乙乃章 参節 譚之十四

「え? え? なんでだよ」

「あなた、ここまで来て、まだ分からないわけェ。王彊の書館は誰が作ったか知ってる?」

「え、誰って?」

「阿僧祇、が造ったのよ」

「え! そうなの?」

「よく分かった。そこからなわけね」

「なに、何がそこからなわけ?」

「ここ、王彊は阿僧祇によって作られたってこと知ってる?」

「え? そう、なのか」

「よいか、仁帆里。この知識程度が、卯差氏の極めて一般の認識ということだ。そして、それも阿僧祇のはかりごとの内、なのだ」

「そう、なんですね」

 沈痛な面持ちで仁帆里が言う。


「いい? 王彊は阿僧祇が元の濤の都『濤』を潰して、その上に作った都市なのよ」

「え! そうだったんだ。あ、だから『新濤』ってのがあるんだな」

「そう。だから、王彊は阿僧祇がしたい放題にして造れた、ってこと」

「なあ、聞くけど。卯差氏って、独立国、だよな」

「そうよ」

「じゃあ、なんだって、そんなに阿僧祇がよその国にちょっかい出すんだ」

「うむ、それが、これから話す話の真相なのだ」

「あ、はい」

「だから、阿僧祇が結局のところ国祖様を弑したの。でもって自分たちが書く本に、自分たちが国祖様を殺しました、なんて書くと思う?」

「あ! そうか、そうだったのか。今ので、ぜんぶ分かったぞ。くそう俺ってバカだなぁ」

「でっしょー。分かったぁ」

「うん、もっともっと教えてくれ、仁帆里」

「え? いや、そうじゃないって・・・・・・、お願いします、鵜師」

「あ、そうだった。申し訳ありません、鵜師。教えてください」

「うむ、では続けよう」

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