第30話 妹とのデート??

俺は電話をかけたのである。


1回クズな行動をしたのだ。

もういい。ずっとクズのままだ。

嘘をつくしかないな。



妹の性格だ。

折り返すに決まっている。

折り返せなければ、それはそれでいいのだが。


少し急いで、距離をとった。



やはり、俺の電話がなった。



電話は緊張する。

ただ、姉としていたから、そこまでではない。


「月城くん……どうしたの?」

「あ、ごめんなさい。姉の方に用事があって、電話をかけようとしたら、間違えてかけちゃった……」

「なんだーー!! じゃあ、楽しんでね!!」

「ごめんね」

「大丈夫だよーー!! またねー!!」


なんとか、無事に終わった。


このまま一人で行動してもよかった。


ただ、まだ気になる。


俺は、再び妹のストーカーをすることにした。


妹は、一人で近くのカフェに入って行った。


ここでやめてもよかった。


聞きたいことがあった。

本当はどうだったのか。

行きたったのではないか。


自分のしたことは、何だったのか。



俺が邪魔したことに気が付かない今なら、本心が聞ける。

偶然を装って妹の方に会うことにした。


俺もカフェに入った。


「あ。早乙女さんだ」

「え!? 月城くん! 偶然だねーー!! あれ……? ひとりなの?」

「うん。 班でバラバラになって、ボッチなんだよ……」

「そういえば、班のメンバーが合わないって言っていたね。 私もだよーー。暇潰し中!」

「そうなのか。てか、さっきごめん。間違えてしまった」

「あるあるだねーー! でも、ありがとう! 助かったんだよ!」

「俺……何かしたのか?」


聞きたい。本音を。


「男の人に誘われてて、困ってたんだけど、ちょうど電話が来たから断れたの!!」

「本当なのか?」

「珍しく今日は真剣だねーー。どうしたの?」

「いや、本当は行きたかったのに、俺の偶然の電話のせいで、行けてなくなったのかなって」

「いや、本当に行きたくなかったよ? 班の2人が行こうとしてたから、どうしようかなって悩んでて。ちょうど、電話きて行かなくて済んだの!!」


俺には妹の方が嘘ついているようには見えない。

そう信じたいだけかもしれないが。


「それだといいけど」

「それに、本当に助けてくれた感じする! 月城くんの名前見たら逃げていった感じ! やったね!」

「なんだそれ……」

「そう思いたいの!」


ごめん。

時期が来たら話したいと思う。


俺とアイツに何があったのか。

なぜ俺が退学したのか。


「ねえ、今から二人で、どっかいかない? せっかく、来たんだし、何かしたいし!」


行きたいが、今の俺に資格がないような気もする。

この状況は俺が作ったんだ。


それなのに、助けたと思っている。

本当は、俺が取られたくないだけというクズ行動しただけなのに。


「いいんだけどさ……学校のやつも多いけど、大丈夫なのか?」

「ん?」

「いや、釣り合わないから大丈夫だと思うけど、早乙女さんが俺なんかと歩いていると、変な噂になるだろ?」

「今更じゃない? 図書室に一緒にいるし、ファミレスにも行っているし、家にも来てるし」

「いや、今日は学校の奴らが多いだろ……。それに行事だし、違うクラスだから言い訳がしにくいというか……。ありえない話なんだが、噂するやつもいるし」

「私は気にしないよ?」

「俺は嫌じゃないんだけど、覚悟してねって話だ……」

「まあ、私も、いちいち他人に言われるの嫌だしな」


そう。それでいい。

楽しみたいのはある。

もう迷惑はかけられない。



妹は、手につけていたゴムを口に咥え、髪を結び始めた。

長い髪をまとめ始めた。


「ほら! お団子にすれば、陽菜ねー見たいでしょ!? 他の人なら区別つかないって!!」

「何そのゴリ押し感」


さすが妹。

いっつも、予想を超えてくる。


顔の骨格が綺麗だから、髪を結んでも綺麗だ。


「じゃあ、行こうよ! あ、私1時間くらいしか行けないや……」

「肉まんづくりの時間だろ? 別に俺はいいんだけど……」

「じゃあ、1時間何しようか……。もう、メジャーなところは見た?」

「さっき、一人で見たよ」

「私も、見ちゃったんだよね……」

「じゃあ、中華街とかで食べ歩きするとか…?」

「いいの!? 全然食べない人でしょ?」

「俺は別に気にしないよ。 暇よりいいし」

「ほんと!! いい? 食べたかったんだよね!! グループの子達あんま食べるの好きじゃなかったからさ!!」

「じゃあ、行くか?」

「うん!!」」


そういえば、学校行事で妹の方と二人なのはこれが初めてか。


姉の方は俺の右側を歩くが、妹の方は左側を歩く。


なんか面白いな。



民間人はそれぞれ、自分の買い物に夢中で、俺達のことなんて気にしないと思っていた。



俺は慣れてしまっていたが、早乙女姉妹はかなりの美人である。


歩くだけでいろんな人の視線を集める。


そして、隣にいる俺を見て、疑問の視線を投げかける。


今日は俺が何かをするわけではないので、体が硬直すわけではないが、あまり会話に集中できないな。


でも少しづつだが、早乙女姉妹といると、周りの目が気にならなくもありつつある。



俺らは、二人で中華街で食べ歩きをした。

と言っても、基本は俺は食べないのだが。



一人だけ食べてるのも可哀想だから、甘いものを見つけたら、俺も食うか。


でも、さっきから歩くところばかりガッツリ中華料理なんだけど。


妹の方は、いつも通り美味しそうに食う。


なぜかこれから肉まんを作るのに、肉まんを買うというポンコツぶりを発揮した。


「なんで肉まん買ったの? これから作るのに」

「あ、忘れてた……。見たら美味しそうだったから! ま、いいか!!」


勉強はできても、意外とポンコツなのかもしれないな。


「そんな食べて、この後の肉まん食えるの?」

「全然? 余裕!」


口をリスのように膨らませてモグモグしている。


「はい。あーーん」

「え?」

「一口ぐらい食べないの? 食べないと大きくなれないよ? 食べたから大きんだもん!私!!」


えーと。

こっちは、姉の方じゃないから、胸の話でも、俺のイチモツの話でもないよな?


背の話だな。

うん。



「食事の量は関係ないだろ。姉も同じ背の高さだろ」

「ぬぬっ!!いいからいいから!! ほら! あーん」


一度、妹とキスも間接キスもしているから慣れたもんだ。

いや、全然慣れねーよ。


人前で口開けるのはやったことがない。

ファミレスであげるのだって苦戦したんだぞ。


今日はもらう側だ。

落ち着こう。

「あー」と口を開けた。

大丈夫であったであろうか。


「どう?」

「うまい」

「おおーー!!よかったよかった!」

「それ、お店の人の反応じゃね?」

「えーー。美味しいものはシェアしたいもんだよーー?」

「そうなのか。素朴な質問なんだが、好きな食べ物何?」

「んーー。難しいね…。なんでも好きだし。」

「確かに、その質問って答えるのは難しいよな」

「でも、そっちは甘い物ってのがあるじゃん!!」

「でも、甘いものってジャンルじゃん。具体的に食品名を出すのが面倒なんだよな」

「まあ、そうか……。じゃあ、ここで決めておこう!!」

「え。いきなりすぎるだろ」

「聞かれた時に困らないようにだよーー」


それもいいか。

聞かれた時のマニュアル的なのも大切か。

今までは、そんなに必要なかったが、今後必要になるかもしれないし。


「じゃあ、プリンってことにしよ!!」

「え。なんで?」

「なんとなく!!」


よくよく見ると、奥の方にプリン屋さんがあった。


「ああ。あそこの食べたかったのね」

「ぬ……。まあ、プリンで決定ね!!!陽菜ねーの好物もプリンだし!!」

「無理やり感だな。まあ、いいか。じゃあそうするよ」

「では、プリン屋に行こう!!」



幸せな時間はそうは続かない。


行こうと思ったら、「え? 陽菜…と月城くん??」と声をかけられた。

同じクラスのとあるグループに見つかってしまった。


こんな行事で二人で行動していたら怪しまれるに決まっている。


別々の班であることは明白だしな。


さて、どうするか。


悩んでいると、

「やっほ〜〜! 月城くん迷子だから助けてるの〜!! 迷子だって〜〜!面白いよね〜〜!!」


えーーーーー。

妹の方が姉の方の真似をした。


そんなことできるの??


「そうなんだー!陽菜は優しねーー!! じゃあ!」

出会ったグループの人全員が、入れ替わっていることに疑問を持たなかった。

女子なら髪型を見ればわかりそうなものではあるが。


それぐらい妹の演技はうまかった。


そのまま何事も起きずに、やり過ごすことができた。


首に、ほくろ書き足してないよね……


実は本物の姉でしたみたいな。

怖い怖い。

一卵性双生児恐るべし。


「……うまいな」


あんなにハキハキしてたくせに、今は顔が真っ赤だ。


「……なんか恥ずかしいね……」

「いつも入れ替わってるんだろ?」

「あれは撮影だから!そんな話さないし。周りも知っている人も多いし」

「普通にうまかったぞ?」


「え〜〜?ほんと〜〜?」

再び真似した。


「……」

「ちょっと!な、なにか言ってよ!!」


そんなくだらないことをしながら、俺らは食べ歩きをした。


プリンやソフトクリームや胡麻団子などがあったため、そこは一緒に買った。

どうやら、主食的なところから甘いものに行くと決めていたらしい。


食べ歩きも終わり、近くにある公園で休むことになった。


特に目的はなく、ただ、単に、公園で景色を楽しむというものであった。


「よく、公園で話すね!」

「確かに前回も、公園に来てもらったな」

「あの時、嫌われていると思って、行く時、気まずかったんだからね?」

「俺も、結構気まずかった」


俺らは特に話すことなく、静かに、景色や公園で遊んでいる子供をを見ていた。


静かな空間である。

図書室が開放的になっただけの感じだ。


気がついたらいい時間であった。


「あ、いい時間だ……。そろそろ、行かなきゃ……」

「そうだな。あのさ、これでよかったの?」

「え? うん」

「そうか」

「楽しくなかったの?」

「いや? 俺は楽しかったよ?」

「私も!! また、公園来れたらいいね!」

「そうだな」


俺は、妹の方を途中まで送り、妹は髪をほどいて、クラス行事に戻っていった。


行事らしいこともできたし、遠足は心から満足だった。

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