乙乃章 弐節 譚之三

「はい。弾正台の指揮権に関しましては完全に我が方へ委譲されましたが、禁衛府指揮官には未だ面会も拒絶されている状態です。こちらは、引き続きの折衝を行っていきますが、最終的には武力での制圧もやむを得ないものと心得ております。また、随時状況をご報告いたします。次に捕縛状況になりますが、まず都市部です。王彊 四○○、皇都 三五○、長華三○○。次に各部族地がきん 五○、新濤しんとう 三○、 一二○、でい 一○○、えん 五○、れき 三○、そう 三○、ふう 七○、てい 四○、たい 一四○、しん 二○。初っしょっぱなの揺さぶりにしては意外とかかりました」

「謙遜を言うな。お主の『土竜どりゅう』の綿密な下準備があればこそ、の成果ではないか。よくやってくれた」

「光栄であります」

「特に都市部以外では、杜、泥、梯の各部族地での大量検挙は手柄であったな。本国への奏上も期待していいぞ」

「は、ありがとうございます。その、お言葉だけで報われます。しかし……」

「禁衛府か?」

「はい、申し訳ありません」

「むう。仕方がないな。あんな傀儡の王でも、直属の親衛隊ともなれば、無駄に誇りだけは高いらしい。何の役にもたたんのに、なあ。で、お主の手の者は、おらんのか」

「基本要員は二名、本作戦に際してさらに一名、新たに支援要員を潜入させております。

 が、この混乱時に定時連絡が途切れており、確認中です」

「そう、なのか。俺も見誤っておったな。てっきりお飾りなのかと思っておったが」

「いえ、手強そうです。 切り崩しておかないと足元からすくわれる可能性があります」

「なんだと!」

「申し訳ありません、出過ぎた物言いでした」

「ふふ、そうではない。戦略の見直しを余儀なくされるやも、というわけなのだろう」

「はい、決して侮れない、と」

「そうか。永い戦乱にさらされていた割には、あまりにも不甲斐のない軍隊に少々がっかりさせられていたのだが、少しは骨のある人間もいると言うこと、なのだな」

「はい、そういうことになるかと思います」

「こんな僻地に左遷とばされて、豚の相手をさせられて腐りかけていたところだ。とんだいなかでもう血が騒ぐこともないと思っていたぞ」

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