第21話 エピローグ

『いやいや、何でもう戻ってくるのよ!? まだ1930年でしょ!?』

 飽きたから戻ってきたら、女神が文句を言っているわ。

 正直、もう私達が勝った状態だと思うのだけれど……


【日本】

 1936年の東京五輪を勝ち取ったから、オリンピック景気で経済が上向くわ。「世界が認める日本」が大好きな日本国民はオリンピックが楽しみで、右翼や左翼が何を言っても民衆は反応しないし軽蔑するだけよ。

 そもそも両者の思想的バックボーンを支える官僚達がオリンピックの経済上昇に夢中だわ。

 日本側の景気が良すぎるものだから満州に行った連中も戻ってきたわよ。現金なものね。

 このうえ戦争が始まれば武器を売る体制は整えているし、経済が良くなるのは間違いなしよ。

 シミュレーションゲームでコンピュータに「委任モード」にしたとしても、負けることはないと思うわよ。


【ドイツ】

 資金を稼いだエッケナーは1932年に大統領選に打って出るわ。反ナチスだから当然社会民主党サイドになるわね。

 彼がヒトラーに勝てば、ナチスと社会民主党の戦いが更に熾烈になるわね。ややこしい状況になりそうよ。

 逆にヒトラーが勝ったら、一応第二次世界大戦ルートに乗るけれども、ベルリン五輪も開催できないうえに「日本なんかにドイツの選手を派遣できるか」と小物ムーヴをすること確定だから、オーストリアもチェコスロヴァキアも呆れて従ってくれないのよ。

 いずれが勝ったとしても、はっきりしないままソ連に飲み込まれそうで心配になるわね。


【アメリカ】

 FDRは1932年選挙で「日本のように力強い経済再生を! ニューディールを!」と主張して当選するわ。日本が史実以上に再生しているから説得力がより増すのよ。

 史実と違って南部の票まとめのために極端な福音主義者と組む必要もないわ。もちろん、コーデル・ハル達はFDRについているけれど、史実ほど選挙参謀の重みはないのだしうっとうしいムーヴをするなら一人ひとり潰していくだけよ。

 ロックフェラーもハーストも味方、財界はほとんど友達よ。日本の移民の質も少しずつ上がっているからみんな満足しているわ。

 チャップリンが左翼認定されていることだけが気がかりだけど、ほとんど問題ないわね。

 ちなみにチャップリンと高野の凱旋帰国は大成功だったわ。


【イギリス】

 皇室の女性攻勢に(後の)エドワード8世はなびいてくれないわ。中々強情な男よ。

 でも、父親のジョージ5世は、息子の本性を見抜いているようで日本の皇室とくっつけたくてたまらないようね。もう少し経過待ちでしょう。

 仮にうまくいかなくてもイギリスの政界は問題ないわよ。

 ココ・シャネルはイギリス政界にも強いの。

 ハプスブルク家のローベルトとのダブルルートでウィンストン・チャーチルは押さえているし、親ドイツ派もエッケナーとの友好モードで繋いでいけるわ。

 あらゆる面で心配する必要はないわね。


【ソ連】

 話の都合上ほったらかしになったから、ここだけがちょっと不確定要素ね。

 時代的にはスターリンの権力掌握の時期で、権力掌握をした後は色々ちょっかいを出してくるわ。

 ドイツが沈没するから、ゾルゲがどの立場でやってくるか分からないけど、尾崎はじめ共産党シンパは分かっているから泳がせておけば大丈夫でしょう。

 更に、彼らのやり口は大学などの教育機関で待ち伏せして若者を赤く染めるやり方よ。

 学生より為政者が馬鹿な時代だと脅威だけど、私がいればどうにもならないわ。

 経済も良くなるのだから、彼らの唱える反体制思想も弱まっていくわね。お腹いっぱいの人間が極端な思想に命をかけることはないのよ。孟子は偉大だわ。

 と言って、攻撃しすぎるのも問題ね。

 ピケティ教授のデータからすれば、自国の共産主義はノーサンキューだけど、近くに共産主義国がいた方が緊張してより良い資本主義になるわ。

 向こうが潰れない程度にうまくつき合いたいところね。


【中国】

 日本が満州で大人しくしている間に、国民党と共産党が熾烈な争いを始めたわ。

 犬養さんや頭山さんは蒋介石を応援しているけれど、ソ連のところでも書いたように毛沢東が勝っても「まあ、いいか」って感じよね。

 史実では毛沢東が勝ったから彼がやった悪事が嫌われているけれど、蒋介石が勝って毛沢東が台湾に逃げてもそんなに変わらないような気もするわ。

 まあ、批判されない程度に両方応援することにしましょう。


【フランス】

 イギリスとドイツの対策はしているわ。

 だからOKね。


【東ヨーロッパ】

 史実と違ってドイツがまとまらなくて頼りにならないからソ連の勢力が伸びているわ。

 オットーが頑張ってオーストリア政府はアメリカ寄りだけど、国民は微妙な反応ね(史実では圧倒的にナチスや他の極右支持)。

 ドイツのところで触れたように、独ソで戦争が始まるならそれもありだわ。大きな声では言えないけどね。

 なければそれに越したことはないわ。


【イタリアとスペイン】

 頑張ってね。応援しているわ。



「……残りはやらなくていいと思うのよ。さすがに1895年編のように3年勝利は難しいけれど、この時代でもじっくり見極めれば10年あれば何とかなるわね。でも、もう飽きたから1920年転生はやりたくないわ」

『ぐぬぬぬぬ……、ムカつく』


 そんなことを言われても、ね。

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