第22話 全力で穴に指を突っ込んで、棒に一生懸命に刺激を与える

いつの間にか、男3人のグループラインができていた。


俺も高安も基本は話さないが、須子の愚痴を聞いたり、学校の課題シェアする時に使われる。



須子が何をしたいかは、IQ200超えの人でもわからないであろう。 


ただ、俺は反射的に『遊ぶ!!』と返信した。


高安も特に問題なく来るそうだ。


男子なら断らないであろう。

何するかは皆目検討もつかないが。



初めての友達との休日の外出である。

GWのイベントはありそうだ。


男子だけなので、ささっと着替えて、待ち合わせの駅に行くと、先に須子が待っていた。


須子の隣には、男にしては少し長い髪を縛り、イケメンで、その顔は爽やか系というよりは、どこかの組の若頭のようなちょっと怖めの顔の奴がいた。


もしかして、須子は変な店に行き、困って俺たちに連絡してきたのではないか。


駅の真ん中で、コワモテイケメンに怒鳴られたら、注目を浴びすぎて、心臓発作で死にそうである。


帰っちゃおうかな……


ただ、こんな俺と今まで仲よくしてくれた。

仕方ない。行くか。


「き、来たぞ……」

「おお〜 月城きたか〜」

「お、おう。た、高安はまだか……?」

「おお〜予想通りですな〜」


もしかして、もう、高安は捕まってた? 


「ん? あいつは遅れる人なの? ま、暇だから俺はいいけど……」

「違う違う! もういるぞ?」

「どこに?」


俺は集合場所の周りを見回した。


「いなくね? トイレとか?」


須子はドッキリが成功したような顔で、

「これだよーーー!!!」と、須子の隣にいる若頭風イケメンを指さした。


「……!?」


「よう」

いつもの高安の声だった・


言われてみれば、背丈体格は高安と同じだ。

「………………………………」


驚きすぎて初めて声が出なかった。


「ほらな〜だから言ったの! 絶対驚くって。 僕も高一の時、違い過ぎて驚いたもん!」

「そんな変わらないと、思うんだけど……」


「いやいやいや、めっちゃ変わるだろ!!」

珍しく俺も大声を出してしまった。


「髪結んで、コンタクトにしただけだし……」

「そ、そうなんだろうけど……。なんで学校でそれをしないんだよ? めっちゃモテるだろ?」

「そうそう。僕もそう言ったんだよ〜!」


「目悪いからメガネをかけてるだけだし」

「今みたいにコンタクトにすればいいだろ?」

「えーーだるい。 髪結ぶのもだるい」

「そんな理由かよ……」

「それに、学校で結ぶとさ、トイレで無駄に前髪いじっている奴らと同視されそだから嫌だ」

「確かに、あいつらはウザいけれども……」

「だって、ああいう奴らはモテたくて、授業中に当てられた時、クソつまらないボケするから絶対に同視されたくない」

「なるほど。そこか…」


よくわからないが、ボケ王のプライドというやつだな。

正直、須子も高安も自分をしっかり持っているやつなんだよな。


俺ならモテる方を選ぶのに。


もしかしたら、真の陽キャなのかもしれない。


「月城。安心しろ。あいつは童貞だぞ!」

俺の考えを先読みした須子が、俺を慰めてくれた。


「えーー。高安は嘘つく奴じゃないけどさ、信じにくいって」


「いや。オレ、フツーに付き合ったことないよ?」

イケメンから繰り出されるそのセリフはかっこよかった。


「まあ、信じるけども」


「あいつの好きなタイプ聞いたら、童貞なのもうなづけるぞ?」

「そんな?」

「あいつ、芯があって、度胸もあって、でも、甘えてくる女だってよ! いるわけねーじゃんかよ〜」

「確かに、JKに求めていい検索条件ではないな 」

「だろ〜〜? ヤクザの姉御風ツンデレなんていねーぞ?」

「えー。どっか探せばいるって。オレは追い求める」


本当に若頭なのかもしれない。

あ、でも、一応、棒倒しの時に刺青は入ってなかったか。


「見つけた時は、苦労しなくてゲットできそうだな」

「そうだよな〜。羨ましいぜ〜。僕は、いい子見つけてからが大変なんだよ〜」

「俺もだぞ?」

「月城はなんやかんやで彼女作ってそうだぞ?」

「それはないな。 過大評価だ。 多分この中だったら、俺が一番最後だな」

「そーいえば、月城の好きなタイプはどんなんだよー?」


好きなタイプか……

今まで考えたこともなかったな。


こんな男子の会話もなかったから当たり前か。

それに、実際に女子と話したこともなかったから現実味なかったしな。


なんで今、早乙女姉妹の顔が浮かんだんだろ。


「んー。 そう言われると悩むな……」

「簡単だろ! ちなみに僕は、エロくて巨乳の女の子一択!」

「ぶれないな。俺は強いていうなら、一緒にいて楽しくて、努力家の人かな」

「高安みたいに内面の話かよ〜。外見は?」

「細くて巨乳な子」

「おお! お主もこっち側ですか〜。 やっぱり、Gカップが最高ですの〜〜」

「いや待て。大きすぎてもあれだろ。Eカップがベストだ。 そこは譲れないぞ? なあ、高安くんよ」

「いや。貧乳が正義ですので」

「おやおや、3人とも割れましたな。 では続きまして僕の好きな、下半身の……」

「おいおい。 その話はまた今度にしよう。 そろそろ行こうよ」


流石に公共の場で須子が話すのは止めないといけなかった。


「お、そうですの〜。では、行きますか!」



結局遊ぶところは、【ボーリング】だった。



「高安はさ、どこ行くか気がついていた?」

「ん? もちろん」

「だ、だよな……」

ボケ王にとっては朝飯前ということか。



ボーリング場に着いた。

ゲームセンターも付随していている。


「まずは2ゲームくらいでいい?」


「俺やったことないんだけど……大丈夫?」


今更感だよな……。

でも、何するか俺わからなかったし……。

怒られたり、馬鹿にされるのかと思ったらそれはなかった。


「全然問題ないぞ! やってけばできるようになるし」

「ごめんな。高安も経験者?」

「いや、オレも2、3回くらいかな」

「そうなのか」

「賭けするやつもいるけど、僕は友達とグダリながらやるのが真のボーリングだと思ってるぞ!」


GWってこともあり、結構混んでいる。


やはり人前でやるのは怖いな。

ただ、コイツらといると不思議と嫌な緊張がないのも事実ではある。


病気を治すためにも頑張るか。


俺らは一番奥のレーンでしかも隣がいなかった。


ありがたい。


須子がシューズや球の選び方とか基本的なことは説明してくれた。


「初心者の月城にアドバイスだぞ! 穴に指を入れる時はゆっくりな〜。一番大事だからな??」と指を入れる際、俺の方を見ながらニヤニヤしてきた。

「間違った情報を初心者に教えるな」

「僕は間違ってないぞ?」

「ボーリングにおいてもか?」

「く、くそう…。やるな…」


そうやって、始まったボーリング。


須子は、ストライクやスペア連発と、意外とうまかった。


高安も、ストライクは出ないものの、スペアを結構とっていた。


初めは、俺は緊張して結果は出なかったが、硬直度合いも小さく済んだため、穴に指を突っ込んで、棒に一生懸命に刺激を与えることに集中し、1ゲーム目の後半にはスペアやストライクも出せるようになった。


会話する余裕も出てきたし、投げてるだけもつまらないので聞きたかったことを聞いてみた。


「そういえばさ、こないだの体育祭の打ち上げは楽しかったの?」

「そうだ!話すの忘れてた!!全然楽しくなかったんだよ〜〜〜!!!」

「それは、残念だったな……」

「打ち上げはみんなで飯食いに行ったんだけど、僕だって、胸の一つや二つ揉めるかと思って参加したのに、端の方で2組の男子と話してただけだぜ?」

「大体そうなるだろう。打ち上げなんて、チャラついている男子が血眼になって女子と話すイベントだろ。計算ミスじゃね?」

「いや、僕の計算は間違ってないんだ! アクシデントだったんだ……」

「アクシデント?」

「今回の打ち上げは、早乙女姉妹が揃うから、ほとんどの男子はそれに夢中になるだろ? だから、2組とかの可愛いこと話せると思っていたのに、急に来なくなったんだぞ!!!」

「……それはなんとも……」


流石に言えねーな。

早乙女姉妹と家に行って、ファミレス童貞卒業してましたとは……


「今度の打ち上げでは、絶対おっぱいを揉もうと思っている」

「そこはブレないのか。 高安も同じ意見なの?」


「オレは須子が行くから行っただけだし。特にはなんとも思っていない。まあ、男子の話はオチがなくて、ウザかったけどな……」

「マジで、こいつは黙々とポテト食ってただけだったぞ!!」


高安が学校でこの格好なら、クラスの女子のほとんどは話しかけてくるだろう。

やはり、もったいないと思ってしまう。


会話も終わり投げようとした須子が、急に受付の方を振り返った。


「どうかしたのか?」

「いや、僕の美女センサーが反応したのさ」


確かに受付のいるところに女の3人組がいた。

ここからは顔がはっきり見えないが、すげーオーラを放っている。


ただ、どこかで見たような気もするが……

正直、俺は悲しい。


せっかく病気もあまり発動せず、楽しくやっていたのに。


変な女子グループとか来て、『あいつダサくない?』とか言われたら、体がおかしくなってせっかくのボーリングを心から楽しめなくなってしまう。


「やっぱここにくるかな〜」

須子は楽しそうにしている。

まあ、須子や高安が楽しいなら俺はいいんだけども。


「よく見えないけど、一人目は169センチEカップ、二人目は160センチBカップ、3人目は156センチGカップといったところだな」と分析までしてくれた。


『169センチE カップって、早乙女姉妹と同じだな〜』と、無意識にストーカーになりつつある自分が怖かった。


とにかく、俺は目線を合わせたくはないので下を向いていると、「え……」と珍しく須子が驚いた声を出した。


「え!? 須子くん!?」

声に聞き覚えがあった。

というか、危篤状態でも聞こえるであろう聞き慣れた声であった。


驚いた須子は球を落として、そのままガーターになっていた。


「え!? 月城くんも!?」


俺に気がついたのは、姉の方だった。

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