第38話 王になった気分だぜ

早乙女家にお邪魔したのは、あの一日だけであった。


あと何日かは親がいない日があるらしいが、そう何回もお邪魔するのも気が引けるし、ちょっと俺の体力がもたなそうだし。


まあ、姉の方は、残りのテスト期間も電話で聞くことは聞いてきたが。


ということで、やっとテスト当日。


いつものように改札に着くと、早乙女姉妹と出会った。


え。

今までの時間と違くね??

わざわざ避けてきたのに。


「おはよ〜」

「おはよー」

息ぴったりで、二人とも俺に手を振ってくる。


昔の俺ではない。

成長したぞ。


完全に俺に振っていることはわかる。


いやいや。

駅の改札で姉妹そろって手を振るという独特のルーティンかもしれない。

妹の方とは図書室では手を振りかえしてと約束しただけだ。


周りを確認して、「おはようございます」といい、会釈をした。


「手を振りかえすって言ったじゃんーー」と妹の方がコソッと話しかけてきた。

「あれは図書室の中だけの話だし……」


「じゃあ、俺はここで」



「学校行かないの〜〜?」

「学校は行くよ? ちょっとコンビニに……」


もちろんコンビニに用はない。

二人と距離を置かないとな。

一緒に登校していると注目されるだろう。


「奇遇だね!!わたし達も、コンビニに行くところ〜〜〜!!」

「一緒に行こうーー!!」


「お、おう……」

ミスったーーーーーーーーーー。



コンビニは周辺には2個ある。

俺は、学校近くの方は混むので、人があまり利用しない駅の近くのを利用している。


どっちに行くのかとヒヤヒヤしていたが、駅の近くの人が少ない方だった。

そこは一安心だ。


コンビニに着いた。

とりあえず、欲しい物もないので、うろちょろしよう。


横目で、週刊誌や漫画のグラビアを見ながら、とりあえず、周辺をフラフラした。


おお。コンドームが売っているぞ!!

化粧品など売っている棚の下の列小さく置いてあったぞ。


発見したと同時に、カゴに7個くらいおにぎりを入れた妹が来た。


おお。あぶねー。あぶねー。

冷静にならないとな。


「なんか欲しいのあったのーー?」

「いや特にはないな」

「そっかーー。ああ! ゴム発見!」

「そうだな」


ん? ん??

え。え。え。

そんなにオープンに言っていいの?


確かに、女の人にとっては大切か。


クラスの男子でも、きっと使ったことあるやつはそれなりにいるだろう。

俺だけか。無駄に意識しているのは。


「足りないし、買おうかな!!!」


え?

ショックだよ俺は。

少しは仲良くなったと思っていたが、裏ではやることやっていたのかよ……。

まあ、最近一緒にいる時間が長過ぎて慣れてはいたが、普通にレベルが高いからな。


「……そんなに使うの?」

「うん! 毎日! だからすぐ消耗しちゃうんだよね」

「そ、そうなのか……」


え。俺とファミレス行った後とかにも??


「一緒にいた時も、使ったでしょ?」

「え?」

「え?」

「何の話してるの?…ゴ、ゴムのなしだよね?」

「うん!」


俺といた時も、ってどう言うこと?

体につけていたとか!?


家で3人で的な感じだったの? あれ!?


「じゃあ、レジ行ってくるね!」

「お、おう」


そうして、棚の上にあるヘアゴムをとってレジに行った。


そっちか〜〜〜〜。

目線が違かったのかあああああ。


陰キャの目線は下の方にあるんだよ。

上じゃないんだよ。


やはり、妹だなという感じだ。

  


うろちょろしていると、先に買い物が終わっていた、姉の方に出会った。


「何も買わなかったの〜〜?」

「欲しいものなかった」

「え〜!! てっきりコンビニでゴムでも見ているのかと思ったよ〜〜」

「俺は使わないだろ?」

「使わないの!? 大胆だね〜〜〜 」

「え……。そっち!?」

「さ〜。なんのことでしょう〜」


こっちは、姉の方だなって感じだ。



「てか、目立ちそうで怖いのですが……」

「これくらいは大丈夫だよ〜〜。たまたま会っただけにしか見えないじゃん!」

「まあ、実際そうだしな」


それもそうか。

随分前に、馬込くんと歩っていたし。


いやーー。

陰キャの俺だと変じゃね?


みんなは知らないんだぞ?

それなりに関わりあることを。


結局断ることもできず、3人での登校することに。 

美女に挟まれて登校など、どこかの王にでもなった気分だ。


車はあまり通らないが、3人で横並びは少し迷惑な気もするが、王なので許してもらいたい。


二人の雰囲気で、周りの目なんて気にしてしまわなくなってしまいそうだ。


期末テストなので、みんなプリントなどを読んでいるから、意外にも注目されなかったが。



ただ、ふと、前の学校のやつが見たら驚くだろうなと思った。

落ちこぼれだって、お前らの学校にいない美人と歩けるんだぞ??


少し誰かに会ってみたいな。


そう思うと、学校近くのコンビニから出てきた鬼頭に会った。


違う。違う。お前じゃない。


今の流れは、昔の学校の人に会う流れだろうよ。


一応目があったがそのまま何も起こらなかった。



「どうしよう。ごめん」


姉の方が心配している。

鬼頭は足は治ったようだが、腕はまだ使えないようだ。


「大丈夫だろう。腕も使えそうでは無いし、俺は走って逃げるから!」


あんだけやったんだ。 流石に懲りただろう。

もし、次やったら、俺はどうなるのかな。

よく覚えてはいないが、あの時は、とっても気持ちよかったな。 本当に楽しかった。

苦からか一気に解放された気分だった。


ただ、一応やり過ぎたと思ってはいる。


携帯を送り返し、一応、半グレと鬼頭の縁を切れるように手配はしたおいた。

こっから、改心できるか見て見たかった。


あいつは普通に強い。

ああ育つのはわかる気がする。

どこか似ている気もする。


どうなるか、見たかったんだよな。


鬼頭は何もすることなく学校に向かった。


「あの人デカいねーー」

やっぱり、妹は何も知らないのか。


姉の方にコソッと話しかけた。

「妹には教えてないんだろ?」

「……うん」

「別に言わないから大丈夫」

「ありがと」



「でも、一条くんって人すごいよね! あそこまでボコボコにできるなんて〜〜」

少し声量を戻した。


「は? え? どう言うこと?」

「そんなムキにならなくても。 他クラスの友達に聞いたんだけど、昔負けたことのある一条って人と喧嘩して、あんな怪我したって言っていたらしいよ〜〜」


なるほど。鬼頭のプライドか。

俺のようなやつにやられたより筋は通るか。

俺もそれなら、バレなさそうで安心だ。


苗字でびっくりしたがな。



俺も、姉の方を結構信頼している。

今まで、人を信じたことない俺が。

できるだけ全ての真実は言いたい。

しかし、あの時の俺を見たら……流石に…


「一条って奴に会ったことあるの?」

「いや? 噂で名前だけ聞いただけ〜〜」

「そっか」

「一条 って人私は知っているよ!! 模試とかで名前載ってたし。それにこないだ会ったし」

「そっか」


変なフラグ回収か。

まあ、今の俺は楽しいからいいか。


「でも、なんか似てない〜〜? その一条って人と月城くん!」

姉の方が、こっそと話しかけてきた。


「似てないと思うけど?」

「そう? 勉強のレベルとか身体能力とか」

「きっと彼は、俺の何倍も天才なんだよ」

「そっか。 なんかごめんね??」

「え? なんで?」

「なんか悲しそうな顔しているからさ」

「してないよ」



他にもくだらない会話をし、すごく居心地がよかった。

この時間がずっと続けばいいのにな。


と、思ったら、思いっきり、犬のフンを踏みました。


もう並んで歩きません。

逃げれたのに、左右にいるから避けられなかった。



そして「逃げろ〜」と姉の合図で、双子姉妹は爆笑しながら、俺と距離をとり、それをクラスメイトに見られ、一人で寂しく靴を洗っています。


テスト頑張れるでしょうか……。


王も横並びで歩くとバチが当たるな。

やはり人様の迷惑になることはやめよう。



数学のテストは、俺の予想通りの問題であった。

正直ドンピシャだとは思わなかったが。

妹はできたであろう。


先生ごめん。

独自問題で満点二人でるぞ?

今度もっといい問題作ってくれ。


あ、でも、満点はまずいか。

変なところミスるか。


俺の調整としても、数学の先生の期待を裏切らないように、まずは独自問題で48点くらいを取り、残りの問題を少し解いて、満点を避けつつ70点くらいをとる。

そうすることで、数学の先生にも独自問題に集中していたためと怪しまれないだろう。


英語などは、スペルミスをしてリスニングをいい感じにはずし、国語などは、漢字を間違えたり、古文単語の意味を少し間違えたり、歴史では、『金玉均』を『金玉金』と書いてみたりと、各科目色々調整した。


3日くらいの長かったテストも終了した。


初日以外は姉妹と登校をすることはなかった。

寂しいような、靴に優しいような。



そして、返却日がやってきた。


な、なんと!!

13位という素晴らしい場所に収まったぞ!!

これは大きい。


仮にここから成績を上げても、陰キャでも、努力をする人と、なぜか1位をとっても許されるというイベントが発生するからだ。


しかも、クラスの奴らも、13位と知って、なんか『頑張ったな』と褒めてくれて、好感度上がったぞ??

俺頑張ったもん。


次は普通に1位をとりにいこうか。


姉の方も、

「おお! いい感じだね〜 それにしても、よく調整できたね」と感心してくれた。


「結構疲れたよ。でも、楽しかった。初めて時間使った。いいイベントだった。

点数だけの調整は、なんとなく配分予想すればいいんだけだからまだ楽なんだけど、順位は難しい。みんなが解けるかまで予想しないといけないからね!! この遊びおすすめするよ!!」


「だから普通はみんなできないんだって!!」



図書室に行くと、またしても、妹が早くきていた。


あれ?

あいつやらかしたか?



俺を見つけると、「1位だったーー!!」笑顔で話かけてきた。


すごく嬉しそうだった。

俺はただこの顔を見たかったのかもしれないな。


「よかったな」

「すごくない!? 予想通り出たよーー!!」

「そうだったのか。 よくわからなかったぞ 次は無理だぞ?」

「お願いしようかなーーー?? うそうそ。次までには時間できるから、もっとゆっくり対策するよ!!」

「だから尊敬するよ。まあ、困ったときは勘を使ってあげよう」


モチーベーションは大切であろう。


俺と比べてはいけないんだ。


これでいい。


無事にテスト期間を乗り切れた。

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