第26話 退学の危機!?
テスト本番がやってきた。
テストでは、席順は出席番号順になるため、主人公席から真ん中の囲まれる位置に移動させられた。
テストでなければ、視線が怖くて死んでしまう。
そして番号的に、姉の方とまた隣だったので、ちょっと安心した。
それに、高安、須子とも近かったので、安心してテストに臨めそうだ。
「いい点取れそう〜〜?」
「わからない。独自問題次第かな……」
「まずはちゃんと普通の問題解くんだよ? 余った時間で、独自問題をやるんだよ?」
「わかっているよ! 姉みたいなこと言うな」
「姉ですから!」
「妹かと思ったは」
「ひど〜〜い!」
緊張もほぐれたところで、第一科目の数学が開始された。
問題に目を通すと、確かに、【独自問題】と書かれたところがあった。
とりあえず、普通の問題に関しては、特に難しい問題はなかった。
60分のうちの10分で、全部解き終わってしまった。
最後の問題は見たところ、整数問題で、授業範囲外からの出題であった。
姉の方が言っていた通りだ。
でも、想像していたよりは難しくなさそうだ。
一応、時間内に終わりそうだ。
さてと、ゆっくり解くとするか。
15分くらい経った。
あれ…おかしいな…
最後の問題は、どう考えても先生の問題だと論理が破綻しているんだけど……
ミスがないかと、もう5分も使って確認したから間違いない。
こういう場合はどうするべきか?
よくテスト中、訂正とかあるけど、来ないし、指摘したいけど、試験監督と話すのは苦手だし。
なんなら目の前の先生の名前すら知らないし……
どこのクラスの先生だよ。見たことねーよ。
もう仕方ない。
途中式を全部書いて、指摘も全部書くしかないか。
逆ギレされて、退学させられたりしないよな……
数学のテストが終わった。
ちょっと眠そうな姉の方が、「どうだった? 結構書いてなかった?」と聞いてきた。
テスト終わったら、終わった科目については、人に聞いちゃいけないんだぞ??
世間を知らない俺ですら知っている常識だぞ?
今回、自信ないし……
なんで誰も指摘しなかっただろう……
「わからない。もしかしたら、本当に俺30点かもしれない……。だってさ、あの独自問題、論理破綻してない? 途中まではいいんだけど、設定が途中でおかしくなる気がしたんだけど……。指摘したんだけど、やめた方が良かったかな?」
「……ちゃんと、解いたの?」
「あれ、俺が間違えたかも……」
やばいぞ。
答え出るのかあの問題。
この学校の生徒のレベルを知らないが、もしかしたら……全体順位が下の方になってしまうのではないか?
「とりあえず、あとの科目は引きずらずに全力で頑張ってね!」
「お、おう……」
数学30点だと結構不味くないか?
70点の失点は大きいぞ。
総合でも、満点から結構差がついてしまう。
10位前後はきついかもな……
いくら平均低いとはいえ上位は取ってくるだろう。
姉の方もそう言っていたし。
他の科目で頑張るしかないな……
他の科目を全て満点取るとなんとか耐えられるか。
俺は、残りの科目を真剣に臨んだ。
他の科目は特に大きな問題はなかった……と思いたい。
テスト終了後の翌日から早速返却が開始した。
まずは、問題の数学からだった。
平均点は28,8 点。
やはり、始めのところはみんな落とさないようだ。
となると独自問題での勝負か。
返却する前に、「あ、そうそう! 月城はちょっと数学科室まで来てくれ! ちょっと話したいことがある。テストはそのあとで返す!」と数学の先生がみんなの前で言ってきた。
クラスの全員が俺の方を見た。
俺の悪口を言っていたモブどもは『やっぱりバカだったね!』みたいな感じで俺の方を見てくる。
『はい』ということもできず、ただ、頷くことしかできなかった。
この間遊んだ1軍女子は、数井さんも含め、『やらかしたなアイツ!!』的な感じでニヤニヤしていた。
嫌な視線を向けない1軍女子がいなかったら、死んでいたところだ。
「ああ〜。やっちゃたね!退学かな〜〜?」
主人公席に戻っても隣にいる姉は、イタズラ好きの少女のような顔をしていじってくる。
嫌な視線よりはいいけどさ……
「…まじでやめてくれ……」
「おいおい、一体何したんだよ〜??」
須返却でごちゃごちゃしているため、須子が俺の席までやってきた。
「わからない。もしかしたら…退学かも」
「え〜〜!? 退学はやめてくれよ〜??寂しいじゃんか!!」
素手こう言うことを言ってくれるので、須子は本当にいい奴だ。変態だけど。
やっぱり、調子に乗って、先生のミスを指摘したからかな
え〜。指摘するなってか??
忖度はまだ習っていないもん。
結構みんな楽しく返却されている。
死にたいので、机の上で突っ伏していた。
「自習していてくれ!」と先生がいい、俺と先生は数学科室に向かった。
数学科室は4階の薄暗い場所にあるが、行くまでが憂鬱だった。
お説教は苦手なんだ。
数学科室に着くと、「月城はさ、数学が好きなのか?」と聞いてきた。
なになになに。その独特な脅し。
『もう二度と数学をできない体にしてやろうか?』的なことか?
「い、一応…好きです…」
別に好きでも嫌いでもないが、好きと言うことにしておこう。
「それだからか! いい指摘だったよ! いや〜気が付かなかった! ここにいる先生にも解かせてたんだけど、気が付かなかったからさーーー!!」
ああ。ご立腹だぞ。
指摘されて怒ってるぞこれ。
「い、いや……指摘をしたわけではなく、あくまで、自分の考えを書かせていただいただけで、たまたま、矛盾点に気が付いた言うかなんというか……」
「うんうん。なるほどな〜」
「このままだと、赤点というか、なんというか……」
「……赤点? 何を言っているんだ?」
点数すら入らないのか??
逆らったから、即退学とかなのか?
「え。だって、独自問題は70点分あって……」
「ん? 独自問題は50点だぞ?」
「い、いや、それでも……」
ん?
なら普通のところで50点近く入っているはずだから、赤点とかでもないな。
なんで呼ばれたんだ?
あ。
やっぱり逆らったから、即退学か!?
「ま、いいから点数を見てくれ!」
俺は点数みた。
え。そういうこと……
姉の野郎!!!!!!
またしても、完全に遊ばれてしまった。
「あ、すみません。ちょっと勘違いしてました……」
「面白いやつだな! 数学はできても、コミュニケーションは苦手か!? 次回はもっと、面白い問題作るから、楽しみにしていてくれよ! 君が将来、数学科に入ることを期待しているよ!! わざわざ呼んで悪かったね! どうせテスト返却はうるさいから、静かに会話したかったからさ!!」
「あ、いえいえ。どうも…。それでは、失礼します……」
4階の数学科室を出ると、姉の方が自習をサボって、ドヤ顔で俺を待っていた。
「どうだった〜?」
なんだなんだそのドヤ顔は!!!!
俺はあなたのせいで大変な目に……
「テスト結果見せてよ?」
「いやです。走って逃げます」
「捕まえる」
「俺、足速いからさ、走って逃げれるよ?」
「確かにそれはそうだな〜。あ、でもな〜、下まで行って、教室の前の廊下とかで追いかけっこしたらな〜、みんなの注目を浴びるよね? わたしは楽しいからいいんだけど〜、月城くんは大丈夫かな〜〜?」
「あ、悪魔ですか……」
「ごめんね〜!! とにかく見せてね!」
手に持っている解答用紙を奪われた。
「マジか……やっぱり、すごいね……」
「完全に騙されたよ……」
そう。
独自問題は単なるおまけ問題であって配点50だったのだ。
基本は考えを書いて、部分点をもらうシステムのようだ。
少しでも点数が欲しい人のための問題である。
それ以外の所でしっかり、100点となる。
つまり、俺の点数が150点になってしまったのだ……
「わたしも、まさかここまでとは思っていなかったよ……?ただ、運動できるからもしかして勉強もできるのかなって……電話で結構教えてくれたし。テストで書いてる時はびっくりしたけど」
「勉強は緊張しないから……まあ、みんなもそれなりに取っているでしょ!」
「そんなわけないでしょ! 普通は、100点のところで時間使うの!それで平均が30点くらいなの!! なのに、先生のミスを指摘するなんて!ほんと……」
ああ、キモがられる。
「面白い人だね〜!」
いつも見る嘘偽りのない笑顔だった。
あれ? 思った反応と違かったぞ。
いざ騙されてみると、『やっぱり姉の方だしな』と納得できてしまう。
冷静に考えれば分かりそうだが、完全にに引っかかってしまった。
イタズラした経験も、された経験もないから仕方ないことではあるが……
別に嫌な気持ちにはなっていないところが不思議だ。
これでは、点数高すぎてキモがられるから、みんなに言えないではないか……
せっかく、金持ち好きのイメージを無くそうと努力したのに。
でも、姉のせいだし、我慢してもらおう。
「ほんと、早乙女さんは、ふてほどだよ……」
「ふてほど……??」
「早乙女さんの行動は、不適切にも程があるってこと!!」
「何それ。聞いたことないんだけど……」
なんだと!?
せっかくネットニュースに書いてあった用語を使ってみたのに……聞いたことないだと!?
まるで、俺がネットで知識を仕入れて、実際には人と会話したことない陰キャみたいではないか。
あ、俺、陰キャだった……
「と、とにかくみんなには黙っていて欲しい……」
「わかってるよ! みんなに変に注目されると、日常生活にも支障が出るんでしょ?」
「……うん。 ありがとう」
「ちょっと、力試ししたかったから。誰にも言わないよ! 約束する! はい! 指切りげんまんしよ!」
「それは別にしなくても….…」
「しないと守らないかもよ?」
「わかったよ」
姉の方の手は細かった。
それに少し冷たかった。
小指同士ではあるが、もう少し握っていたいものだ。
「じゃあ、教室戻ろう! あ、返してほしければ追いかけてきてね!」
「あ、悪魔だ……」
「ウソウソ! 返すよ!」
ちゃんと返してくれた。
とりあえず、グループラインでは、『特に何もなかったよ』と誤魔化しておいた。
姉の方もうまく誤魔化すのを手伝ってくれたから助かった。
そして、残りの科目も、その日のうちに返却された。
先生たちは結構頑張って採点したようだ。
徹夜だったのかな。
そして、他の科目はミスしないように頑張った甲斐あって、全科目満点を取ってしまった。
完全に1位だ。
幸いなことに、前の学校と異なり、テスト結果が張り出されるということはなかったが。
もちろん、各々には順位と点数が書かれた紙は渡されるらしいが。
ああ。
1位ではキモがられるから公表はできないし。
クラスの奴らは、俺は陰キャのくせに馬鹿で、一生懸命この学校に編入してきたと思っているではないか。
どっちも最悪ではないか!!
そんな中、久々に、図書室の時間がやってきた。
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