第37話 専門家、ギミーのマンション 2



―――最初に言っておくがこの話は他言無用だよ。

私がこのマンションにいることも、内緒にしてもらえると助かる、私は静かなところが好きでね、賑やかだと困るんだ。

人がたくさん来ると困るんだ―――。

これ―――専門家としての意見がどうとかっていうより完全に私の気分だから、どうか深く考えないでほしい。

ギミーさんがそんなことを言うと―――水橋も承諾し、話し始めた。



「能力者になってから、両親と話して、人には言わないほうがいい、と」


「―――君の御両親は、君が能力者ネオノイドだと気づいている?」


「はい」


「君の、お父様もお母様も?」


「はい」


そこは僕と同じだった。

まあ僕の時もひと悶着あったのだが、現在は表立ってそれを話さないようにしている。

自分の両親というのは、本来は感謝や尊敬の対象とあるべきだが、僕は今のところ親とこの話をして、この話題で上手くいったためしがないのが現状である。

向こうもそれは感じているようで、とやかく言っても意味はない、という結論に落ち着いたようだ。

喧嘩はしていない―――。

僕がギミーさんのマンションに出かけていくのも完全放置にしてくれるようになっていた。


「それで、『瀬の光の教団』に相談をしたんです」


「水橋を誘拐した奴らか」


僕は口を挟むと、水橋は少し困った表情を見せた―――いや、困ったというよりは、あまり顔に出ていない、か。


「砂護くん………」


「誘拐ではありません―――私が途中で降りたんです、自分から」


「途中で―――」


暴走した車から降りたという彼女の話で、僕もギミーさんも同返答すればいいか困る。


「その、降りたっていうのは―――自分からかい?理由は―――」


「ギミーさん、だから悪い奴らだったんですよその男たちは、あからさまに怪しかったし」


「砂護くん………、今は君の話は抑えて―――」


「理由―――は、一つというわけでは、無いのですけれど―――その、耐えられなくなって」


―――元々、行きたい場所ではなかったこと、主に両親が話をしてそれを―――進めていったことを彼女は言った。

学校に普通に通い、通っていたかったと。

それで済むならいいと。

バレても悪いことはしていないと。


「両親………悪い人たちには見えなかったけれど」


僕は率直に意見を言ったつもりだった。

人様ひとさまの、親を悪く言う趣味もない。


「あんな親っ!」


と、叫んだ水橋があまりにも勢いづいていたから―――僕は驚いた。

素早く、意見をかぶせるような物言いだ。


「『瀬の光の教団』は、私も聞いたことがある組織だよ―――あれは特にでかい部類だね

。近年増加の一途を辿る、『能力者たちの楽園』を謳っている組織だ。組織または施設または、教団―――かなり大きなほうに入るね、今まさに増えているから、そういう時代だから発展途上だけど」


―――と、補足するギミーさん。

僕は初耳だった。

能力者はみんなじゃあないかもしれないが、ギミーさんのような人から教えを乞う修行があるのではないか、それが普通だと思っていた。


「水橋さん―――親子関係のことは私にはわかりかねる、聞いたつもりもない―――そっちは専門外なんだ。君の能力を軸に、話を進めてもらえるかな」


「………わかりました、ただ―――」


しばらく彼女は口をつぐんで、言葉を選んでいた。


「心配してくれていたんだろう、それだけじゃあ、ないかな」


とギミーさんは言うが。


「ごめんなさい、この話は、長く続けるつもりはありません、ただ―――それまで、普通に今まで通り、部活も続けるつもりでしたけれど―――だんだん変わってきました」


両親と、おそらくトラブルではない、トラブルというほどでもない―――すれ違い。


「お父さんもお母さんも―――まるで、私が『病気』になったみたいに―――そう、扱っていました」


ちからなく、そういった彼女。

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