「死のうは一定」の唄とともに語られる信長の青春物語

織田信長は乱世の日本を統一に導いた武将ですが、同時に、信長の生涯は、暗い影やスキャンダルにも満ちています。
それは、信長が若かったころ、歴史の舞台に登場するころからしてそうです。父の葬儀で焼香を投げつけた事件、傅役(もりやく)平手政秀の不可解な自害、そして弟の信行との不和など、数々の事件が伝えられています。
しかし、この物語は、巧みな解釈で、その「暗い影」を振り払い、一途な若者信長と、信長に嫁いできた濃姫(帰蝶)との青春物語として、桶狭間の戦いまでの「初期の信長」の日々をさわやかに描いています。
信長を支え、たまに嫉妬を見せる濃姫、若き日の木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)、陰で存在感を示す実力者松平元康(家康)、そして関西弁をしゃべる愉快で軽めの明智十兵衛(光秀)などのキャラクターも斬新です。また、「このひとがここに出て来るのか!」という意外な登場人物も登場して、物語を彩ります。
「ラスボス」である今川義元も、惰弱で貴族趣味の殿様ではなく、実力でその地位を手にした、まるで後の信長を思わせるような英傑として描かれます。
若い日の信長が、先を行く者たちやまわりの人びと、若者たちとどう交わりながら、広く知られる「天下統一を目指す歴史的人物」へと成長して行くのか。
繰り返しうたわれる「死のうは一定(いちじょう)…」の唄とともに、物語をお楽しみください。

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