第17話 早乙女家に行っちゃいました!!

予約したと思われるタクシーがやってきた。


乗る時はタクシーの運転手さんが手伝ってくれて3人で運んだ。


タクシーが出発した。

姉妹が2人揃うと、タクシーの独特な匂いではなく、早乙女姉妹の匂いで充満した空間になった。


CMだけの静かな空間だ。


窓から景色を眺めるだけでも悪くはなかった。


ただ、あまりに無言で、タクシーの運転手が気まずくて、運転を間違えて事故ったら困るので、少しだけ会話をしようと思った。


「いつも、外で寝ちゃったらどうするの?」

「外で寝たのは、私が知る限り初めてだよ……」

「よっぽど、疲れて無理しちゃったんだな」

「それほど、信頼しているんだよ。仲良いみたいだし」

「それはないんじゃない?」

「だって、あんな体勢だったし。そっちこそ、陽菜ねーと一緒に体育祭行ったんでしょ?」

「バスでたまたま一緒になっただけ。みんな釣り合わないと思っているよ」

「何が?」

「いや、だから、美人の早乙女さんと俺じゃあ釣り合わないってことだよ」

「び、美人…。と、とにかく釣り合うし! 私たちの方が釣り合わないし!」

「それは意味がわからないよ?」


少しわだかまりみたいなのがなくなって俺自身スッキリした。

一旦離れて近づいたから、心の距離が、前よりなんだか近くなった気がする。


向こうはそうは思っていないとは思うが、俺はそう感じる。


だから、下ネタを言いたいという願望も叶えられそうだが、リスクが大きいのでやめておこう。



15分くらいであっという間に家に着いた。


早乙女さんの家に着いた。

大きな一軒家だった。 


さて、運び方をどうするべきか。


こっからは一人だ。

力の問題ではない。


やはりここは無難に、おんぶがいいか?


ただ、背中に須子推定Eカップが密着してしまう。

密着されたら、下半身のバランスがうまく取れなくなってしまう。


おんぶをしたまま運ぶのは至難の業となるだろう。


それにタクシーから引き出すにはおんぶでは難しい。


却下だ。


やはりここは、俗に言う、『お姫様抱っこ』の方がいいか。

この姉妹をこの抱き方するのは2回目になってしまった。


久しぶりに抱っこしてみると本当に軽い。


持っている俺の方が、ずっとこの体勢でいたいと思えるほど快適だ。


決して太くはない太ももの柔らかさが腕に伝わる。


最も前回は、妹の方だったからかも知れないが。


妹の方が玄関を開け入れてくれた。


「お邪魔しまぢゅ…」

小声で言ったが、緊張して噛んでしまった。


同級生の女の人の家に初めて入る。

というか、同級生の家に初めて入る。

今まで友達に呼ばれたことはなかったな。


心臓の音がめちゃくちゃうるさい。

ただ、不思議と体を蝕むようないつもの嫌な緊張とは異なり人生で初めて、安心する緊張だ。


人の家の匂いだ。

早乙女家の匂いだ。 

ジャージや近くで何度も嗅いだ匂い。


家には誰もいない。


ん? 誰もいない!?


姉の方を運ぶという使命に集中していたから忘れていたが、この状況は……

あれ、これ……やっぱり新しいパンツ必要なんじゃ!?


いやいや。落ち着こう。

使命を果たして帰ろう。


2階にふたりの部屋があるらしい。


靴を脱ぎ、2階へ案内された。


2階には部屋が二つあった。


妹の方が姉の部屋のドアを開けた。


勝手に入ってはいけない気がするので、『入れ』と言われるまで、犬のように従順に姉の方を抱いたまま待機することにした。


部屋の中は、男の部屋とは異なる女の部屋だった。


家具やその配置などは大きく異なるわけではない。


ただ、色が少し明るいのと、具体的にはわからないが女の部屋という感じがした。


運んでるとはいえ、勝手に見ていいのだろうか。


あれ?


ベットの上にピンクの大きめのブラジャーがあるんですけど……


身体測定の時、図書室で妹の方が透けてたやつと同じじゃね?


一卵性双生児だからお揃いなんだ!


ペアルックというやつだ!


姉の方に、不可抗力とはいえ、見てしまったため、全力で心の中で謝罪をした。


「あーもう、また、陽菜ねー私の取ってんじゃん。大きさ変わらないからって……」

ぼそっと呟いた妹の方はベットの上のブラジャーを取った。


「え?」 俺の心の声が漏れてしまった。


「あ、いやいや、えっと、こここれは、陽菜ねーのだよ? ほ、ほら、ね?」

明らかにテンパった様子で、見せびらかしてくれた。


俺も生で見るのは初めてだったし、どう見ても、妹の方のだし、本人を目の前にして、本人が自分の下着見せつけてくる状況に俺までテンパってしまった。


「そ、そうなのか!! お、お、お大きさとかも違うし!ね!」


『大きさ』とかわけわからんことを言ってしまった。


妹の方は顔を真っ赤にしながら、こっそと自分の部屋に下着を持ったまま戻った。


とりあえず、姉の部屋に『お邪魔しまぢゅ』と噛んでしまったが、一言述べ、ベットの上にゆっくりとおろした。


その時、編入試験の時のことをフラッシュバックした。


まあ、妹に…似てるだけか。

一卵性だし、同じ体型だもんな。



俺は姉の部屋を後にした。

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