第9話 修行中の身 2

人里離れた丘陵地帯にそのマンションはあった。


僕の師匠、ギミーさんは変わり者だ。

いや、彼の人柄は―――本人はそれほど破天荒なヒトでもないのだが、こんな山奥みたいなところのさびれたマンションに住んでいる点などが、変わっている。


―――変だと思うかい?これがまた、いい景色でね


そう言ってほほ笑む、どことなくロマンチストな人だ。





マンションの敷地は、長らく放っておかれたらしく、ひび割れた塀に、ほそいつた類の植物が、我がもの顔で巻き付いている。


塀が塀なら地面も、地面で。

ところどころひび割れているアスファルトに、雑草が突き破っているのが見える。

管理状態はそんなところ。


建物全体のがっしりした雰囲気は、通っている高校に近いものがあるが。


「そういやギミーさん、いつから『実践』やらせてもらえるんだろう、やらせてくれるんだろう―――」

そう呟きながら、入口へ向かう。

本来ならそのまま階段を上がっていって、部屋まで行こうと思っていた。


甲高い金属音が聞こえた。


ジャキッ

ジャキッ

ジャキッ


建物の影を走ってきた人影があった。

走っている。

それは走っている。

長距離走さながら、手を振り、スピードに乗って、身体を傾けながらコーナリングしてきた。


カエルの脚のように、太く存在感がある。

太ももにあたる部分―――人間の太ももにあたる部分が太く、それに反して足首の部分は細いフレームで構成されていて軽量化されている。


ジャキッ

ジャキッ

ジャキッ


走るのが速いというよりは、走行性能がある―――という印象を、見る者に与える。

力強い、鋭い足音。


足に対して腕は細い。

骨か、針金のようなので重量はほとんどないだろう。

腕の先に、赤いボクシンググローブがあるのが、アクセントというか、趣味が悪く見えた。


「おいおい………!」


僕は嘆息する。

部屋に上がろうと思っていたのに。


しかしまあ、不思議ではない。

この敷地は、マンションは学校ではなく、修行場所なのだった。

今日の修行メニューはこれ―――らしい。


僕は斜め後ろに鞄を投げ捨てる。

ざざ、と砂地に軽く転がる。


その黒い人型の物体は、パチパチッと電流の音を弾き、迫り来る。

僕に向かって、一直線。


僕は両手を前に向けて、ファイティングポーズをとった。

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