第14話 能力組手 3


歯を食いしばりながらわらう、笑うサゴくん。

眼鏡をかけてはいるが、クール一辺倒ではなく、普段からなかなか、表情は豊かな彼。

彼のゴーレムが地面を操る。

地面を操って、支配して、コントロールし尽くす。

大地を操る地属性。


「くっそおおおおお!」


ハタガミくんのロボットは走る。

地面を敵に回しているのでそれに対応するために、足元が忙しくなる―――足で、対抗、対応するしかないようだ―――それで対応が追い付くかはまた別の話だが。


ロボットは変則的なスキップを強要されている―――。

地震で慌てふためく人間、普通の人間のようにも見えてきた。

いや、自身でこんなコミカルな動きはないか。

あるいは流れのはやい川を渡ろうとする人間………のようなありさまだ。


「こう、か―――こう、なんだな!」


サゴくんが笑みを強くした、笑みを濃くした。

調子を良くしたのか、地面の流れを、砂の流れを早くした。

感覚をつかみ、わかってきたわかって来た―――としきりに呟いている。


「マジかよ!」


ハタガミくんが叫び見ているロボが、派手に転倒した。

簀巻きのようにぐるぐると、くるくると転がる。

押し出される―――。


押し出されかけたところで、そこで、ロボットが再び、走り出した。

通常の走り方ではない。


「う、腕を!」


サゴくんが、事態を察し始める。

ハタガミくんのコントロール―――ロボットは、両腕で地面を弾き、足も使い、四足で―――まるで犬や猫のように駆ける。

転んで、立ち上がることをあきらめて。


「お、お、お!」


ハタガミくんの気炎が上がる―――力強く、力いっぱい、砂の上を駆け続けるロボット。

赤いグローブで前足で四足歩行している―――そこまでやるかという絵である。

ロボットが飛び跳ねつづける―――砂の上を。

そういえば何かの本で読んだ知識だが、猫は元々、砂漠地方、乾燥帯に多く住んでいた生き物なのだそうな―――だから水は苦手なのだそうな―――。

なんて、そんなことを考えているうちに、猫型ロボットはゴーレムにとびかかり、前足を引っかけて、また地面に落ちた。

………猫型ロボットという表現はマズいな。

どうやら違うイメージが発生しそうだ。

とにかくロボットは、四足で歩いて走り、立て直す。


対してサゴくんが目の光を―――能力を強める。

歯を食いしばっているが、それは同じだが変わらないが、先程の笑みが消えていた。


「はっははーッ!もらったー!」


腕で飛ぶ、腕と足で飛ぶ、新型の手段で襲い掛かったハタガミくんのロボットは、ゴーレムの首と肩のあたりに飛び乗った。

飛び乗り、組み付き、絡んだ。

ゴーレムは上半身を振る。

二度、三度、振る、振り回す―――。


だがゴーレムから飛び散るのは砂、自らの身体を構成する砂のみで、なかなか振り払えない。

散って、落ちる砂が増えてきたようだ、コントロールのスタミナに乱れ、不安が出てきた。

能力組手が初めてというのならば、遅すぎるくらいの疲労だろう。


ロボットの腕、赤いボクシンググローブが砂にめり込む。

あっという間に―――。

それを起点として、ごっそりと砂が崩れ落ちる。

ゴーレムが崩れて地面に落ちる。


「勝負ありだね………」

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