第9話 妹が…NTRた…!?
バスを降りると、すぐに会場の入り口があり、そのままのノリで、姉の方と一緒に行くことになった。
会場の人の熱気がものがすごかった。
俺にとっては初めての体育祭か。前の学校を含め。
今回は気分を味わえれば十分であるが、少し楽しみである。
とりあえず、俺らは、2階の応援席に向かった。
各組には大きな横断幕があるから赤組の席を間違えることはなかった。
赤組の応援席につくと、結構、みんな集まっていた。
やはり女子の化粧の気合いの入れ具合は、ものすごかった。
今までの俺なら、何人かは好きになっていたかもしれない。
最も、さっきまで、近くで超絶美人を見ていた俺は特に何も感じなかったが。
なぜか、みんな俺らの方を不思議そうに見ている。
仲の良い須子でさえ驚いた顔をしているので、「俺なんか悪いことした?」と聞いてみた。
「いや…お前……早乙女さんと…」
やばっ。忘れてた。
バカップルが一緒に来るとかあったな。
バス停ついた時点で別々にくるべきであったか。
「いや。バスでたまたま一緒になっただけだぞ」
「お、なんだ。 期待させるなよ〜」
俺らの会話を盗み聞きした周りの女子が小声で、『釣り合うわけもないもんね』とで話しているのが聞こえた。
『わかってるは! ボケナス! モブにもなれないくせに!』と心の中で反論し、応援席は自由席なので、後ろの方に座った。
「日焼けしたくないから!」と姉の方も同じ列に座った。
まあ、みんなの勘違いも無くなったし、席は近くてもいいか。
しばらくすると、前にいる隣のクラスの女子たちが騒ぎ出した。
『マジ?』『お似合いじゃん』『聞いていいのかな??』などと騒ぎ出している。
かっこいい先輩でもいたのかと思ったら、妹の方と馬込くんが一緒にやってきたのである。
それを見た瞬間、俺の胃が、ズシっと痛くなるのを感じた。
なんなんだ。この苦しさは。
詐欺にあった。
以前、一緒に登校しているところに出くわしたのはあったが、勝手に同じクラスの、姉の方と仲が良いのかと思っていた。
別に、俺の彼女ではないし、詐欺でもなんでもないのだが、男子苦手って言っている人が、男と歩いているのを見るのはキツイ。
初めて、アイドルの恋愛速報で苦しくなる人の気持ちがわかった。
姉の方が知っているということは、俺と姉みたいに偶然出会ったわけではないだろう。
チャンスがあったとは思っていない。
お金をあげたわけでもない。
ただ、俺は、図書室の時間を楽しみにしていた。
もうそれが出来なくなると思うと…
辛い現実を突きつけられた。
さらに地獄なのは、席順だ。
左から姉、妹、俺、馬込君と完全に詰んでいる。
動きたくても他の席は、もう埋まってしまった。
「月城くんおはよう! 楽しみだね!」
馬込くんは朝から爽やか。別に悪い奴ではない。
どちらかといえば、こんな俺にでさえ話しかけてくれて、優しくしてくれるいい奴だ。
男版の姉の方のようなものだ。
逆にそれがうざい。
DV野郎とかなら、堂々とディスれたのに…
批判する点がなかなかない。
「おはよう。席…変わろうか?」
俺は勇気を振り絞って、馬込くんに話かけた。
そのほうが、妹の方と近くなれて良いだろう。そう思っての行動だ。
「ん? 別にその必要なくない?」と、とぼけた顔で返答してきた。
何、しらばっくれているんだ。殺すぞ。
ああ。そっか。
そんな、中学生みたいな、席近くて喜ぶ恋愛とかじゃねーてか。
俺の気持ちも知らない姉の方が、「月城くん! こちら深月ちゃん! 妹だよ〜」と、わざわざ紹介してくれた。
「あ、うん。話したことはないけど」
「そっか! 関わり合いあったね! そういえば!」
「あるっていっても、俺ら薄い関係だよね?」
俺は、妹の方に話しかけた。
俺なりの抵抗である。
『薄い関係だと思っていました』との発言で、俺が勘違いに落ち合っていないことを少しでもアピールしないと。
「…え…」
妹の方はそれしか言わない。
薄い関係ですらなかったか?
ごめんね。
「ごめん。ちょっとトイレ行ってくる…」
流石に一旦退席しないと、精神的に辛かった。
きっと今まで、馬込くんと妹の方で、俺の筆談を見て笑っていたんだろう。
ああ。もしかして、姉の方もか?
弱点、教えなきゃ良かったな。
さっきのも演技か…内心では笑っていたのかな。
あと、2年で卒業できるし、もういいよ。
トイレから帰ると、姉の方と、馬込くんの方はいなかった。
きっと、三角関係というやつだな。
複雑なんだろう。わからないが。
そんな中ポツンと残っている、妹の方が俺の肩ををトントンしてきて、「違うから」、と体育祭のしおりの隅っこに書いて見せてきた。
「何が?」
悪いが筆談する気力は、もう俺に残っていない。
俺は妹の方に久々に話した。
「私達、付き合っていないから…」
もう騙されないよ。
トイレ行っている間に爆笑していたんだろ。
「またまた〜 お似合いじゃん! みんなわかっているんだから! 結婚したらご祝儀は渡すよ!」
「とにかく違うから!!!」
涙目になりながら、大きな声で叫んだ。
クールで有名な妹の方が、大きい声を出すので、周り奴もびっくりしている。
「ご、ごめん… わかったから…じょ、冗談だから…」
「…うん…」
泣きたいのはこっちの方である。
変に注目されたじゃないか。
少し、イライラしてきた。
付き合っていないからと言われても、今の話であって、体育祭の後に付き合うかもしれない。
俺としても、バカにされ続けられるのは嫌である。
「てか、付き合っていても、付き合っていなくても、俺に関係なくない? 俺ら薄い関係だし」
「……うん…そ、そうだよね…」
自分でも何言っているのかわからなくなってきた。
ただ、もう図書室の時間はないことはわかった。
気持ちを切り替えて頑張ろう。
自然と、妹の方との会話は終わった。
始まりは最悪な体育祭。
開会式、応援団の応援、その他の種目は無事に進んでいった。
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