青切 吉十

　ひさしぶりに文章で笑った。 　文章で他人を笑わせるのはなかなかできることではない。 　よっぽどの才人でなければ、技量で他人を笑わせることはむずかしい。 　基本的には、大まじめに失…続きを読む

あたりまえのことが丁寧に書いてある。 こう書くと、この作品を小ばかにしているように読めるかもしれない。 しかし、そういう意図は私にはまったくない。 というよりも、このレビューを読ん…続きを読む

　自主企画はむずかしいね。 　自主企画を運営したことがある人は、作者のいきどおりなどに賛意を示すかもしれない。 　でも、この問題は根深くて、自主企画云々ではなく、普遍的なコミュニケ…続きを読む

　星新一という短編作家がむかしいた。 　たくさん本を出したが、最後に「つねならぬ話」という、自作の民話を集めた本を出した。 　読んでいて、その本を思い出したし、そこに載っていても不…続きを読む

　シュールと言えばシュールだか、ある特定の人々には、リアリティをもって読まれるのでは。 　そう。 　リアルな話ではないが、リアリティはある。 　文章はこなれていて大変読みやすい。…続きを読む

　文章がとにかくよい。 　じつになめらか。 　天神机はまあ、学習机で、天神(菅原道真)とかけているのだろうとわかる。 　調べたところによると、男子用と女子用があったらしい。 　こ…続きを読む

　とにかく文章がよい。すらすらと読ませつつも、アクセントをつけたいところでは、ちゃんと一呼吸置いている。めったにそんなことはしないのだが、思わず、つづけて二度読んだ。 　内容につ…続きを読む

　2016年５月11日から翌年同日まで、毎日書かれたエッセイ。 　ほぼ十年前の作品でありながら、いまでも十分に読みごたえがある。 　なぜ、そのようなことが可能かというと、時事風俗に…続きを読む

　神は細部に宿るというが、ディテールの表現、たとえば漢字の使い方に、ただただ感心した。 　アイデアは、どうしたら、こんなことを思いつくのか、私からしたらふしぎでしかない。 　その…続きを読む

　話も文章もシンプルだが、意外に奥深い。 　ここで言うシンプルは単純という意味ではなく、ムダがないという意味だ。 　ムダがないから、2000字のわりに奥深さが出ている。 　よく練ら…続きを読む

　よいショートショート。 　起承転結のお手本。 　タイトルもうまい具合に回収されている。 　書き手として、この話、書きたかったなと思わせられたアイデア。 　未読の人のためにぼやか…続きを読む

　主人公が「異世界」に「転移」した後の世界はどうなるのか。たとえば、残された家族・友人らはどうするのか？ 　そういう想像をする者、一作書いてみようと思う者は少なからずいよう。 　そ…続きを読む

　不条理は加減がむずかしい。うまく行けば作品に深みを与えるが、失敗するとわけのわからないものになる。 　その点で、この作品はちょうどよい塩梅である。 　わたしもこういう類いの話を書…続きを読む

歴史の難しさだ。 私は歴史の表舞台に現れた英雄豪傑よりも、表舞台に立たざるを得なかった凡人に興味がある。 凡人の一挙手一投足が万民の生死を分ける。恐ろしいことではないか。 しか…続きを読む

　八千字あるが、体感はかなり短い。先(ラスト)が気になってしょうがない。読むのが止まらない。 　それはストーリーの先が気になるためでもあるが、大元は、やはり高い文章力のなせるわざで…続きを読む

　その通りと思いつつ読んだ。 　とくに、第三夜の「すぢを通す」には、深くうなずくばかりである。 　私もひとり暮らしをしていたときは、すぢをよく食べていた。あれはすぢ自体だけでなく、…続きを読む

　怪談が好きで、寝る前に西浦和也さんや北野誠さんなどの動画を聴いているが、本作は、あまり類例のない実話怪談。 　にわかには信じがたい話だが、エッセイ・ノンフィクションということなの…続きを読む

　丸谷才一や高島俊男のエッセイが好きだったのだが、ふたりとも死んでしまった。 　そこで代わりになる作家がいないかと思っていたら、本作に出会った。 　この質の作品が、カクヨムで気楽に…続きを読む

　まず、タイトルが気に入った。「を」ではなく、「でも」でないとおもしろくない。 　飄々とした文章も評価したい。内容とよく合っている。 　平安時代に、ふいに現代が紛れ込む趣向に挑戦…続きを読む

　日常と非日常の混ざり具合がおもしろい。 　それぞれ短編としておもしろいのだが、各話はつながっており、そのつながり具合もまたおもしろい。 　もっと続きが読みたいような気もするが、…続きを読む

　安倍晴明の実像に迫る時代小説。 　魔術や超能力めいたものは基本出てこない。そこが逆に(私には)おもしろい。 　この作品を原案にして、NHKでドラマ化してくれないかな。落ち着いた雰…続きを読む

　３話はつげ義春、４話は水木しげるのマンガ風のイメージを思い浮かべながら読むのも楽しいだろう。 　全４話とも捨てがたいが、私は３話目がいちばんよかった。 　つげ義春のイメージを思…続きを読む

　雑学怪談、エッセイ怪談とでも言えばよいのか、おもしろいスタイルの怪談である。 　怖いと同時にためになった。ためになると同時に怖かった。 　事実を淡々と積み重ねる手法で、不思議な現…続きを読む

文章に個性がある。 淡々とした筆致で、淡々と物語が進んでいく。 そこに、ふしぎな魅力を感じた。 文字数は７千字ほど。 短くエピソードを分けてくれているので、非常に読みやすい。 …続きを読む

　河鍋暁斎のことはまったく知りませんでしたが、楽しく読むことができました。 　とにかく、読みやすい。 　1エピソードの量が絶妙。 　続きが気になるヒキの導き方も勉強になる。 　思…続きを読む

　本作は、お題「聴こえないメロディー」の自主企画用の作品である。 　私も参加しようとしていたが、アイデアが浮かばなかったので、参加を見送った。 　作り手のひとりとして、本作を読ん…続きを読む

※４９話までのレビューです。 「劉禅が勝つ三国志」の著者による三国志もの。 お次の主役は劉備。 字は玄徳。 とにかく淡々としたムダのない文章がよい。 また、よく練られた構成もす…続きを読む

お題にもとづいて書く自主企画に参加したのですけど、寸評の的確さに驚きました。 こういう自主企画は書き手が試されるのと同時に主催者の力量が問われると思うのですが、脱帽です。 投稿し…続きを読む

　カクヨムの企画に合わせて、毎日、俳句や短歌を読んだり作ったりしている。 　そこで、小説を書いているときには気づかなかったことなのだが、ある言葉とある言葉は透明な糸でつながっており…続きを読む

　秀逸なショートショートと言えるが、それだけではない「なにか」を感じた。それを細かく言うのはレビューから離れるのでよしておく。 　文章に目を向けると、実にコンパクトで、切れ味鋭い…続きを読む

　アイデアに適した視野で詩が描けていると思います。 　ミクロの題材にはミクロの視点で、マクロの題材にはマクロの視点で。 　そこら辺のピントの合わせ方が自然です。 　句順にも工夫が…続きを読む

　いろいろとカクヨムで俳句を読んできて、「それで何が言いたいの？」と思われてしまう句がダメなことがわかった。 　わかったつもりであった。 　上の話は初心者の作り方で、中級者以上にな…続きを読む

　短歌をちゃんと勉強していない私が言うのも何ですが、しっかりとした基盤のうえに、現代的な感覚が乗っかっているように思います。 　二十首それぞれに趣きというか、楽しむことのできると…続きを読む

　ジャンルでいえば、ホラーを中心に書かれている作家による、短めの中編小説。エピソードを適宜区切ってくれているので、非常に読みやすかった。ほかのジャンルもそうだが、ホラーはとくに、誤…続きを読む

200文字という枠をもうけて、作品を産み出しているがむりを感じない。 アイデアが不足なく200文字で展開している。 ただ短いだけの作品がない点を高く評価したい。とても質の高い作品集…続きを読む

とにかく、文章が秀逸。 お国言葉の妙味、心地よいリズムに、みなさん、酔いしれてください。 あと、言及しておきたいのは、説明パートから、描写パートへの切り替えの巧みさ。とても参考にな…続きを読む

　「おまえ百までわしゃ九十九まで」という言葉がある。 　これは人間同士だから言える言葉で、飼い主とペットの間では、基本的にむりな話である。 　さいきんの犬猫は二十歳くらいまで生きる…続きを読む

この手の作品の古いものだと、手塚治虫の火の鳥羽衣編や星新一の諸作品を思い出す。 こういう話をつくるむずかしさは、民話調とSFの両方が書けないといけない点だ。また、両者のバランスが…続きを読む

自主企画で「奇妙な話」を募集したら、参加してくださった作品。 何だろう。 マルゲリータを宅配で注文したら、聞いたことのない名前のピザが来て、それはそれでおいしかった、というのが感…続きを読む

このショートショートは構造的にオチが途中でわかりやすいです。 それでも最後まで読ませる工夫が、このショートショートではなされています。 手持ちのアイデアを生かしきれず、まとめきれな…続きを読む

　小説全般に言えることだが、読み手の思考の動線を考慮して話を組み立てることが、とくにショートショートでは求めらる。 　その点で、このショートショート集は動線が丁寧に考慮されている。…続きを読む

飼い猫の死は、逆説的に、我々飼い主に生を想起させる。そんなエッセイ。 読んでいて、久しぶりに、長生きの果てに無惨な姿で死んだ飼い猫のことを思い出した。 また、「冒険」に出かけたま…続きを読む

高島俊男(文学者)が好きで、漢詩がどういうものかはだいたい把握していたが、この作品を読んで、漢詩とは「中国の知識人のための複雑なパズル」という思いを強くした。 漢文をつくる気がさ…続きを読む

まず、文章がおもしろい。 いたって真面目な口調で書かれているが、だからこそのおかしみがこの文章にはある。 KACのお題である「ささくれ」に基づいて考えられた話だか、よくこんなアイ…続きを読む

まず、話の構成がよい。興味を惹かれる導入部である。 「勧酒」がどういう状況で読まれたのかについて、想像の翼を広げているが、その広げ方に感心させられた。 おそらく自作と思われる訳詩…続きを読む

ジャンルは詩・童話・その他になっているが、まさしく民話と言える作品。 ヨーロッパのどこかの国の民話だよと言われても、不自然さがあまりない。 民話というのは、冒頭で結末が暗示されてい…続きを読む

主役は別の人、名のない人でも話は成立するが、彼を主役に据えることで、話の深みが増している。コントラストが鮮明になっている。 合わせて、文章がアイデアと絶妙なハーモニーを奏でている…続きを読む