概要
でも、今は、木崎がいる。
――国民的作家だった故島田仁の娘である作家の島田ゆすらと、その夫で専業主夫の木崎修吾。少し変わった夫婦の日常の話です。
書籍化します。
2018年4月13日に富士見L文庫から「木崎夫婦ものがたり 旦那さんのつくる毎日ご飯とお祝いのご馳走」として発売予定です。
よろしくお願いします。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!「この物語がこの世界にあることが、嬉しい」
作中に出てくる一文なのですが、あまりに読後の気持ちにぴったりな言葉だったので引用させていただきました。
しみじみ思います、この物語がこの世界にあることが嬉しい。そんな物語に出逢えたことも、本当に嬉しくてたまりません。
はじめは、なんて美しい文章の世界が広がっているんだ!と、文字を味わうことに夢中でした。
文字のすべてが心の栄養になるような読み心地で、出てくる一言一句にいちいち感情を刺激され、日本語の表現ってこんなにも魅力的なものだったんだと感動して、底光りのする美しい筆致に心底惚れ惚れとしました。
そんな感じで文章に酔いしれていたら、次第にストーリーにも飲み込まれ、気付いたらこの物語すべて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!張り詰められた何本もの糸と、それをたゆませるごちそうの数々
主人公のゆすらは生きていくのがあまりうまくないタイプの人間かもしれません。神経の糸を張り詰めすぎたり、緩め過ぎたりして、失敗をしてしまう。そういう人だと思いました。
物語の中でもいつもどこかが緩みすぎていて、その裏でとんでもなく張り詰めたピアノ線のような、細い目には見えない糸の存在を感じます。
家主のいなくなった家で。娘のゆすらは夫の木崎さんとふたりぼっちで暮らしています。幼い頃からずっと慣れ親しんだはずの家なのに。自分の家なのに。肉親の不在が、周囲の態度が、ゆすらの存在を揺るがします。
そんな中で出会った、ゆすらの拠り所となる男性。なにもかもゆすらとは反対の、本を読まない、父を知らな…続きを読む - ★★★ Excellent!!!つらくても、小さな幸せがそれを埋めて誰かと共に生きていける
自分の内面で言葉になりきらないものに、しっかりと形をつけてもらえる、というような感覚を覚える文章です。
それは、簡単な言葉で済ませれば、ゆすらという人の言葉や考え方に「本当にその通りだな」と納得できる、共感できる、ということかも知れません。
そういう共感があるからこそ、おいしい食べ物があるおだやかな日常と、だけれど不穏な雰囲気が、不思議な心地よさを持っています。
大きな事件が起こらずとも、その文章をずっと読んでいたい、と思ってしまいます。
また、淡々としているようでいて、きちんとゆすらの心の動きに沿って構成されているように感じました。
前半は、自身の家から動けず、それが嫌で仕方がないのに…続きを読む