第13話 能力組手 2



二人の組手を、少し離れた縁石に腰かけてギミーは見ていた。

能力者の教師、砂護野晴にとっての師匠、ギミーは見つめる。

二人の組み手、二人の能力。


サゴくんは大地を操る地属性。

使用するのは、というよりも彼の『能力』―――それは砂を素材とした、ゴーレム。

自分のもとを訪れたネオノイドの中では、一番の新入りである彼だが、もう自分の能力に振り回される時期は過ぎただろう。

砂のコントロールに関しては、言うことはない。

マンションでの―――室内での細かい作業の特性の方が、あるから、あとは組手での修行でどのように伸びるかである。



対してハタガミくんは電動式のロボット。

本来、あの子の能力は実体がない電気だから、あれが能力とは言いづらい。

けどそうなると、能力組手ができない。


電気には、電力には手も足もないのだから。

そのためのロボットだ。

昔、使っていた能力修行用のロボットさえあれば、各部の関節駆動モーターをコントロールする。

意欲ある子だったので、というよりも意欲があり過ぎる子だったので、玩具を買い与えたような気分でいたが、かなり上達して、使いこなしている。

電気操作系の力を持つ能力者ネオノイドの中でも、才能があることは間違いない。

赤いボクシンググローブが気になるが―――あれをどこから拾ってきたのか、今度本人に聞いてみようか。





ロボットが加速し跳躍、ゴーレムに飛びかかる。

全く迷いのないキレがある―――あの子はいつもそうだ。

元気いっぱいと言った風な動きは、ロボットに反映されている。

右腕が砂の身体に接触した―――右ストレートだが、直撃ではないようだ。

砂と金属がこすれて、弾けるような音がする。


ゴーレムが左腕で返す。ロボットに接触するが、衝撃は軽い。

ロボットは右ストレートをまた入れる。ゴーレムの額に接触し、少し砂が散る。

姿勢そのままに打ち合っていると、少し焦げたような匂いがした。


揉み合っているうちに、ゴーレムに変化があった。

膝をつく。

しゃがむ。

その腕を地面についてしまった。


ロボット操縦者、ハタガミくんが、少し嫌そうな顔をする。

ゴーレムが地面につけた腕、それがざらざらと、崩れ、散らばる。

それは地面を、中庭を、侵略しつつあった。

ロボットの足元が、流れる、徐々に激しく。



ゴーレムが腕を地面についてしまったのでは―――ない。

ゴーレムが腕を地面につけたのだ―――なんのために。

攻撃するために。



「こ、このー」


ハタガミくんが瞳の色に力を入れ、歯を食いしばる。

ロボットが砂の荒波を飛ぶ、飛んで跳ねて足元の異変に耐える、

ロボットは転倒しても、すぐにまた立ち上がり、波をいくつか回避。

前回の組手よりは体術が向上、上手くなっている、体操選手じみた動きもある。

それでも、ステップをやめた途端、転倒。


ゴーレムはもはや完全に座り込み、腕が地面についている形で、地面ばかりが蠢いている。


「砂護っち!それ―――ヒキョー!」


もはや汗をかいているハタガミくん。

能力の使用は集中力を要する。

コンマ一秒単位で状況が動く組手なら、なおさらである。



「能力を使う!だから能力組手!」


砂護君は引かない。

笑っているが引きっている笑み。

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