このレビューは要チェック! 復活のカクヨムgoodレビュワー"大"表彰式!【第四回】



第3回カクヨムWeb小説コンテストでは、優れた作品を見つけて世に広めるということも、創作にとって欠かせない要素であると考えています。

そこで、優秀なレビュワーの存在にもスポットを当てるため、カクヨムgoodレビュワー"大"発掘会と題して、応募作に寄せられたおすすめレビューより、秀逸なレビューを毎週10本ずつ紹介しています。

紹介された方には、カクヨムgoodレビュワーの称号を授与するとともに、2,000円分の図書カードをプレゼントいたします。

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最終回となる第四回目では、1月19日〜1月25日の間に投稿されたおすすめレビューが対象です。


今週のgoodレビュワー (期間:1月19日〜1月25日)


goodレビュワー No.1: 夜宮あいら
200年経っても、また君に『恋』をする
遺伝子異常によって『男』しか産まれぬゼルダ国。
健常時代のクローンによって、どうにか絶滅をまぬがれようとする。

ゼルダ外務局長補佐のキース=カイルは、外交でたちよった国境ジャングルで遭難。
そこで野生のままに育った『女』に心を奪われる……

偏屈に育ってしまったキースが、ウーに陥落してゆくその様子がもう愛しすぎて……!(⁰▿⁰)!このカップルに添い遂げて欲しい……!と応援しながら読む手がとまりません!
でも、2人が結ばれるにはあまりにも多い障害が……!
ウーの出自がわかった途端に、キースは命を狙われ指名手配犯に。
物語はところ移して新章に……!

じつは休みの日に一気に半分読んでしまったのですが、つづきを読みたくてウズウズ……ソワソワ……
最新話だけ確認して、念願のキース再登場に悶絶しながら、仕事へ行ってまいります(´∀`)ムオー!
── レビュー対象作品: 『SKY WORLD』作者:青瓢箪


goodレビュワー No.2: 奈月遥
大切な人といる世界はこんなにも美しい
産業革命によって職と夢を奪われた少年が、革命の要因である魔法杖に惹かれて、生きる力を取り戻していくドラマに感動しました。

何度も悩み、立ち止まっては、前に進むラスト少年のいじらしさがとても可愛いですし、ラストが道を間違えまた立ち止まる度に、優しさと不器用さで道を指し示してくれるアイーダ先生が素敵でした。

初めから終わりまで、アイーダ先生はラストのことを大切に大事に、彼にとってよい道筋を考えて寄り添い、最期には彼に全てを託していく。
一見、怖そうでもそれは人間関係に慣れてないからで、自信家に思えても内心は自分の技術や思考に不安を持ちながらそれを克服して生き、愛情深くとも人や自分がその愛に翻弄されないように自制する強さ、本当に魅力的な人物でした。

また時間を置いて、読み直したいと思える作品でした。
── レビュー対象作品: 『魔法の杖の作り方』作者:CAT


goodレビュワー No.3: 草詩
幼い頃に聞いた憧れのお話。そこに隠された真実と、今起こる事件とは――。
子供の頃に聞いた御伽噺「白い魔女」
憧憬の念を抱いたお話に隠されていた真実。

短い期間共に過ごした幼馴染との、久しぶりの再会で浮き彫りになっていく過去。
そこには魔術や『みよ君』の家族に関わる秘密と、今まさに進行中のとある事件へと繋がっていた。

戻ってきた『みよ君』は何を見つけ、何を想うのか。
そして主人公は……。

と、気になる要素満載の。
一風変わった魔術設定に支えられた骨太のストーリーです。

しっかりとした魔術設定とそれに立脚したバトルも見所ですが、そうした魔術師の国という”文化や考え方”まで創り込まれており、根深い部分から繋がって行く様も素晴らしい。

『みよ君』を追って来た妹や教会のシスターなど、魅力的なキャラクターたちが真実と事件にどう立ち向かうか。
その中で幼馴染二人はどういう結末を勝ち取るのか。

気になる要素が一つでもあれば是非是非読んでみてください!
── レビュー対象作品: 『ホワイトウィッチトライアル』作者:荒ヶ崎初爪


goodレビュワー No.4: 月影 夏樹
日本独特の雰囲気を活かした、新しいジャンルのホラー小説
和風ホラーの長所とも呼べる、空気感・少しずつ迫る恐怖・暗闇などの要素が、見事に調和しています。その怖さは、まるでこの小説を読んでいる私たちにまで迫ってくるような気配すら感じてしまいます。

日本独特の身近な建物「神社」が話における重要なキーワードとなっており、次は自分がこの体験をするかもしれない……というどこか親近感が湧いてしまいそうだから、それがむしろリアルで恐ろしいです。

そして話を進める上での文字や文章の並びですら怖いという、作品独自の世界観と魅力があります。一読者として、登場人物たちと共に恐怖を体感し謎を解明したい! そんなワクワク感やドキドキ感を、一緒に共有しませんか?
── レビュー対象作品: 『神送りの夜』作者:千石峻之


goodレビュワー No.5: odadami
飛行場のある街を舞台とする姉妹たちの青春譜
"空の便利屋"として飛行機による民間の輸送業を営むパイロット達、そのただ中に父の跡を"継いで"大空へ羽ばたく少女がこの物語の主人公です。

東京から近くて遠い古くからの要衝・山梨県の甲府を舞台とし、読み進めていくと自らが赤いステラの操縦席にいるような、まるで主人公の夏海と共にどこまでも広がる空や鳥瞰の山々を見ているような光景が、頭の中に思い浮かびます。
読了ののち甲府へ向かう列車に乗ったら、車窓から赤いステラの飛ぶ姿を探してしまいそうな、爽快な読後感にあふれています。

またメカ好き、飛行機好きの心をくすぐる要素も多分に含み、機械油のにおいに塗れて整備を手伝いたい気分にかられる作品だとも言えます。
この飛行場のある街に住みたくなる物語です。とても面白かったです!
── レビュー対象作品: 『ステラエアサービス』作者:有馬桓次郎


goodレビュワー No.6: 亜沙
「めでたしめでたし」のそのあとで、
世界はどう変わり、人々はどう変わっていったのか。
ハッピーエンドを迎えたあとの世界に生きる"人々"を丁寧かつ繊細に描いている。
全て終わったあとの世界で、それこそRPGで言ってしまえばもうクリア後の世界。

この作品に出てくる登場人物すべてに魅力を感じた。
が、この物語において自分に衝撃を与えたのは「その他大勢」の存在があることだ。
キャラクター小説にありがちな、主人公たち以外がいてもいなくても変わらない話とは違う。
「その他大勢」が存在しているからこそ、「主人公たち」が存在する。
一歩違えていれば、その「主人公」たちも「その他大勢」の固有名も与えられない存在だったかもしれない。
この小説からは、世界の奥行きを強く感じることができる。

コミカルな調子で描かれる一度「終幕」を迎えた世界の人々は、幕が下りたあとでも生き続けている。
じゃあ、ゲームクリアを迎えたRPGの先には一体何があるのだろうか。

>しかし、平和になったお陰で山ほどいた勇者や騎士は仕事にあぶれて無職になってしまった。

まあ、つまり、そういうわけで。
終わりを迎えた世界はそれなりに問題を抱えているわけで、剣と勇者の世界でも、勇者は少なくとも生命活動を維持する必要があるわけで、生命活動を維持するには食事が必要なわけで……。
これがこの小説の肉にあたる部分だ。
これが美味いと感じるならばこんなレビューなんて読んでないで、さっさと中身を読み進めるべきだ。

きっと、この小説はその期待には応えてくれる。その上で、ひとつ読者に問いかけてくれるだろうから。

これは、ひとつの「勇者論」そのものだと思う。
「勇者」という言葉を読み解き、作者の語る「勇者」像はこうだ、と無言で示してくる。

ただ一つ間違いなく断言できるのは、この小説は「勇者のことが好きで好きで仕方ない」作者の手によって書かれているということだ。
── レビュー対象作品: 『何故、勇者は壷を漁ってしまうのか?』作者:水底で眠る。


goodレビュワー No.7: 竹神チエ
ステファン、10歳。魔法使いの弟子になる
伝統的な英国ファンタジーの趣きのある作品。

引っ込み思案で空想がちな10歳の少年ステファンは、毎日母親に叱られ、友達もおらず寂しい日々を送っていた。
そんなある日、画家で魔法使いだという青年がやって来る。二年前に失踪した父親の友人だというが……。

ドラゴンや竜人、魔女、魔法使い、精霊やゴーレム、カラスやフクロウの郵便屋さん。
人間世界に混じるように、彼らは存在するのだが、一般には否定され、迫害されている。

ステファンはもちろんのこと、彼を取り巻くキャラクターも個性豊かで面白い。

師匠のオーリと竜人の娘エレインの不器用な恋やステファンの母が抱える悲しい過去、一見冷たそうでいて愛情深い魔女たちやいやらしい悪役もそろっている。

丁寧で読みやすい文章で描かれる世界は懐かしく温かい雰囲気に溢れている。
たとえシリアスな場面であっても、それは変わらない。

幼くもなければ、大人でもなく、あくまで子供の立ち場から物事を純粋に考え、ひたむきで少し泣き虫なステファンによって、周りの大人たちも変わっていく。童心を持ち続けることが魔法を使うには必要なのかもしれない。

そここに散りばめられたユーモアのある描写にクスリとさせられながら、異種の対する偏見や差別についても考えさせられる。

子供から大人まで楽しめる、安定感抜群の作品です。
── レビュー対象作品: 『20世紀ウィザード異聞』作者:まつか松果


goodレビュワー No.8: 冬野ゆな
「人形の祠」に纏わる怪談と、ミステリー
世襲騎士ベイル・マーカスは、辺境の都市トリアナンへ左遷された。
その地で彼は「人形の祠」に関する怪談の蒐集を始める。

……というファンタジー+怪談というあまり見ない組み合わせの本作。
「怪談なんて怖そうだし……」という方にもオススメである。

何しろファンタジーなので、いわゆる魔物・モンスター的なゴーストと幽霊の違いをきちんと設定して説明しているところもポイントが高い。

若干、ファンタジーに置き換えただけでは……と感じるところも無いでは無いが、(おかげで最初は主人公の正気を疑った)著者によると「若者の怪談離れを防ぐため」らしいので、こういう世界観だと理解してしまえば問題はない。

……と、偉そうに並べたところで、語られる舞台はきっちりラノベ系ファンタジーなのである。凄い。

そうかといって蒐集される怪談に毒気が無いかというとそうでもない。
蒐集家としてのベイルの能力はかなりレベルが高いと言えよう。

更に、ただの怪談蒐集やファンタジー風にしてみたというだけにとどまらず、語り部を含む登場人物を巻きこみ、一つの結末に収束していく構成も見事である。
これは「人形の祠」の謎を紐解くミステリーでもあるのだ。

他のかたのレビューで「ファンタジー界の京極夏彦」と称されているが、一理ある。
「名探偵 みなを集めて さてと言」う代わりに、この都市、ひいては読者に憑いた「憑き物」をきちんと落としてくれる解決は、この世界観でなければできないカタルシスを確かに持っているのだ。

そして……最後はぜひともその目で確かめていただければ、幸いである。
── レビュー対象作品: 『法務官ベイル・マーカスの怪奇記録 『人形の祠』』作者:海老


goodレビュワー No.9: 吉岡梅
言葉と文字と継承と理解と正義と諍いの物語でそして何よりトヨちゃんの物語
日本の古代史上のスーパーヒロイン、卑弥呼の後を継いだトヨ(壹與)ちゃんのお話です。

トヨちゃんは、最新トレンドである「文字」にめっちゃ興味津々な美少女。
魏志倭人伝でもおなじみの張政や難升米も巻き込んで、今日も今日とて巫女として閉じ込められた社の中でお勉強に励みます。

古より伝えられた謡や宣託を伝えつつ、文字を通じて様々な事を時に可愛らしく、時にお馬鹿に「学んで」いくトヨちゃんがとてもキュートです。

そして、このお話は、「ことば」や「文字」をきっかけに、本当にいろいろなテーマへと触れて行きます。文字のなりたちや意味、日本や中国の古代史、諍いや正義、そして「伝える事」の意味や姿勢と「覚える事」との違い。そして何よりトヨちゃんのキュートさ。

読み始めは、「あ、古代史をなぞって紹介する系かな」と思うかもしれませんが、実は古代史を下敷きにいろいろなテーマへの扉を開いてくれる素敵なお話です。
トヨちゃんや周りのキャラクター達も単なるガイドに留まらず、生き生きとしています。

それにしても、古代史に限らず、伝えられた情報を元にした穴埋め・妄想・お話作りって、本当に楽しい!と再認識させていただきました。
そんなお話作りを楽しんでいる様子も伝わってくるお話です。是非ご一読を。
── レビュー対象作品: 『A.D.248 ウェザーリポート』作者:小川茂三郎


goodレビュワー No.10: 節トキ
恋は匂えど散りぬるを、それでも咲かせん江戸の花
舞台は天保時代、江戸の千住。

兄を探して遥々この地へとやってきたヒロイン・結衣は、危ういところを相模と名乗る男に助けられ、榮屋で働くことになり――というところから物語は始まります。

この相模がとにかくカッコイイ!
女性の目から見てももちろん、訳ありの男衆達からも人気があるのも頷ける問答無用の格好良さ。
飄々としていながら心にはしっかりと熱いものを持ち、怖そうに見えて誰よりも優しい彼の人柄に、結衣だけでなく私も惚れてしまいました。

また結衣という女性も素晴らしく魅力的。
健気で純真で無垢で、時に悩み時に言いたいことを言えずに立ち竦みますが、しっかりと芯の強さを秘めていてます。もどかしいまでの共感を覚えただけでなく、気付けば夢中になって、彼女を心から応援していました。

結衣の行く道は、決してやさしいものではありません。
しかし榮屋で出会ったたくさんの人々の人情に支えられながら、彼女は悲しみや辛さ、苦しみを乗り越え、己の『居場所』を見付けるのです。

襲い来る様々な苦難に手に汗握る場面も多いのですが、その度に結衣の真っ直ぐさ、相模の男っぷり、他の登場人物達の魅力が際立ち、雨降って地固まるの諺の如く、一層作品の世界に惹き込まれていきました。

歴史が得意でなく、時代物小説にハードルを感じている私のような方にもオススメ!

温かさとやるせなさ、甘酸っぱさと切なさ、そして可愛さと格好良さ、様々なものに包まれた恋物語を、江戸の空気と共に味わって下さい!!
── レビュー対象作品: 『撫子踏まずに焔を背負え』作者:秋保千代子


選出されたレビュワーのみなさまには、これからも素晴らしい作品の発掘と紹介を期待しています!

第3回カクヨムWeb小説コンテストは、1月31日(水)まで開催しています。