コミュ障、陰キャでも、キスしてきた超絶美人の双子姉妹と恋していいですか?

堀川之犬之助

第1話 彼女は俺にキスをした

「…ありがとう……。また助けてくれたね」

そう言って彼女は……俺にキスをした。


俺、月城光つきしろ ひかるは、東京都にある、私立、天明てんめい高等学校の編入試験を受けた。

前の高校は、持病によって退学になったからである。

持病といっても、入院が必要といったものではない。


ただ……極度の緊張魔で、コミュ障なのである。

人の目線が怖くて、怖くて、仕方がないのある。

今までの人生、人前では緊張により全てをミスしてきた。


天明高等学校は偏差値も一般的である。

特に、人気の学校というわけではない。

この学校を選んだのも特に意味はない。

ただ、編入試験をやっている学校で検索したら出てきたから受けてみることにしただけである。


この学校では、一般的な高校生が送る生活などをしてみたいものである。


編入試験の内容は、筆記試験と面接。

この学校は前の学校より偏差値が低いので、筆記試験は特に問題なかった


面接は、小さな教室に先生が一人の二人の空間。

対人恐怖症、コミュ障の俺にとってキツかったが、同学年の冷たい目線ではないのでなんとか耐えられた。


人が少なければ、なんとか耐えられるものである。


面接が終わり、2階の教室から1階の下駄箱への階段を降りていると、すごく綺麗な女子とすれ違った。


小顔で、黒髪のロングヘア。

細いにも関わらず、出るべきところはしっかり出ている。

俺が175センチくらいだから170センチくらいあるのか?


ザ・モデル体型というやつだ。

よく見ると、この学校の制服だった。


前の学校には芸能クラスがあり、レベルが高かったが、比べ物にならないオーラを放っている。

今まで会ってきた中で、一番綺麗と言っても過言ではなかった。


この学校に編入することが楽しみになった。


最も、俺のような陰キャには彼女のような綺麗な人と仲良くなる機会はないことはわかっていたが。

それでも、同じ空間にいたいという願望くらいは許されてもいいだろう。


俺は階段を降り終わったあと、なぜか振り返った。


パンツを見れるかな、という淡い期待もあったが、なぜか嫌な空気を感じたのである。


直感は当たっていた。


彼女は気を失ったように、2階からそのまま落ちてきた。


緊張を超えた極限状態。

俺は、全力で落ちてくる彼女を受け止めた。


アドレナリンのおかげか、それとも彼女がモデル体型だからか、そこまで重く感じなかった。


ただ、キャッチする寸前、彼女の指が俺の両目に入ったため、目を開けていることが辛い。


俺はゆっくりと、廊下に彼女を寝かせた。

目は開けたとしても、涙でよく見えない。


彼女の方はというと、意識は朦朧としているようだが、気を失っているわけではなさそうだ。


「だ、だ、大丈夫ですか?」

普段はこんな綺麗な人には自ら声をかけられないが、今回は相手の意識が朦朧としている状態だ。

なんとか声をかけられた。


「…ん…」

一応返事はできる状態だ。


ただ、声は大きくない。

他に何か大事なことを言うかもしれないため、声が聞こえるよう、俺は、顔を彼女の方に近づけた。


涙であまり良く見えないが、近くで見ると、まつ毛が長く、鼻筋はスッと高い。

肌は死体のように白かった。


少しづつ意識を戻した彼女は、「…ありがとう……。また助けてくれたね」


そう言って、両手で俺の顔を撫で始めた。

そして…


彼女は、俺の顔を両手で持って近づけて、キスをした。

彼女の方からキスをしたにも関わらず、『んっっ』という吐息を漏らした。


あんなに、柔らかいのか。人の唇というものは。

一瞬のキスであったが、細胞レベルで感触を記憶した。


今まで、ずっと辛いことがあったから、とうとう来たか。

モテ期か!!


…いや?

『また助けてくれたね』、て言ってなかったっけ…

涙のせいで、はっきり見たわけではないが、あんな美人見たら、なかなか忘れないと思うのだが……


彼女は再び、大人しくなった。


詳しくキスをした理由について聞きたいが、『意識が朦朧としている間にキスされました』なんて言われても困る。

在校生と問題を起こしたという理由で不合格になり、また編入試験を受けるのはマジでダルイ。


『何やってんの。遅いよー??』

階段の上の方から女子の声が聞こえる。


おそらく、彼女を待つ友達であろう。

クソっ… 遠くがよく見えない。


とにかくこの場を去るしかない。


友達も来てくれそうだし、俺がキャッチしたから、大きな怪我もないだろう。


俺は、試験前に寄ったトイレの場所を思い出し、とりあえず、見えないながらも、男子トイレに避難した。

男子トイレで目を洗い、二人の女の声が聞こえなくなるのを待って、速攻で帰宅した。


帰り道、家、どこにおいても唇の感触は忘れることはできなかった。


しばらく、オカズには困らないようで良かった。



1週間後、無事に合格通知が届いた。

編入するクラスは2年1組

編入日は、4月、新学期が始まると同時であった。


クラス替えが起こるため、編入生も学校に馴染めるようにする学校の方針だろう。

コミュ障の俺にはありがたい配慮だ。

それでも、俺は学校に馴染めないと思うが、この学校では、少し頑張ってみたい。


編入日、校長室で待たされた。

校長のつまらない話を永遠に聞きながら、担任が来るのを待った。


担任が来て、軽く挨拶をして、教室まで案内された。

教室に入ったら自己紹介をしてくれと言われた。


まあ、わかっていたことだが、一番嫌なことだ。

みんなもやるから流れでなんとかしようと思っていたら、『みんな終わっているんだけどね』と鬼畜発言をされた。


俺が、校長先生と楽しく談笑しているから邪魔しないようにして、その間にやることもないので、自己紹介は終わらせたとのこと。

帰りたいが、帰れるわけもなく、渋々承諾した。


教室に入ると教団に立たせられた。

初対面の人からの目線はとても怖い。

足の震えが止まらない。

「…はじめまして… 編入してきました。 月城光です…よろしくお願いします…」

自分では多きな声を出しているつもりなのに、自然と声が小さく、低くなってしまう。


脂汗が止まらない。

ああ。やっぱり人の目線は怖い。


意思に反して、態度の悪いやつのような自己紹介になってしまった。


それにも関わらず、クラス替えしたての教室は、優しさであふれていた。

拍手の量が多かったのだ。意外であった。


編入、転入なんてヒロインの専用イベントなんだぞ?

陰キャが入ってきたところで、拍手すらもらえないものだと思っていた。


よくよく考えると、みんなクラス替えで、自分のカーストの立ち位置しか考えていことがわかった。

俺みたいなやつがきて自分がカースト最下位にならなくて済むという安堵からくる感謝の拍手であろう。


俺の席は、教室の左端、いわゆる主人公席だった。

クラスの席順は、担任の計らいで出席番号順ではなくランダムな席順にしたらしい。

出席番号の人とはイベントなどで結構一緒になるから、それ以外の人との交流を増やしてほしいそうだ。


主人公席なら、後ろに座っている人の視線を気にしなくて済むのでありがたい上、人間観察も行える。

運が良かった…と思ったが、隣の席の女子は机の上でつっぷして寝ている。


容姿は、ボブヘアーで、スタイルはかなり良い。

大きな胸を机に押し付けている。

オーラからは、美人そうだ。


ただ、こういうタイプは怖い。

睡魔を口実に、陰キャとの会話を断るタイプであろう。

俺が大事な用事で話しかけても、起きず、しまいには、『なんで話しかけてきたの?』と言わんばかりに睨んでくるやつだ。


ビクビクしていると、彼女が目覚めてしまった。

「んっーーー!」

と声を出しながら、体をのけぞらせ、伸びをした。


まず、無意識に胸に目がいってしまったが、これは許して欲しいものである。

とりあえず、顔を見ることにした。


どうせ嫌われるなら、可愛い子であってくれ。


スタイルだけいいパターンはやめてくれ。

おいおい。

…マジかよ…


忘れはしない。

間違いない。



階段で落ちてきた女子じゃないか〜〜〜!!!!!

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