第28話 横浜駅に向かうぜ
中間テストも終わり、日常もいつも通り、進んでいった。
新たな行事が始まった。
そう。
今日は、横浜遠足である!
そして、俺はめちゃくちゃ楽みではない!!
自由行動時間は、各クラス5〜6人の班で行動するのだ。
くじ引きで、班決めをした。
ボーリングで作った1軍女子とのラインは意外にも続いていた。
ラインなどでも、『一緒の班だといいね』なんて会話をしたほどである。
この流れは、完全にこの遠足のグループのために用意されたものだと思っていた。
6人グループで楽しく過ごすものだとばかり思っていた。
蓋を開けてみれば、人生そんなに甘くはなかった。
須子は森さんと同じグループだし、数井さんは高安と同じなのに、俺は姉の方とは違うグループという意味がわからない結果だった。
しかも、姉の方は、久々登場の馬込くんと同じ班で楽しくしているし、急にNTR展開ぽいし。
もちろん、俺の彼女でもなんでもないんだけどさ。
明日から、俺だけグループ退会させられて、代わりに馬込くんを入れたりするのかな……
そして何より最悪なことは、俺の班メンバーである
俺の班は俺を含め、5人。
まず、女子二人が最悪だ。
名前覚えるのは脳の容量がもったいないので、俺はモブA、Bと呼んでいる。
この間、ハンバーガーショップで早乙女さんを金目当てとディスっていたやつだ。
モブAは150センチくらいで 俺の推定で、須子よりは正確ではないが、100キロはあると思う。
容姿で差別しているわけではない。
俺自身、容姿に恵まれたわけではない。
全然太っていても、優しく接してくれるなら大歓迎だ。
ただ、モブAは、公然と人の悪口を言ったり、俺のような男子をゴミ扱いする。
自分ことを棚に上げているからうざいのだ。
英語学習の時間に、映画を見る機会があってそこに出てきたいた男が太っていた。
モブAが『うわーデブじゃん!』と叫び、クラスの全員が『お前だよ!!』と突っ込みたくなったこともあった。
モブBは、そこまで容姿はひどくはない。
ただ、なぜかモブAといる。
もしかして、モブAのことを引き立て役とでも思っているのかな。
まあ、勝手にしてくれという感じだ。
男子二人がこれまた厄介だった。
陽キャであったら、まだマシであった。
クラスを二分したらなら、陰キャに分類されるはずなのに、自分のことを陽キャと思っている痛い奴らだ。
そして、彼らは、俺みたいな陰キャが嫌いらしい。
同じ班になった時、『男子も女子も最悪だーー!!』と大声を出されたくらいだ。
別に、嫌いなのは構わないのだが。
叫んだせいで、注目を浴びさせれたことは、許してはいない。
コイツらは、高安のイケメン具合を見たら、発狂して死ぬんじゃないかと思っている。
始めの時間は、クラス全体で行われる、肉まん作りがある。
そこは班行動ではないので、少しは楽しめそうではあるな。
そして、今回は横浜駅に現地集合だが、いつもの男子2人が一緒だから、そこを楽しみにしていくか。
つまらないのは慣れている。
最も、今ままでは行事に参加したことはなかったが。
リサが作ってくれた朝食を軽く食べ、『性処理のお時間はいらないぞ!』といつものルーティンをこなし、出発した。
と、言うわけで、いつもの3人で電車で横浜駅に向かっている。
電車なのであまり大きな声では話せないが、一緒に行く友達がいるだけで安心するものだ。
須子と森さんの関係の進展を聞いたりもしていた。
個人ラインもしているらしい。
最も、須子は話を聞く限り、森さんに遊ばれている感がありそうだが。
あれ。
俺も、姉の方に同じように扱われている気もするな。
忘れよう。
「おいおい! 龍上高校の制服じゃね? アイツらも、遠足なのかな? だって東京の学校だろ? 横浜方面にいるのおかしいだろ!」
須子が珍しく、ちょっと離れたところにいる男達に反応した。
制服からして、金持ちの制服だった。
後ろから見るとそうでもないが、前から見ると、龍の学校のエンブレムが『The 金持ちです!』感を強く表している。
ああ。間違いない。
「ああ、そうだな…」
「龍上高校って何?」
「高安、お前知らないのか? 日本に2つある最高峰の私立のうちの一つだぞ!一条財閥が経営している金持ち学校だよ。
偏差値75以上で、何人かは司法試験もすでに受かっているらしいぞ?
それに、勉学だけでなくて、スポーツ、武道、芸術など、全ての分野で世界に通用する人物を育成する、超お金持ち学校だよ!! 僕たち凡人のような奴はいないらしいぞ? 僕も一度はあの制服着てみたかったんだよな〜」
「ふーん」
高安は興味がなさそうだ。
須子よ。
そんなにいいところではないぞ。
そう心から言いたい。
だって、龍上高校は……
前に俺が通っていた学校だからな。
今の高校の方が死ぬほどいいぞ。
生徒がいい人が多い。
俺が今の高校に通っていることはバレてないはずだが、バレると厄介なので、俺は姿を後ろに向けた。
「金持ちの女ってエロいのかな〜〜?」
「ロクでもない女しかいないだろ」
「やっぱり、そうなのかな〜〜」
これは本当だぞ。
須子は恵まれているぞ?
森さんなんて、性格もよく、容姿もいいんだから。
そんな人、あそこの学校にはいないんだよ。
まあ、今はまだ須子にも言えないがな。
よく見ると、近くにモブAとBも同じ電車に乗っていた。
「ねえ、あれ龍上の制服じゃない?」
「うっそー?? あの金持ちの!」
「後で声でもかけて見よう!! 仲良くなれるかもしれないし!!」
このデブは、一体何を勘違いしているんだろうか。
まあ、いいか。
「そういえば、前に、塾の男友達に聞いたんだけど、一条 実っていう龍上高校の最高傑作の天才イケメンがいるらしいんだよね!」
俺は『お前に、『男友達』はいないと思うけどな』と突っ込みたいのを我慢した。
「イケメンで、天才だったなら無敵じゃん!」
「そうなの! 185センチで超絶イケメン。スポーツ、芸術、武道、あらゆる部門で全国制覇!! しかも全国模試も2位! やばくない? 確か去年、鬼頭と同じクラスだった時、ボコされたとか言ってたよ!!」
「あの巨人をボコしたの!? すごすぎ! でも、模試は1位であって欲しかった気もするなー」
「それがさ、もう一人、同い年の兄がいるらしく、それが全科目で満点取るから勝てないんだって」
「同い年ってことは、双子ってこと?」
「そう! 高身長のイケメンのガリ勉もいいよねー! 二人とも見てみたい! 一条家の方針で、写真とかがネットにないのが残念なんだよねーー」
「兄の方なら、ウチらにもワンちゃんあるかな? 勉強教わったり!!」
「なくはないでしょ!」
あまり聞きたくないガールズトークであった。
少し吐き気を催したが我慢しよう。
まあ、所詮は噂話か。
俺は周りを気にしつつ、バレないようにすることに集中した。
せっかくの楽しい時間をあまり楽しめなかった。
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