乙乃章 参節 譚之廿五
そこまで言うと鵜師は二人を正面から見据えて話し始めた。
「お前たちに施したのは『
「では、あれは俺たちの本来の力が源ということ、なのですね」
「うむ、そうだ。お前たちの資質に対して、わたしが永き時を懸けて育み来たものだ」
「あたしたちは最初から鵜師に選ばれていたと?」
「うむ、礫の李梓仁帆里よ。お前は礫の神王の系統を引く者。そして虞夷須多爾。お前は禽の勇者の血を受け継ぐ者。お前たちでなければ、この空蝉は修めることが出来なかったであろう。空蝉は、それを受け入れた者の精神を崩壊させる危険性がある両刃の刃なのだ。わたしの持てる技をすべて写したが、お前たちには、なお精神領域に余地がある」
「と、いうことは、ここに玉花になった時より、このことが決まっていたと」
「遅かれ早かれ阿僧祇を倒すのは敷かれた道なのだ。それこそ、このまま放置できるものでは決してない。しかし、時が必要だった。わたしは由解違を統べた身として、やらねばならぬことがある。琥栖儀の建てた国を、琥栖儀の論じた国へと導きたいのだ。そのためには、縷々香と仁帆里と須多爾の力が不可欠なのだ。わたしも満を持していた」
「あたしたちは、どうすれば」
「うむ、まずは潜在との融合を行う。そして、力の制御を会得してもらう。つねに
「もとより承知の上です」
「あたしも覚悟はできています」
「まずはここを引き払う。この情勢下にあっては今までこの王立劇場に留まり居れたことこそ稀なこと。しばらくは浮民として各所を流浪することになる。身の周りの物もすべて捨て行くぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます