第20話 体育祭後のそれぞれ
無事、家に着いた。
俺の家は、タワマンの最上階だ。
前の学校までは普通に実家で暮らしていたが、今は、そこで一人暮らしをしている。
母親が持っていたのをくれた。
そう。意外にも、俺は坊っちゃんなのである。
別に普通のアパートでよかったのに……。
エレベーター待つの長いし、地震は揺れるし。
景色は綺麗だからいいけど。
坊っちゃんと思われるから、容易に友達も呼べないし。
あ、友達はいないか? いつかはみんなを呼んでみたいな。
経済面のガチャはよかった。
世の中経済面で苦しんでいる人も多いから、日々心から感謝している。
最も、緊張度合いガチャで、最悪を引いているから、妬むのはやめて欲しいところである。
玄関を開けると、消したはずの電気がついている。
それに、玄関に知らない小さめ靴がある。
やっぱり、死亡フラグ立ってたもんな。
今日死ぬのか……
反撃はするぞ? 体動かないかもだけど……
あ、でも、童貞卒業できたし死んでもいいか〜!
いやしてないは!
前の学校のままだったら、死を受け入れていただろう。
今は、とりあえず生きる目標を見つけたので、玄関にあった傘を持って反撃の準備はした。
構えたところ、聞き覚えのある声が聞こえた。
「体育祭お疲れでした。 お久しぶりです。ひかる様」
出迎えてくれたのは、メイド服を着た、一歳年下の、金髪ハーフの俺専用の従者、リサだった。
小さい頃からずっといる妹みたいな存在だ。
俺が緊張しない数少ない人物だ。
青い綺麗な瞳が特徴的で、背は少し小柄で、胸も少し小さめだ。
俗に言う、ロリっこというやつであろう。
そう。
リサは、ロリっ子ハーフメイドというわけのわからない属性だ。
「おお! 久しぶり! どうしてここにいるの? 実家の方じゃないの?」
「お母様から、ひかる様の面倒を見るように言われ、ここで、ひかる様のお世話をさせていただくことになりました」
「そうだったのか」
「お母様からは、食事、洗濯などの身の回りのお世話から、ひかる様の性処理まで、なんでもやるようにと言われておりますので、お任せくだい」
「どー考えても、最後のは言われてないだろう?」
「記憶が曖昧です」
「政治家みたいに逃げるな! まあ、部屋はいっぱいあるから好きな部屋を使ってくれ」
「ありがとうこざいます」
「そして、ルールは昔と同じだ。いいな?」
「……それは……」
「ダメだ。俺とお前は対等だ。俺は昔から、人を使うってのが嫌いなんだよ。敬語だって使わなくていいんだぞ?」
「私はお仕えしたくているので……」
「まあ、強制することも対等とは言えないな。 とにかく、好きにしてくれ。 妹みたいなもんだと思っている」
「ありがとうございます。 あ、お風呂沸かしておきました。入られますか?」
「別にいいのに」
「やりたいので」
「わかったよ。 とりあえず入るは! ありがとう」
「いえいえ。性処理もしましょうか?」
「それは、大丈夫だ」
「そうですか……」
俺は、風呂でゆっくりと疲れを癒した。
鬼頭にやられた傷が少し痛むが、騒ぐほどではないな。
風呂を上がりスマホを見てみると、姉の方からお礼のラインが来ていた。
とりあえず、『疲れさせてごめんね』と送っておいた。
また、いつものようにラインは続いていくのだろうか?
妹の方からは連絡が来なかった。
正直、勝手に何かしら来るとは思っていた自分が恥ずかしい。
俺から送るものなのかな?
でもな……あの程度、普通なのかもしれない。
ファミレス処女じゃなかったし。
ラインがなくても、図書室の時間があるからいいか。
リサと久々に会話して、とりあえず、俺は寝ることにした。
*
月城が帰ってすぐ、陽菜は目を覚ますと、いつもと同じ天井だった。
記憶では公園で寝たはずなのに、何故か自宅にいる。
全て夢だったのではないかと思いながら、1階に降りると、何が起こったのかを深月から説明を受けた。
そこで、陽菜は、月城のことを強く意識することになった。
陽菜は、3月の編入試験の日の記憶が曖昧であった。
陽菜の記憶では、学校の階段で、顔も姿も覚えておらず、雰囲気しか覚えていない『誰か』とすれ違い、そのまま2階まで階段を登った記憶はあった。
そして、その後の記憶が抜けていた。
目を覚ますと、1階の廊下に横たわっていただけである。
一方で、陽菜は、うっすらと、2階から落ちて、その『誰か』に助けられたような気がしていた。
だが、周りには深月以外おらず、普通は2階から落ちたら死んでいるため、陽菜は夢としか思えなかった。
一階で気を失った時に、変な夢を見たとしか言えない。
2階にまで登ったのも記憶違いなのではないかと思っていた。
それでも、陽菜は、夢とは思えなかった。
背中に残る『誰か』の腕の感触が、夢とは思えないほどリアルだった。
ひっそりと、夢は現実で、その『誰か』は王子様で、助けてくれたのではないかと思っていた。
陽菜は月城に初めて会った時、夢で見た『誰か』に雰囲気が似ているなとは思っていた。
しかし、思った以上にオドオドしており、2階から落ちてくる人を助けられるような人物とは思えなかった。
最も、今までにあったような人物とは異なり、優しさがあるいい人であり、陽菜は仲良くなりたいと思っていた。
連絡をとり続けることも、いつもの下心丸出しの男子と異なり、楽しかった。
そんな中、陽菜は、ハンドボール投げを見て、月城の運動神経がいいことを知った。
その上、月城はリレーの選手に選ばれるくらい足も速かった。
編入生ということもあり、月城の存在を不思議に思った陽菜は、わざわざ、月城とバスの時間を合わせた。
ラインではなく、直接に反応を見て聞きたかった。
月城には、『落ちてくる人をキャッチできない』と言われ、やはり、『誰か』は存在せず、夢だったのかと思い直した。
そんな中、月城は初めて、家族以外で陽菜の病気のことを指摘した人物だった。
また、月城自身も、病気の告白をしてくれた。
同じ他人には理解されにくい悩みを持つ者同士、月城のことを強く意識し始めていた。
リレーで怪我をさせられた時、またしても、月城だけが気がついてくれていた。
その上、月城は病気があるにも関わらず、自分のために、苦手な人前に出てくれていた。
どんどんと、月城に対する気持ちが変化していった。
膝枕で寝るつもりはなかったが、冗談半分でやってみた。
ほんの遊び感覚だった。少し触れてみたかったのだ。
実際にしてみると、とても安心した。
気がついいたら、陽菜は眠っていた。
そして、ベットに置かれる際、月城が編入試験の時をフラッシュバックした時、陽菜もほんの少しだけ意識が戻っていた。
運ばれている感覚。
そして、編入試験の日に感じた『誰か』と似た腕の感触を背中に感じていた。
そして、また、眠りについたのだった。
そして目を覚まし、深月から、運んだ人物が、月城であったことを伝えられた。
夢で助けてくれた空想の王子様である『誰か』と月城がなぜか似ている。
運命的であり、体育祭での出来事も重なり、月城との距離をもっと縮めたいと思う陽菜であった。
一方、深月は、月城と交換した1番くじの景品を勉強机に置き、月城との出来事を振り返っていた。
深月にとって、初めての、男子とのファミレスであった。
そして、人生で初めて楽しいファミレスであった。
女子と行くと、興味のない恋愛の話題で食事も満足できず、愛想笑いをするしかなかった。
しかし、月城といると心から楽しめたのであった。
その上、一度離れたと思っていたが、勘違いであったことが判明し、深月の中では月城との心の距離が縮まったと思っていた。
そのため、無意識に甘えるで性格が出てしまって、人生で初めて、男子に甘えてしまったことを思い出し、羞恥心に襲われている深月でもあった。
深月は月城にラインでもしようとしたが、しなかった。
同じクラスではないので、共通の話題はない。
下手にラインが続かなくなってしまい、気まずくなるのは嫌だったのである。
また、ラインがメインになってしまったら、図書室に、月城が来なくなってしいまう気がしたからである。
そのため、連絡はせず、ただただ、月城との二人だけの特別の時間を楽しむと決めた深月であった。
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