ステファン、10歳。魔法使いの弟子になる

伝統的な英国ファンタジーの趣きのある作品。

引っ込み思案で空想がちな10歳の少年ステファンは、毎日母親に叱られ、友達もおらず寂しい日々を送っていた。
そんなある日、画家で魔法使いだという青年がやって来る。二年前に失踪した父親の友人だというが……。

ドラゴンや竜人、魔女、魔法使い、精霊やゴーレム、カラスやフクロウの郵便屋さん。
人間世界に混じるように、彼らは存在するのだが、一般には否定され、迫害されている。

ステファンはもちろんのこと、彼を取り巻くキャラクターも個性豊かで面白い。

師匠のオーリと竜人の娘エレインの不器用な恋やステファンの母が抱える悲しい過去、一見冷たそうでいて愛情深い魔女たちやいやらしい悪役もそろっている。

丁寧で読みやすい文章で描かれる世界は懐かしく温かい雰囲気に溢れている。
たとえシリアスな場面であっても、それは変わらない。

幼くもなければ、大人でもなく、あくまで子供の立ち場から物事を純粋に考え、ひたむきで少し泣き虫なステファンによって、周りの大人たちも変わっていく。童心を持ち続けることが魔法を使うには必要なのかもしれない。

そここに散りばめられたユーモアのある描写にクスリとさせられながら、異種の対する偏見や差別についても考えさせられる。

子供から大人まで楽しめる、安定感抜群の作品です。

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