乙乃章 参節 譚之九
「なにを!」
須多爾は顔を真っ赤にして、今にも仁帆里に飛び掛かろうと身構えた。
「あーあ、もう。じゃあ、いいわ。例えをもっと分かりやすくしましょう」
仁帆里は、須多爾の動きなど全く気にする様子もなく、淡々と話を進めた。
「ね」
須多爾は、振り上げた手の下ろすところを失い、拍子が抜けてしまった。
「うん」
上げた手で頭を掻きながら、素直に須多爾が頷く。
「まさか、あなた国祖様は知ってるわよねェ」
「え?
「呼び捨てにしない!」
「え、そんなのいいじゃないか」
「ダメ!」
「なんで」
「なんででも」
「うー」
「なんででも!」
「卯差琥栖儀様」
「うん、よろしい」
「ふん!」
「あ、何よその態度。まあ、いいわ。あなた、国祖様がお亡くなりになったときのことは、知ってる?」
「そりゃあ、知ってるさぁ。卯差氏の臣民でその話を知らない奴は、それこそ非国民だ。国祖様は
「それ本当?」
仁帆里は、少し微笑みを浮かべるように、
須多爾の目がまん丸くなった。
「お前、馬鹿はどっちだよ! なに言ってるんだよ。本当に決まってるじゃないか」
「へー、誰が言ったの」
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