概要
美濃の戦国大名、斎藤道三の娘・帰蝶(きちょう)は、隣国尾張の織田信長に嫁ぐことになった。信長の父・信秀、信長の傅役(もりやく)・平手政秀など、さまざまな人々と出会い、別れ……やがて信長と帰蝶は尾張の国盗りに成功する。しかし、道三は嫡男の義龍に殺され、義龍は「一色」と称して、織田の敵に回る。一方、三河の方からは、駿河の国主・今川義元が、大軍を率いて尾張へと向かって来ていた……。
【登場人物】
帰蝶(きちょう):美濃の戦国大名、斎藤道三の娘。通称、濃姫(のうひめ)。
織田信長:尾張の戦国大名。父・信秀の跡を継いで、尾張を制した。通称、三郎(さぶろう)。
斎藤道三:下剋上(げこくじょう)により美濃の国主にのし上がった男。俗名、利政。
一色義龍:道三の息子。帰蝶の兄。道三を倒して、美濃
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!死のふは一定
私は古文が苦手なので、表題の唄を知りませんでした。実際にはもう少し長い歌で、内容は
「人間はだれでも死ぬもの、生きたときのことをしのぶものとして、生きているあいだになにをしておこうか」
というものだそうです。大抵の人間は私も含めて、いつか忘れられてしまうものです。ですが信長さんは約600年経た今でも、語り草になっています。
お話の作者さんは、その語り草の抜群の語り手です。この時代に登場するヒーロー達を綺羅星の様に語り尽くします。
これまでに作者が語って来たヒーローの大集結。私にとってはウルトラマンや仮面ライダーが、大集結した様な感じでした。過去のお話を読んでから、この大作を見ると…続きを読む - ★★★ Excellent!!!語り紡ぐは悠久の、繋ぐ思いの物語
信長といえば誰でも知っている歴史上の有名な人物だ。この物語は信長と、そして帰蝶を取り巻く歴史の流れを描いている。
歴史を知らなくても楽しめる物語ではあるが、知っているとこの物語は更に楽しめてしまう。歴史上であれば早々に退場してしまう人物を鮮やかに生き生きと書いているからだ。
まさか、ここで、と歴史が繋がる瞬間は見ていて気持ちが良い。
私が好きなのは、帰蝶が啖呵を切る場面。これはもう格好良い。読んでいてよくぞ言った、と痺れてしまう。からっとした格好良さがこの物語にはある。
何も考えず、この物語を最後まで読んで欲しい。驚きながら、涙ぐみながら、彼らが歩む歴史の途をどうか最後まで見届けて欲しいと思…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「死のうは一定」の唄とともに語られる信長の青春物語
織田信長は乱世の日本を統一に導いた武将ですが、同時に、信長の生涯は、暗い影やスキャンダルにも満ちています。
それは、信長が若かったころ、歴史の舞台に登場するころからしてそうです。父の葬儀で焼香を投げつけた事件、傅役(もりやく)平手政秀の不可解な自害、そして弟の信行との不和など、数々の事件が伝えられています。
しかし、この物語は、巧みな解釈で、その「暗い影」を振り払い、一途な若者信長と、信長に嫁いできた濃姫(帰蝶)との青春物語として、桶狭間の戦いまでの「初期の信長」の日々をさわやかに描いています。
信長を支え、たまに嫉妬を見せる濃姫、若き日の木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)、陰で存在感を示す実力者松…続きを読む - ★★★ Excellent!!!乱世の厳しさ、人の想いの熱さ、そして温かさ。
誰もが知っている桶狭間の戦いの、誰も知らない真実の姿が見える。
そんな物語のように感じました。
なぜ信長は東海道一の武将に勝てたの?
義元の驕り? 信長の勢い?
歴史の授業や様々な創作物で「桶狭間の戦い」には触れてきたけれど、私は殆ど分かっていなかったみたいです。
この作品を読むと、戦はそんな簡単なものではなくて、国を率いる武将たちが、その元にいる多くの人々が、守るべきもの果たすべき夢のために策略をめぐらせ戦っていく……色んなものが折り重なったものなのだとしみじみ感じる事ができました。
そしてこの物語の醍醐味は「人間」をとても丁寧に描いている所です。
親子、夫婦、師弟、主従の愛情と厳し…続きを読む - ★★★ Excellent!!!青年・織田信長とその妻・帰蝶。ふたり仲睦まじく征く尾張統一の戦道
尾張統一前のまだ若き信長、その生き様をご存じでしょうか?
先見の明と鉄砲で自在に戦う信長、その隣で戦を共にする謎多き美女である妻・帰蝶。
特に本作の帰蝶さん、今和泉式部と伝説の美女に擬され、それでいて赤備の武者として刀を振るい、信長の隣で参謀役を務める、無敵のヒロインとして活き活きと描かれます。
ともすれば、織田信長の活躍を喰ってしまいそうなほどに!?
時代は決して強くない織田家。
尾張の内外に敵を複数抱え、兄弟仲も良好とは言えない不安定な中、本作の信長は思慮深く、しかし個性的に自勢力を統合します。
隣国には時代を代表する東海一の弓取り・今川義元。その傍らには謀将として名高い太原雪斎。
武…続きを読む - ★★★ Excellent!!!歴史小説の書き手としては随一
んー。さすが。惹き込まれていく見事な文体。
読み始めると止まらない魅力があります。
恐らく、このこなれた書き方、既にファンも多かろうと思います。
僕のレビューで何をかいわんやですが、もっと多くの方に知ってもらう助けになればと筆をとりました。
信長と濃、道三や雪斎という、この戦国の美濃、尾張、三河は、もはや見慣れた英雄たち、見慣れた事件や戦として、何度も描かれ、確立され、多くの作家のモチーフになっていますが、まだ、こうも生き生きと書ける書き手がいるのかと驚かされます。
奇をてらうことなく、ここまでは時代小説の王道に従って、話は進行しています。
変に史実をこねくり回さずとも、登場人物の性格…続きを読む