恋は匂えど散りぬるを、それでも咲かせん江戸の花

舞台は天保時代、江戸の千住。

兄を探して遥々この地へとやってきたヒロイン・結衣は、危ういところを相模と名乗る男に助けられ、榮屋で働くことになり――というところから物語は始まります。

この相模がとにかくカッコイイ!
女性の目から見てももちろん、訳ありの男衆達からも人気があるのも頷ける問答無用の格好良さ。
飄々としていながら心にはしっかりと熱いものを持ち、怖そうに見えて誰よりも優しい彼の人柄に、結衣だけでなく私も惚れてしまいました。

また結衣という女性も素晴らしく魅力的。
健気で純真で無垢で、時に悩み時に言いたいことを言えずに立ち竦みますが、しっかりと芯の強さを秘めていてます。もどかしいまでの共感を覚えただけでなく、気付けば夢中になって、彼女を心から応援していました。

結衣の行く道は、決してやさしいものではありません。
しかし榮屋で出会ったたくさんの人々の人情に支えられながら、彼女は悲しみや辛さ、苦しみを乗り越え、己の『居場所』を見付けるのです。

襲い来る様々な苦難に手に汗握る場面も多いのですが、その度に結衣の真っ直ぐさ、相模の男っぷり、他の登場人物達の魅力が際立ち、雨降って地固まるの諺の如く、一層作品の世界に惹き込まれていきました。

歴史が得意でなく、時代物小説にハードルを感じている私のような方にもオススメ!

温かさとやるせなさ、甘酸っぱさと切なさ、そして可愛さと格好良さ、様々なものに包まれた恋物語を、江戸の空気と共に味わって下さい!!

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