第2話 初めてのお友達…?
新学期開始早々、人生詰みそうだ。
隣の席には、キスした女子が座っている。
人違いで俺とキスをしといて、『不同意わいせつだ!』と言われても本当に困るものだ。
いくら俺が弁解しても、世間は、コミュ障より美人の言うことしか聞かないだろう。
どうせ、裁判官なんて勉強ばっかしてるんだから、全員童貞だろ!。知らんけど。
とにかく、このままでは冤罪になってしまう。
俺が逃げてしまったのも、罪を認める肯定事情になってしまう。
眠そうな彼女は、じーっと俺をみて、
「初めまして よろしくね!!」
めちゃくちゃ可愛い笑顔で声をかけてくれた。
そんなとびきりな笑顔で言われても…
かわいい子との会話に慣れていない俺は、「こ、こちらこそ、よろでぃくオデがいしディます」と思いっきり噛んでしまった。
『初めまして』っていっているし覚えてないのか?
意識は朦朧としていたし。
ただ、要注意人物であることに変わりはない。
いつ、犯罪者に仕立て上げられるかわからない。
とにかく、思い出させない。これに尽きる。
授業が始まった。
内容は、春休みの課題についてであった。
『あ、そうそう。春休みの課題は、月城君はないから隣の人に見せてもらいなさい』
先生…なんてことを……
これは…教科書シェアイベントだ!
正直、彼女とは関わりたくない気持ちもあるが、関わりたい気持ちもある。
そりゃーキスした仲だからね?
とりあえず、授業だから、仕方なく、あくまで仕方なく、合法的に机をくっつけることにした。
こういうのは俺から積極的に机をくっつけて良いものなのだろうか…
クラスの中でも彼女を狙っている人は多いだろう。
彼氏がいるかもしれない。
てか、10人くらい、いるだろう。
クラス全員が穴兄弟かもしれない。
編入生だからといって、教科書シェアイベントなんてしていいのだろうか。
やはり、俺なんかがシェアしても、脈がないから問題ないかもしれない。
よし。机を全部動かすぞと決心した。
せっかく決心したにも関わらず、まさかの、彼女の方から机を寄せてくれた。
おかげで、半分動かす程度で済んだ。
「はい。どーぞ〜〜」
「す、すみません」
無事、教科書シェアイベントをクリアすることができた。
ああ、いい匂いがする。
3月に見た顔と変わらない。
間違いない。
一度、彼女に触れているから、また触れても許されるのではないかと、頭の中の悪魔が騒いでいる。
触れないように、手は太ももの下に入れてこじんまり座っておこう。
それにしても…
やっぱり、唇に目がいってしまう。
ピンク色したふっくらした綺麗な唇である。
もう一度……
あーー。
しばらくは、起立はできなくなってしまった。
途中までは授業は問題なく進んでいたが、シャーペンを忘れたことに気がついた。
前の学校では、ボールペンでしか書いてこなかったから忘れてしまったのは仕方がないのだが。
この学校はダメなのかな? ま、なんとかなるか。
とりあえず、提出するプリントにボールペンで書こうとしたところ、
「ボールペンで書くの?」と彼女に声をかけられた。
「いや…持っていなくて…シャーペン」
「そう言うこと! じゃあこれ! はい!」
そう言って、どう見ても女物のピンク色のシャーペンを貸してくれた。
「でも…あなたが使えなくなってしまうのでは?」
「そういえば、自己紹介まだだったね。
それに大丈夫! もう一本同じの持っているし!
あ、でも、それは、わたしのだから好きに使っていいよ」
「…じゃあ…お言葉に甘えて」
シャーペンを借りるというまさかのイベントまで運よく発生した。
結構ツいているのではないか?
しかし…もう一本は誰のなんだ。
彼氏とペアというやつなのか。
いい気になりすぎて使うと、彼氏に殺されるかもしれない。
手汗がつかないように細心の注意を払いながら使用させてもらった。
見た目から想像していたより、とても優しい人で安心した。
授業も終わり、返そうとしたら、
「まだ、使うかもしれないから今日は持っていていいよ〜」と言ってくれた。
他に借りれそうな友達もいないので、遠慮なく借りることにした。
授業の合間の休憩時間はあまり話かけられなかった。
イケメンが編入したわけではないので当たり前ではあるが。
とりあえず、暇なので、人間観察を行うことにした。
早乙女さんは、男女問わず、多くの人からに話しかけられている。
話しかけられた彼女は誰に対しても、優しく振る舞う聖母のような存在だ。
鼻の下を伸ばしながら話している男子に、俺は、『キスしたんだぜ?』、と心の中で自慢しておいた。
授業と休憩時間の人間観察を繰り返し、午前の授業をなんとか終えた。
昼食の時間になった。
俺は、コンビニであらかじめ買っておいた。
この学校には食堂はないので、弁当か購買かと言う感じであろう。
俺は、大人数で食べるのは苦手だ。
というか、食べたことがない。
今まではぼっち飯だったので、この学校では、3人くらいの少人数で食べられれば十分である。
今日は、クラス替えしたばっかだ。
おそらくみんな、今までのメンバーではない。
頑張って声をかけてみようと心に決めた。
女子の方は、全員で食べようとクラスの半分の席をくっつけて大きなテーブルを作り上げた。
どうせ、2、3日したら、段々と4つくらいのグループに自然に分かれていくのであろう。
男子は前学年のグループ、同じ部活のグループ、とだんだん出来てきた。
これは無理だ。話しかけられない。
よし。
今日はどこかに逃げようと思っていたところ、「お〜い! 新人君! 僕たちと一緒に昼食おうぜ!」
一人の、少し背の低い男子生徒に声をかけられた。
確か、須子という名前だったはず。
「あ…、じゃあ…よろしく」
そういうとなぜか、教室のほとんどの人の視線が俺に集まったのを感じた。
俺は、人の目線には敏感なのである。
何かしたのか? 断るものなのか?
今まで一人で食べてきたからわからないぞ。
須子には失礼だが、どう見ても陽キャではないぞ?
裏番なのか? でも細いし、弱そうだぞ?
須子の隣には高安という男がいた。
俺より背が高く、メガネをかけて、前髪が長く、よく顔が見えない。根暗タイプだ。
須子との会話も最小限の『うん』くらいだ。
まあ、誰であろうと、一人よりは良いのでありがたい。
3人で飯を食べることになった。
須子が基本的に話してくれたので、俺から話題を降ることはなかった。
話してわかったことは、須子と高安は一年生の時、同じクラスだったらしい。
高安は、根暗タイプのくせに、大喜利サイトでいつも上位を取っているという謎の人物であった。
須子は音は出さないものの、携帯でエロサイトを見ている。
ちょっと、関わる人物、間違えたかな。
まあ、目標の3人くらいのグループができてよかったとしておこう。
さっきの嫌の視線は、おそらく『こいつらと食うのか〜』という視線だったのであろう。
昼食は、5分もかからずに食べ終わった。
俺らのグループは、食べ終わると各自、自分のやりたいことをやるグループであった。
個人的には、個々の時間があるのはありがたい。
俺は、カバンから小説を取り出して、といっても、ラノベなのだが、図書室に向かった。
他の生徒にラノベを読んでいることをバレるとだるいから、筆箱とノートを持っていつでも誤魔化しがきくようにしていこう。
図書室には、幸い誰もいなかった。
高校生で図書室を使うのは陰キャくらいのものか。
俺は、図書室の雰囲気が好きなんだけどな。
そう思いながら、テキトーに人が最もこなさそうな端の席を見つけてゆっくりと腰掛けた。
今日は姉妹で、一人の男を取り合うドロドロ系を読むとしよう。
負けヒロインがどっちか予想しながら読むのが醍醐味だ。
負けヒロインは、どうせ俺が微分を極めて2次元に行き、結婚してあげるから安心しなさい。
そのために、高等学校では微分は必須科目になっているのだから。
深呼吸をして読もうとしたところ、
ガラガラと図書室のドアが開いた音がした。
ああ……
せっかく、誰もいない図書室で集中して読もうと思ったのにと思ったら、
来たのは、早乙女さんだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます