠然と思っていた。
あの子は悪い子には―――見えなくて。
友達にはなれるだろうか―――?
まだ、今は時期が何となく悪いだけか、プールの件が。
あと学校が少しニガテなだけだろう、そこは僕も少なからず所持している共通点である。
「それと砂護くん」
「え、英語のプリントのほかに、何かまたあるんですか」
「ううん―――私、ナポレオンマックス使いだから」
「あれですか!、あれあの機体、ズルいっすよチートですよ!」
僕はやれやれと、そろそろ始まる授業を前に、机に座り直す。
何気なく、視線は嘉内夕陽の席に行く。
向かう。
彼女は隣の女子と、二、三言、なにか話している。
僕は机から取り出した教科書、ノートを持ったまま、ぼんやりとみる。
少し離れた席にいる女子生徒、
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