第18話 妹と童貞卒業!?

俺は姉の部屋を出てさっさとお暇しようとしたところ、妹の方が「ねえ、今からさ、ファミレス行かない?」と誘ってきた。

「え。なんで?」

「別に嫌ならいいけど、運んでくれたから奢るって言ったじゃん。 打ち上げでなんか食べるつもりだったけど行かなかったし……」

「嫌じゃないよ。でも、これくらいは大したことないから奢らなくていいよ。それに、姉の方はどうするの?」

「このまま、しばらくは起きないからなーー。 ファミレスいったあとコンビニで買うよ!」

「そういうものなのか。じゃあ……行きます……」


ファミレスだ!!


正直、めっちゃくちゃ行きたかった。

俺は今まで行ったことがないのである。


家族とも行ったことないし、友達なんていなかったし……

今日、ファミレス童貞を卒業できるかもしれない!


何度か一人で行こうとしたが、今まで挫折してきた。

『何名様ですか?』とか聞かれた瞬間に逃げてきた。


ただ、女子と二人で食事も初、ファミレスも初、耐えられるか……俺。

変に醜態を晒しそうな気がするぞ。

やめておいた方がいいかな。


でも、こんなチャンス二度とこないかもだしな……


それにいつか、須子や高安に、『妹の方と童貞(ファミレスの)卒業してきたよ?』って自慢できるかもしれない。


ただ向こうがプロで、こっちが童貞だとよくないかもしれない。

こういうのは男がリードしてなんぼであろう。


一応、どのくらいの経験者かは聞いておかないと。


「ファミレス、よく行くの?」

「まあ、それなりかなーー」

「そうなんだ。お、俺はあんまり……かな。 小さい時しか行ったことないから記憶ないかも」


見栄を張るしかない。


「記憶ないって、面白いね!」


冗談だと思われたのは良かった。



「じゃあ、ちょっと待っててね。今、着替えるから!」

「私服で行くの?」

「一応、近所だからさ、ジャージに名前書いてあるし。と、言っても、上に違う私服のジャージ着るだけどね」


そうだよな。

早乙女さんが男とファミレス言っていたと噂になっても困るしな。


「月城くんも何か着る?」

「いや持ってないからこのままかな」

「私の私服のジャージ貸すよ?」

「大きさ違うでしょ」

「大きめのもあるよ」


確かに身長はそんな変わらないか。


「俺が着ると汚れちゃうからダメだよ。それに、俺は、最悪名前バレても別にいいかなって……」

「あ、じゃあ、そのジャージ貸して?」

「え。これ? 何に使うの?」

「私がそれ着る!」

「え。臭いからやめな……それになんのメリットがあるの?」

「私が月城になれる! 名前バレない! ね?」

「確かにそうだけどさ……」

「あ、半袖になっちゃうか。寒い?」

「いや、そうじゃなくて……ジャージ汚いからやめなよ」

「汚くないもん。それに今から、私のジャージ探すの大変だし……」

「えー。サイズとかも合わないかもよ?」

「いや大丈夫! だって、昔間違えて交換したことあったじゃん!」

「懐かしいな。 あの時、着ていたのか」

「あ、あの時はね、気が付かなかったんだよね。家帰るまで……」

「ご迷惑をおかけしました……」

「あれは私が間違えたやつだから!」


下着が透けてたままいなかったのか。

少し安心した。


「あのさ、一つ確認したいんだけど….…」

「何?」

「もしかして、食い逃げしようとしてる?」

「え? なんで?」

「俺のジャージ着て、逃げて月城が逃げました的な……」

「なんでそう考えるの!!!」

「あらゆる可能性を考慮しないと……」

「ほら! 財布持ってくしお金入ってるから安心して!」

「じゃあ、ほんとに着る?」

「うん!」


何が楽しいのかわからないが、楽しそうに俺のジャージを着た。

臭くないといいのだが……


「おお! ほら見てーー!月城深月です!」

「やたら月が多い名前だな」

「何その反応。 寂しいよーー」


クールな妹が、今日てか、わだかまりが取れてから、テンション高い気がする。

テンションが高い時は、姉に似ているな。 


さすが一卵性双生児。


入れ替わってたりしないよね。怖い怖い。


取り敢えず、財布や携帯以外は早乙女家に置いて、俺たちはファミレスに向かった。


家から10分くらいで着いた。


経験者の妹が堂々と入っていく。

慣れた様子で『2名です!』といい、俺らは案内された。


もしかして、ホテルの入り方とか知っているのかな……

そっちも経験者なら辛いな……


ファミレスは結構明るくて賑やかだった。

中はこんな感じだったのか。


違う学校の高校生も多いのか。

カップルで『あーん』と食べさせているバカもいた。

全く。けしからん。


羨ましいぜ。


さて、何を頼めばいいのか。


一人の時は結構悩むがやはり、二人の時は時間かけすぎてもあれだよな……


俺は少食なのである。


少食というか偏食に近いかな。

体の小さい須子よりもご飯とかの量は少ないが、甘いものなら死ぬほど食えるタイプだ。


んーーーー。


メニュー見た感じ、残しそうなんだよな。

残したら感じ悪いよなやっぱ。


でも、甘いもの頼んだらどうなんだろ?

甘いものは女子のものみたいな感じでキモいとか思われるかな。

んー。 急がないとな。


今日は色々と初体験なことが多かった。

少し精神的に疲れたし、やはりそういう日は、糖分が必要だ。 


よし。甘いものにしよう。


俺は、ジャンボサンデーのいちごとチョコ味の2つ頼もう。


向こうはもう決めたのかな?

見てみるとものすごく悩んでる。


将棋の棋士より悩んでいるぞ。


「あれ? もう決めたの?」

「一応?」

「早いね! ごめん。 私、悩むタイプなんだけど……いい?」

「もちろん。ごゆっくり」


なんだよ。もうちょっと落ち着いて見れたじゃん…

今更、開いたら、カッコ悪いじゃん…

まあ、いいか。 それなりにメニューは把握したし。


5分くらい悩んだ、

「ねー。何にするのーー?」

「え……これ2つ……」

やっぱバカにされるか?


「おお! いいね! でも主食は?」


あれ? 思った以上に平気だぞ。


「あんまりいらないタイプなんだ……甘いものばっか食べてる……」

「へ〜そうなんだ〜 健康は大丈夫なの?」

「今のところは大丈夫だ」

「そっかーー。でも、肉とか多く食べるイメージだった」

「え? なんで?」

「…だってさ、結構筋肉あったじゃん…」

「え… ごめん…」

「なんで謝るの?」

「見たくない物見せて…。」

「別に見たくないわけじゃないよ?」

「いやいやいや。脱いだ時、俺のこと見なかったじゃん! だから、余計に嫌われているものだと勘違いしたんだよ!」

「いや、あの時……一瞬見えていい体だなって思ったんだけど… 

ただ、男の人の体近くでまじまじと見たことないし、いいのかなって……」

「あ…そうだったのか……」


ちょっと、妹さん! 何顔赤くしてるの…

何この空気。男の人の体って……

勘違いしちゃうって。


「じゃ、じゃあ、そ、そっちは何食うの?」

とりあえず、俺は、話題を変更した。


「うんとねー、ここのハンバーグセットとライス大盛りは確定しているんだけど、あと、何がいいか悩んでいるの……」

「意外だ。結構食べるんだな細いのに。あ、そういえば、弁当の量多かったもんな」

「え!? 私のこと見てくれてたの?」

「まーうん……。今までクラス違うから見たことなかったし、やたら弁当の量多くてびっくりはしたよ……」

「陽菜ねーと違って結構食べるんだ! 私たち三大欲求強いのかな? 陽菜ねーもよく寝てるし!」


え? 性欲? 


三大欲求って何だっけ?


物欲?

どっちの意味だよ!!


聞きたい!

いや、まだそっち系はやめておこう。


とにかく話題変更だ。


「だから図書室に来るのが遅いのか」

「…ひどいよ…急いで食べるよ…」

「いやいやゆっくりでいいから!」

「来てほしくないの?」

「そ、そうじゃなくて…」


違う女子がこんなセリフを言っていたら、殺していただろう。 

不思議なことに、一ミリもメンドイ女と思わなかった。

むしろ、愛おしくも感じている自分が怖い。


「よかった! 私も話したいし!」

「筆談だけどな……」

「あれま。てか、メニューそろそろ決めるね!」

「ゆっくりでいいぞ」

「んー。 じゃああとは、スパゲティー1つ頼もうっと!」

「本当に食べる人なんだな」


ん? やばいぞ。 

これ俺が頼む流れなのか?


俺は店員に注文するのが苦手なんだ。

聞いたことあるぞ。蛇だったか、蛙だったかなんとか現象って。


仕方ない。こう言う小さな積み重ねで病気は治るかもしれない。


頑張るぞ!!


と、思ったら、妹の方が頼んでくれた。

あと、夢のドリンクバーも俺の分も頼んでくれた。


さすが、経験者である。


「ありがとう。頼んでくれて」

「え。別に。私の方が頼む量多かったし!」

「そういうもんなのか」


俺らは、メニューが届くのを待つ。

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