大変おもしろく、私好みな作品の多い短編集だった。 自分の好みすぎると、それは感性中心の話題になり、客観的に第三者に、どこが具体的に良かったのか、示しづらくなりやすい。 それでも何とか努力はしてみる。 まず、シチュエーションの独特具合、作り出す空気感がよい。これは、作者の独自性の表れだろう。 あとは、話の内容に左右されない筆致がスマートに感じられる。
幻想的で、幻惑的。個人的にはむしろ詩や歌詞(端的に洋楽的)の感覚に近い読後感で。掌編としてオチを楽しむのでしたら、小見出し「旧作」から開かれるといいかも。連作「十二の月虹」は、折に触れてまた触れたいと思わせる怪作でした。