第12話 能力組手 1



ネオノイドの研究者だったギミーさん。

ネオノイドの研究者だったらしい………ギミーさん。

それ以外のことは謎に包まれている人である。

というか何だろう、『ギミー』とは。

外国人………?

しかしギミーさんは日本の―――少なくともアジア系の黒髪の年上男性にしか見えなかった。

背の高さこそ僕とそう変わらないものの、その雰囲気やたたずまいというか。

そういったものが、謎だ。



彼は専門家であり、現在は隠居生活をしているという―――若いのに、何か事情があるのかもしれないがいい人なので詮索はしない。

僕や、何人かの能力者は、彼のもとで修業をしている。

修行をしていって巣立った人もいるのかもしれない。

僕はその中でも、どうやら一番の、新入り、ひよっこらしい。

そんな僕でも、基礎的な修行ばかりだった日々は終わりを迎えつつある。


「じゃあ、今日は『組手』をしようか」


ギミーさんがそう言うと、ハタガミくんは手にしていた乾電池(修行に使うものの一つ)を取り落としそうになっていた。

しかし


「やったァ!」


と、まあこうしてみるとその笑顔は小学生男子にも匹敵する何かがあり、僕は何とも言えない気分になる。

無邪気なことだ。

あの何者も恐れていない感じは、僕がもう持っていないものであり、取り戻そうという気も起こらない性質のものである。


マンションの一室、302号室内でなく、場所は中庭に移る。






敷地は広いので中庭もある。

木々は手入れがほとんどされていないので、小規模なジャングルのような雰囲気だ。

庭と言っても、もう手入れをされていないもので、地面など砂地同然である。いや、砂地だった。

そこでハタガミくんの扱う『ロボット』が、小刻みに飛び跳ねる。


ジャキッ

ジャキッ

ジャキッ


小刻みに飛び跳ねる―――準備運動のつもりなのだろう。

人間でもないのに。

ああ、準備運動というよりは動作確認か。

ハタガミくんは、瞳の中に青白い光をめぐらせて、その準備運動、というか動作チェックに夢中である。

青白い光―――ハタガミくんの『能力光』ネオンは夜空をはしる雷光を思わせる。

光だけで見れば、ミステリアスな色合いだ。


これから僕とハタガミくんは、『組手』を行うわけだけれど、それは人間の行う格闘技の組み手ではない、ネオノイド―――能力者の修行の一環である。

能力者組手。

故に色々とギミーさんが決めたルール、というかそれ以前の色々がある。

大きなルールのうち、一つはこのロボットだ。

ロボットが戦うのではなく、ハタガミくんの能力でロボットが動き、戦う―――ということなのだ。


大して僕は、ロボットは使わない。

ロボットを使わなくてもいい―――そういう『能力』だから。


黄色い光の中に、うっすらと朱色が混じる。

大地の色。

僕の視界の中で、中庭が蠢く。

中庭の『砂』が―――『地面』が。

震えて、盛り上がる。

僕と話し合うような位置で少しずつ盛り上がってきた地面はひざ下、腰、胸のあたりまで砂が積みあがっていく。


『彼』の身長がおおよそ僕と同じになったあたりで、細かいカタチを整えていく。

砂で作ったロボット―――西洋風に言うなら、ゴーレム。

泥人形ならぬ、砂人形。


「出来たかい?」


ギミーさんが問う。


「まあ………オーケーです」


僕が右手を振り上げると、ゴーレムが………砂護ゴーレムが、同じく右手を振りあげた。

じゃりっ、と振り上げる。

こちらも動作確認―――ううむ、準備運動か?

ゴーレムの準備運動だ。

関節を動かすとき、雑にやると砂が散ってしまう。

まあ関節はないんだけどね―――このあたりは、色々と僕の中でも試行錯誤中だ。

どうしても肘や膝のような関節を作りたくなる。

ここで曲がる、という場所、形状を作りたくなる。

造形したくなるのは―――それがないとおかしいと思う深層意識からだろうか。


そこにハタガミくんの扱う『ロボット』が、迫る。


ジャキッ

ジャキッ

ジャキッ


足元を何度か踏み、動作確認するロボット。


「それじゃあ、ラウンド1ワン………開始!」


ギミーさんが言う。

ハタガミくんの能力光ネオンがひときわ強くまたたき、ロボットを全力ダッシュさせる。


僕は両手を顔のあたりまで上げ、ぐぐっ、とファイティングポーズをとる。

ゴーレムは両手を顔のあたりまで上げ、じゃりっ、とファイティングポーズをとった。

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